“窮地から脱出”ではなく“窮地を超える”キャリー性能が特徴
やさしく打てる“お助けウッド”として好評を集めていたプロギアの「Q」シリーズ。その兄弟モデルとして、「キャリーズQ」が新たに発売された。
既存のQシリーズは深いラフや傾斜、バンカーなど難易度の高いライからの脱出を容易にするモデルだったのに対し、キャリーズQはバンカーや池、谷などを楽に飛び越えるのがコンセプト。その名の通り、高い弾道でキャリーを出せるモデルに仕上がっているという。
ではその性能はいかほどのものなのか。Q3+(16.5度)、Q3(19度)、Q4(20度)、Q5(24度)の全4番手をプロゴルファー・中村修と堀口宜篤の両名に試打してたしかめてもらおう。ちなみにシャフトは4モデルとも純正モデルのレギュラースペック(ヘッドスピード37~44m/s相当)で行った。
フェアウェイウッド形状の「Q3+」「Q3」はどう?
まずキャリーズQ全4モデルに共通している特徴的な部分が、クラウン部の形状。ヘッド後方のトウ・ヒール部分が削られており、フェース側からヘッド後方にかけて凸型に盛り上がった設計になっている点。この設計には「アウトラインは見慣れた形状を押さえつつ、重心をより低くする狙いがありそうです」と中村。
また、Qシリーズでは難しいライに対応するためソール部に角度が付いており、フェース側から見たときに逆三角形に見えるような形状だったが、キャリーズQはフェアウェイから打つことを想定しているため、抜けが良い平べったいソール形状を採用。
さらにフェース面の上下幅が狭いシャローフェースである点と、下目のミスヒットへの寛容性を高めるため、ソール部のフェース寄りの部分に深い溝が配されているのも4モデル共通だ。
そんなキャリーズQだが、Q3+とQ3、Q4とQ5の大きく2つに分けることができる。前者はフェアウェイウッド形状で素材はボディ、フェースともにチタン。後者はユーティリティ形状でマレージング鋼を採用。4モデルともフェースはCNC加工が施されている。
16.5度のロフトでボールをしっかり上げてくれる「Q3+」
ロフトや形状はもちろん、素材の違いからも感触に変化が出てきそうだが、まずはフェアウェイウッド形状のQ3+、Q3から打った両者。構えた印象から聞いてみよう。
「シャローだけど、意外とフェースは見えます。フェアウェイウッド形状でヘッド後方が長いのと、クラウン部の独特な凸形状もあって、かなり平べったく見えますね」(堀口)
ではまず16.5度で4番ウッド相当のロフト設定のQ3+から試打結果を見ていこう。
【堀口のキャリーズQ3+の試打結果】
HS42.2m/s キャリー226ヤード トータル248.3ヤード 打ち出し角14.9度 ボール初速61.9m/s スピン量3192.3回転
【中村のキャリーズQ3+の試打結果】
HS42.1m/s キャリー223ヤード トータル248ヤード 打ち出し角13度 ボール初速62.3m/s スピン量3321.3回転
「ロフト16.5度で約250ヤードほど飛んでくれたら十分過ぎますね。球が高いし楽に上げられます。つかまり度合いも良いように感じました。打感については弾く感触が強いですね」(堀口)
中村も「何もせずとも勝手にボールを上げてくれます。これはやさしいですね」と評価。クラウンの凸形状も「違和感がないとは言いませんが、ボールを押し込んでくれるイメージが湧くので意外と良いです」と好感触だ。
ロフト20度。つかまりの良さも魅力の「Q3」
続いてQ3+と同様の形状を持ちつつ、ロフトを20度に寝かせたQ3の試打結果は以下の通りとなった。
【堀口のキャリーズQ3の試打結果】
HS41.4m/s キャリー221.7ヤード トータル241.7ヤード 打ち出し角16.5度 ボール初速60.8m/s スピン量3350.7回転
【中村のキャリーズQ3の試打結果】
HS41.3m/s キャリー216.2ヤード トータル237.2ヤード 打ち出し角14.3度 ボール初速60.4m/s スピン量3589.4回転
