松山英樹のマスターズ優勝の快挙の影に道具に対するこだわりが聞こえてくるが、使用するボールを決めることはアマチュアゴルファーでも真似できるポイントだ。ギアライター高梨祥明がその理由を考察した。

松山英樹はパットの感触が合わないボールは使わない

日本人選手初制覇! ということで日本中を感動の渦に巻き込んでいる松山英樹だが、彼のクラブセッティングや使用ボールの変遷を見ていると、基本的には“変えない”選手の代表格だな、と感じる。これはタイガー・ウッズにも通じるもの。一度気に入ったモノはボールだろうが、クラブだろうが、シャフトだろうが簡単には変えることがないのだ。できれば新製品にスッと変えて欲しいゴルフメーカーにとっては、非常に気苦労する勝負師特有のこだわりである。

画像: パッティングのフィールを変えずに、ロングゲームでのボール初速アップを達成したNEWスリクソン Z-STAR XV

パッティングのフィールを変えずに、ロングゲームでのボール初速アップを達成したNEWスリクソン Z-STAR XV

しかし、今回のマスターズ制覇で、各方面で松山特集が組まれ、そのゴルフに対する向き合い方を改めて知ると、道具を“変えない”ことは、こだわりなどではなく、当たり前に思えてくるから不思議である。

松山が愛用するスリクソンZ-STARボールの開発では、変えてはならないボールの機能として「パッティングでのフィーリング」があるという。ニューボールがいかにドライバーでの初速性能やスピン性能でいかに前モデルを凌いでいても、パッティングのフィール(打感・打音)に違和感があれば、ショットのテストには移行しない。それが松山の“常”であるというのだ。なぜ、パッティングでまずボールを評価するのか? マスターズでのプレーぶりを見て、なんとなく合点がいかないだろうか。ゴルフとは高いレベルになるほど、結局は「パットが勝敗を分ける」のである。

練習の虫といわれ、トーナメントウイークでも人一倍パッティンググリーンの上で過ごす松山。練習とはグリップやスタンス、ストロークを試行錯誤するだけでなく、このボールとパター(クラブ)でいかにすればイメージ通りの結果が得られるか、その方法を探る取り組みであるといえる。彼は途方もない時間を費やして「スリクソンZ-STAR XV」でのタッチを磨きあげてきたわけである。モデルチェンジしたからと言って、いくらドライバーで飛距離が伸びるからと言って、“もういちどパットやショートゲームの練習をやり直します”とはならないだろうと思う。変えないのではなく、変えられない。フィーリング、タッチ、距離感は一朝一夕に出来上がるものではないからだ。

パットの感触はそのままに進化を果たしたNEW Z-STAR XV

今回、松山は「スリクソンZ-STAR XV」の最新モデルでマスターズ制覇しているが、これもダンロップの開発陣がダメ出しを受けながら、いかにすればパッティングでのフィールを変えずに済むのかについて研究を重ね、厳しい松山のボールテストの第一段階を見事に突破したからである。パットのフィールを変えることなく、ロングショットやフルショットでの結果を変える(進化)ことに成功したのだ。

画像: フルショットでのパフォーマンスアップは望むが、アプローチ・パットでフィーリングが変わってしまうことはNG。スリクソンだけでなく、ゴルフボールメーカーは常に厳しい要求の中で新製品を開発している

フルショットでのパフォーマンスアップは望むが、アプローチ・パットでフィーリングが変わってしまうことはNG。スリクソンだけでなく、ゴルフボールメーカーは常に厳しい要求の中で新製品を開発している

トッププレーヤーがゴルフボールに同じフィーリングを求めるのは、それが弛まぬ練習によってようやく得た感覚であるからだ。松山だけでなく、トッププレーヤーがパッティンググリーンでひたすらボールを転がしている光景をみると、確かにおいそれと感触の違うボールを打ってもらうことはできないな、と思う。場合によっては、新作を一発打っただけでその選手が積み重ねてきた何かが壊れてしまうこともあるからだ。

ゴルフの大半はコントロールショットである。その気になればもっと飛ばせるが、狙った距離に止まるように「加減」して打つのがゲームの本質。パッティングやショートゲームはその最たるものである。「加減」の成功がスコアを作るのだ。ゴルフ道具、とくにゴルフボールをとっかえひっかえしていては肝心の「加減」がいつまでも経っても身につかない。飛ばないように作られているレンジボールでいくらアプローチやパットを練習しても、実際のラウンドでは違う“タッチ”が要求されるのだ。ならば、ボールを決めて、ショートコースに行き、芝の上で何回も本気で反復練習すべきだろう。タッチの違うボールではうまくいかない!そう思えるまでボールを転がす。本来、それくらいの気概が必要だ。簡単にボールの銘柄を変えられるようではダメなのだ。

松山のマスターズでのプレーと、ボールへのこだわり。ベストスコアで上がるために“最低限”必要なことを教えてくれた気がする。

写真/高梨祥明

画像: アマチュアでもマネできる!松山英樹のマスターズのプレーからアマチュアゴルファーが学べること youtu.be

アマチュアでもマネできる!松山英樹のマスターズのプレーからアマチュアゴルファーが学べること

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