マスターズで悲願のメジャー制覇を成し遂げた松山英樹。手にしていたのは、契約するダンロップの「スリクソン ZX5」ドライバーだった。アマチュアで初出場した10年前からの使用ドライバーを、松山のギアをつねにチェックするゴルフトレンドウォッチャー・コヤマカズヒロが振り返った。

まずはダンロップ「スリクソンZR30」だ。2008年に発売され、当時としても小ぶりで難しいモデルだったこともあり、市場ではそれほど振るわなかったが、松山はなんと8年間愛用した。日本ツアーでの賞金王、PGAツアーでの初優勝、2016年の日本オープンなど、数多くの栄冠をこのドライバーで勝ち取った、松山の代名詞的なドライバーだ。

2016年の終盤、松山が手にしたのは「ZR30」とは似ても似つかないアベレージゴルファー向けのドライバー、キャロウェイ「グレートビッグバーサ」(2015)だった。460ccの大型ヘッドでスライサーにも打ちやすいつかまりの良いクラブだ。ダンロップの契約プロでありながら、他社のドライバーを使用したことも話題となり、発売後、二年近く経ってから、人気が沸騰したエピソードを持つ。

画像: キャロウェイ「グレートビッグバーサ」を手にした松山は世界ランク2位まで上りつめた(写真は2017年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

キャロウェイ「グレートビッグバーサ」を手にした松山は世界ランク2位まで上りつめた(写真は2017年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

「グレートビッグバーサ」を手にした松山は、PGAツアーで多くの勝利を上げ、世界ランキングも2位まで上りつめる。今年のマスターズに勝つまで、松山にとって最後の優勝だった2017年の「WGCブリヂストン招待」では、最終日にコースレコードをマークする圧巻の強さだった。「グレートビッグバーサ」に変えたことで、飛距離が大幅に伸び、そのアドバンテージを好成績にむすびつけていた。

そんな好調に水を差したのが、2018年に起こったドライバーのヘッド割れだ。前年にエースドライバー、そしてスペアヘッドもヘッド割れするなどして、新たなドライバーを選ぶ必要に迫られた。「グレートビッグバーサ」は2015年発売のモデルでもあり。調達が難しくなった側面もあるだろう。

この年の初頭、松山は左手親指付け根を負傷しており、なかなか調子が上がらなかった。そんな事もあってか、ドライバー選びも難航する。2018年は年間で5種類のドライバーを使用した。僅かな期間でこれほどドライバーを変えるトップ選手はかなり珍しい。2018年の使用ドライバーは以下のとおりだ。

画像: 2018年は年間で5種類のドライバーを使用し、全米オープンではピン「G400LST」を選んでいた(写真は2018年の全米オープン 撮影/岡沢裕行)

2018年は年間で5種類のドライバーを使用し、全米オープンではピン「G400LST」を選んでいた(写真は2018年の全米オープン 撮影/岡沢裕行)

2月 フェニックス・オープン 「グレートビッグバーサ」
5月 テーラーメイド「M3 440」
6月 全米オープン ピン「G400 LST」
7月 スコティッシュ・オープン テーラーメイド「M3 460」
7月 全英オープン ピン「G400 LST」
8月 BS招待 キャロウェイ「XR SPEED」

ツアー終盤で使用した「XR SPEED」は日本未発売の欧州限定モデル。つかまりがよく、「グレートビッグバーサ」に似た特性がある。このドライバーで、ツアー選手権で4位になるなど復調した。

2019年も4モデルを使用している。この2年間はドライバー選びにかなり苦戦していたと言っていいだろう。そして、選ぶヘッドは、それぞれの特性が全く異なっているのも少なくなく、ドライバーに求めている機能が、その時々で違っていることを伺わせる。2019年の使用ドライバーは以下のとおりだ。

画像: 2019年も4モデルのドライバーを使用した松山(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ for チルドレン・オープン 撮影/姉崎正)

2019年も4モデルのドライバーを使用した松山(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ for チルドレン・オープン 撮影/姉崎正)

1月 キャロウェイ「エピックフラッシュ」
3月 キャロウェイ「エピックフラッシュ サブゼロ」(※予選ラウンドのみ)
3月 テーラーメイド「M5」
9月 テーラーメイド「M5 ツアー」

2020年は初頭から、テーラーメイド「SIM MAX」を愛用していた。ドライバー選びにも目処が立ちそうな気配だったが、8月のBMW選手権で、ダンロップの「スリクソン ZX5」(※プロトタイプ)を使用し、堂々の優勝争いを演じた。これは「ZR30」以来、4年ぶりに使用するダンロップのドライバーだ。

画像: 2020年8月のBMW選手権で、ダンロップ「スリクソン ZX5」を使用。次の週は「ZX7」に変わったものの、マスターズ優勝まで一貫して「ZX5」を愛用している(写真は2021年の ザ・プレーヤーズチャンピオンシップ)

2020年8月のBMW選手権で、ダンロップ「スリクソン ZX5」を使用。次の週は「ZX7」に変わったものの、マスターズ優勝まで一貫して「ZX5」を愛用している(写真は2021年の ザ・プレーヤーズチャンピオンシップ)

次の週のツアー選手権では、「ZX7」(※プロトタイプ)に変わったが、以降、マスターズの優勝まで一貫して「ZX5」を愛用している。松山が求める顔の良さと飛距離、そしてつかまりや寛容性を備えたヘッドで、ここ3年、苦心していたドライバー選びの旅に、一応の目処がついたことが、マスターズ制覇に一役買ったことは間違いないだろう。

シャフトは様々に試してはいるが、基本は一貫してグラファイトデザイン「ツアーAD DI」の80TX。現在のPGAツアーでは、かなり少数派の重量級シャフトだ。このあたりにも、自分の求めるものを追求する松山のこだわりを鑑みる事ができる。マスターズに勝ったこともあり、当面はこの組み合わせを愛用するだろう。

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