ギアライターの高梨祥明がゴルフクラブ選びの基礎知識を解説する集中企画。その8回目は「14本のクラブがいくつのブランドで構成されているか」がテーマ。ワンブランドで構成することが正解なのか!?
場当たり的なクラブ購入が作る複数ブランド“ちゃんぽんセット”
メジャートーナメントが始まるとトッププレーヤーのクラブセッティングについても多くの情報が出回るが、ここでぜひチェックしてみていただきたいことがある。それは14本のクラブセットがいくつのゴルフブランドの製品で構成されているか、ということである。
たとえば、先週1351日ぶりにPGAツアーで復活優勝を果たし、俄然2度目のグリーンジャケット獲得に期待がかかるジョーダン・スピースのクラブセッティングを見てみよう。ブランドは何社か?
ドライバー/タイトリスト TSi3(10.0°)
フェアウェイ/タイトリスト TS2メタル(15.0°)
ハイブリッド/タイトリスト 818 H2(21.0°)
アイアン/タイトリストT100(#4-#9)
ウェッジ/タイトリスト Vokey Design SM8(46°52°56°60°)
パター/タイトリスト Scotty Cameron 009 プロト
ボール/タイトリスト プロV1x
契約しているのだから当たり前だろう! と怒られそうだが、ジョーダン・スピースのクラブセッティングはタイトリスト一色。つまり、セットを構成しているゴルフブランドは1つだ。ここに、我々アマチュアが真似しきれていないクラブセッティングの極意がある。
試しに、愛用クラブセットを上記のスピースセットのように書き出していただくと、違いは一目瞭然だろう。多くの方のセットには、3〜4社の人気クラブが混在しているのではないかと思う。
アマチュアの場合は契約があるわけではないし、クラブを買い換えるタイミングも正直いって“場当たり的”である。ドライバーが不調な時に“これいいぜ!”というモデルがあればそれを信じて買ったりするし、アイアンセットを安く譲り受けられそうならそれを使う。バンカー脱出が容易になる! というサンドウェッジがあればそれが欲しくなるし、シブコが使っているパターはコレ!と聞けば……、やっぱり気になってしまう。そうしているうちに、複数ブランドがワンバッグにひしめく“ちゃんぽん”セットになってしまうのだ。
たとえ最新機器を使ってデータも見ながら丁寧に試打して選んだとしても、よいクラブセッティングになるとはいえないのがゴルフクラブの難しいところ。毛色の違うクラブが1本入ったことによって、これまで問題なかった番手が不調になる。キャディバッグ内に不協和音が広まってしまうことは珍しくないのである。
超軽量アマ向けクラブほどセットのワンブランド化が必要
では、何を基準につながりあったゴルフクラブセッティングを構築すればよいのか? そのひとつの答えが、“ブランドを統一する”ことなのだ。ひとつのゴルフメーカーが同じゴルファー層を狙って開発したモデルでフルショット系クラブ(ドライバー・FW・アイアン)を揃えてみる。そうするだけでかなりセット内の風通しがよくなってくる。同じ感覚で気持ちよく打てるようになるものなのだ。
このブランドを揃える感覚は、アスリート向けモデル以外ならばなおさら重要である。とくに超軽量をうたうブランドを使うなら、全番手を同一ブランドに揃えるくらいのほうがいい。ドライバーがゼクシオなら、他の番手もパター以外は全部ゼクシオ。その方が重さや振り心地が統一されてうまくいく可能性が高いと思われる。同じメーカーだからといって、ゼクシオにスリクソンの何かを組み合わせるのも推奨はしない。ターゲットゴルファーが違えば、同じメーカーでもまったく異なる性格のクラブ仕様にしているからだ。
上から下まで同一ブランドで統一されたセットをみると、“プロ気取り”、“ミーハー”、あるいは逆に“素人っぽい”、“おじさんくさい”とネガティブな印象を抱く風潮が昔からあるが、多くのプロがそうしているように、基本的にはできるだけ少ないブランド数で1セットを構成していくのがクラブセッティングの基本だ。現在、契約フリー選手も増えているが、ブランド関係なく、自分の感性で最良の14本を選び出していくのは、特別な “才能”がなければ難しい(実際は、ほとんどのアマチュアがそれをやっている)。
同じブランドでクラブを揃えるのがなんとなくカッコ悪いと思うなら、キャディバッグやヘッドカバーで個性を演出する(メーカー色を消す)のがオススメだ。プロっぽさ、おじさんくささを生み出しているのは、ゴルフクラブではなく、案外その容れ物である(笑)。