2週前の惜敗の経験を生かした山下美夢有
2週前の「ヤマハレディースオープン葛城」で3日目まで首位を走りながら、最終日に稲見萌寧選手に逆転された山下美夢有選手でしたが、惜敗から2週後、今度は優勝争いのプレッシャーを楽しむかのように2位に5打差をつけて初優勝を飾りました。
150センチの身長から安定したスウィングで230ヤードを飛ばし、方向性と縦の距離感を磨いてきたという19歳は、最終日は2打差の4位タイからスタート。気温16度と肌寒く4、5メートルの風が吹く中で、磨き上げた精度の高いショット力とパッティングで次々とバーディパットを決めていきます。トーナメントレコードとなる14アンダーでの初優勝は、見事の一言です。
さて、今週は男子は金谷拓実選手、米女子ツアーではリディア・コー選手が優勝しました。私は、その3試合の中継をチェックするなかで、3人の勝者の共通点はプレーのリズムにあると感じました。
「ヤマハレディースオープン葛城」での会見で、「悪くなってくると、打つまでの時間が遅くなり、プレーのリズムも悪くなっていたと感じ、打つまでの時間を短くしている」と話していた山下選手。
今大会では、自分のプレースタイルを守りながら、同じリズムのルーティンでアドレスしスウィングのテンポも非常に安定していました。そのことがショットの安定にもつながったはずです。
海の向こうのハワイでは、リディア・コー選手が28アンダーというスコアで勝ちましたが、「スコアにとらわれずに目の前の一打に集中しゲームプラン通りにベストを尽くした」と会見で話していました。プレーを見ていましたが、プレーのリズム、スウィングのテンポがつねに一定。山下選手と同じようなプレーぶりを感じました。
アマチュアの中島啓太選手とのシビれる優勝争いを制した金谷選手も、自分のプレースタイル、プレーのリズム、スウィングのテンポを貫いた点は共通しています。会見では「いつも通り」「自分らしく」という言葉を繰り返していましたが、そんな言葉の端々からもリズムを守り、事前に立てたゲームプランを遂行する意思を感じました。ちなみに、山下選手は「リズムのことしか考えていなかった」とも会見で話していました。
大切なショット、外せないパットになると、つい慎重になって時間をかけすぎたり、スウィングやストロークのテンポが早くなったり微細な変化が生じるもの。そして、それは往々にしてミスの元となり得ます。それを防ぐ唯一の方法がプレーのリズムを守ること。3人の勝者たちは、リズムの大切さを改めて教えてくれたように思います。
再現性が高く、精度もあるトッププロだからこそ、リズムがより大切になるのかもしれませんが、アマチュアの方にもリズムが大切なのは間違いがありません。
ターゲットを決め、番手を選んだら、そこからはつねに同じリズムでプレーすることは、プレッシャーがかかる場面でのひとつの対処法です。ショットやスウィングは真似できなくても、次回はプレーのリズムのことを考えてプレーしてみようと考えさせられた3名の勝者たちのプレーぶりでした。
そして、19歳の山下美夢有選手は、笹生優花選手に続き、2001年度生まれで二人目のツアー優勝者となりました。彼女のこれからの活躍にも、さらに注目したいと思います。