田村といえば、広島を代表するトップアマとして大活躍し、2013年に49歳でプロ入りした人物。同郷の金谷のことは「広島の国体チームの委員をやっていたころ、彼は少年男子チームのエース。見る機会は多かった」とよく知る関係だ。
そんな田村は、金谷のストロングポイントを「周りに左右されないこと」だという。
「若い選手はマン振りしたがるものですが、彼は無理せずにアプローチとパットを重点的にやったんだと思います。アプローチとパットが崩れなければショットも崩れませんし、全部1メートルにつける必要がないから無理もしない。もともと曲がらない選手ですが、無理もしないので、崩れることがない。そういった、自分のゴルフに徹しています」
金谷のドライビングディスタンスを見ると、276.67ヤードの36位と飛ばし屋ではないが、平均ストロークは69.21と堂々の1位。世界アマチュアランクで1位になったことからも、飛距離を補ってあまりあるたしかな技術を持っていることがわかる。
田村はそれを、やはり「アプローチとパット」、とくにパッティングだという。
「パッティングは彼の技術的な意味でのストロングポイントだと思いますね。彼がやっているフェースにつまようじを2本貼ってパターの芯で打つという練習法を僕もやりましたが、できませんでした(笑)。彼は『100球入ってからじゃないと寝ない』と話していましたが、パターを芯で打つのは意外と難しいもの。それを彼は、百発百中芯で打つことができる。彼はパットについて絶対的な自信があると思う。それが全部入るわけじゃないし、入らない日はあると思うけど、狙ったところに打てるという自信を持っていると思います。僕はパターが弱点だがら金谷くんが羨ましい(笑)」
金谷の平均パット数は1.7382と1位。パッティングというたしかな武器とアプローチの技術、曲がらないショットと、周りに左右されずに己のプレーを貫き通すこと……これらが金谷の強さを支えている。
飛距離という目に見える部分ではないが、その強さは本物。実際、アジアアマで優勝してマスターズに出場したことも、アマチュアでプロの試合で優勝したことも、ルーキーイヤーから賞金王争いに加わっているところまで、その足跡は東北福祉大の先輩・松山英樹の歩んできた道を正確にトレースしているように見える。
「高校時代に限っていえば、高校時代の松山くんより金谷くんのほうが上。辿っている道筋もほとんどが松山くんと同じですし、もちろん飛距離的、体力的な問題はあると思いますが、今の金谷くんを貫き通したプレーをしてくれたら、海外でも期待できると思います。ただ、松山くんのように(日本の)すべてを背負うのは大変。中島啓太くんもそうですが、同世代で同レベルのライバルと一緒にやれるといい。期待を分散してくれる選手が現れてほしいですね」(田村)
マスターズを制覇した憧れの先輩・松山英樹の背中を追って。22歳の物語は、まだはじまったばかりだ。