Q3+でもボールの高さは出ていたが、ロフトが寝たぶん飛距離の階段もでき、より球が上がる結果に。中村は「Q3も球が強いですね。どちらもつかまりは良いですが、Q3+のほうがよりつかまりやすさが増しているように感じました」という。
シャローだけどハイバックに見える、UT形状の「Q4」「Q5」
一方、Q4とQ5はユーティリティ形状を採用。形状以外の大まかな特徴はQ3+、Q3と同様だが、その独特なクラウンゆえに「見え方も一般的なユーティリティとは少し違いますね」と堀口。
「多くのユーティリティってフェース側からヘッド後方にかけて厚みがなくなっていくような形状であることが多いんですが、凸形状に盛り上がっているおかげで、すごく平たく感じますね。シャローなんだけどハイバック、みたいな不思議な見え方です」(堀口)
では両者がロフト20度のQ4を試打した結果を見てみよう。
【堀口のキャリーズQ4の試打結果】
HS40.3m/s キャリー203.3ヤード トータル222.7ヤード 打ち出し角15.3度 ボール初速57.3m/s スピン量3690.3回転
【中村のキャリーズQ4の試打結果】
HS39.6m/s キャリー202.7ヤード トータル217.7ヤード 打ち出し角16.1度 ボール初速57.4m/s スピン量4155.7回転
「Q3+、Q3が弾きの強い打感だったのに対し、Q4は柔らかいですね。マレージング鋼のフェースって結構弾くイメージがあったんですけど、CNC加工されているおかげかボールに吸い付いてくる感触があります。とにかくボールが上がりやすくて、スピンもそれなりにかかっているので、キャリーを出しつつしっかり止まってくれそうです」(堀口)
中村も「上げようとしなくても、レベルブローで手前から払い打てば勝手にボールを上げてくれますね」と評価した。
続いて打ったQ5もQ4と同様ユーティリティ形状でロフトは24度。計測では飛距離やスピン量はロフトなりに増減した一方で、ボールの高さについてはQ5とそん色ない結果に。
【堀口のキャリーズQ5の試打結果】
HS38.6m/s キャリー199ヤード トータル214.7ヤード 打ち出し17.6角度 ボール初速56.2m/s スピン量3869.3回転
【中村のキャリーズQ5の試打結果】
HS39.1m/s キャリー198.7ヤード トータル212.7ヤード 打ち出し角17.1度 ボール初速56.6m/s スピン量4327.7回転
この結果を受けた堀口は「Q4とQ5、どちらも球を上げてくれる性能が高いので、バッグに入れているアイアンセットのロフトに応じてどちらかを選ぶのが良いかもしれませんね」とのことだ。
見た目は独特だが、「キャリーズQ」は楽に上がって飛距離を出せる
また、中村は純正シャフトに関しても言及。フェアウェイウッド形状のQ3+とQ3、ユーティリティ形状のQ4、Q5とは性能が少し異なると感じたようだ。
「シャフトはQ3+とQ3、Q4とQ5、どちらもしっかりした感触でしたが、前者のほうがよりビシッとしなり戻ってくれる感じがあって、後者は少ししなりが強く入る印象でした」(中村)
試打を終えた両名が、全4モデルに共通して言えるのは「楽に球を上げられて、やさしく飛距離を出せる」ことだと言う。とくに「スライスが出てボールがつかまらない方やトップ気味に当たる方など、地面から打つウッド類に苦手意識がある方には非常にオススメです」と堀口。
その一方で、両者がネックとして挙げたのはクラウン部の独特な形状。「凸形状を採用して低重心化したからこその球の上がりやすさ、打ちやすさという部分はありますが、クラブ選びに見た目を最重要視する方には合わないかもしれません」と中村。
ただ、そんな人でも実際に試打してみて試打結果を見ると、納得できるくらいには性能面が良いとのことだ。お助けクラブの名に恥じない打ちやすさと飛距離性能を持ったキャリーズQ。実際に試打してみてはいかがだろうか。