米ツアー唯一の、2人1組のチーム戦「チューリッヒ・クラシック・オブ・ニューオリンズ」は、オーストラリア勢(マーク・リーシュマン&キャメロン・スミス)VS南アフリカ勢(チャール・シュワーツェル&ルイ・ウーストハイゼン)の戦いとなったが、最終的にはプレーオフの末、オーストラリア勢が逆転優勝。キャメロン・スミスにとっては、今大会で2回目の優勝を飾り、唯一の複数回優勝者となった。
「今週は最高の1週間だった。ゴルフもすごく安定していたよ。難しかったけど、なんとか耐えて優勝できた。(今大会で2勝目を挙げられたのは)パートナー選びがうまいから。僕たちは今週、一緒の宿に泊まっていたし、コース内外でいい1週間を過ごすことができた。絶対忘れないよ」(スミス)
「一緒に他の選手と祝福できるようなことはなかなかないが、仲のいい選手であり友達とこうして一緒に優勝できて特別だよ」(リーシュマン)
最終日は、豪州勢と南ア勢の4人が同組でプレー。まるで「プレジデンツカップ」の練習ラウンドの真剣勝負のような雰囲気だった。南ア勢の2人は、しばらく優勝から遠ざかっていたため、久しぶりに優勝できる最大のチャンスだったが、両者抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げ、プレーオフで決着した。
今大会の優勝で、リーシュマンはフェデックスカップ29位、スミスは3位に浮上。アダム・スコットが先日、オリンピック出場を辞退したため、この2人が現在のところ、オーストラリアを代表して出場できる順位につけている。前回のリオ五輪では、妻の出産に立ち会うため、リーシュマンは欠場したが、今度こそオリンピアンとなり、金メダル獲得を目指したいという。
今大会のスタート前に、「このようなチーム戦ではショートゲームやパットがカギとなる」と会見で語っていた2人だが、今回はスミスの好調なプレーがリーシュマンをリード。特に最終日は、スミスのショートゲームが冴え渡り、数々のピンチをしのぎ、スコアを伸ばした。16番ホール・パー4では、スミスの放ったティショットが池ポチャしたのを挽回しようと、リーシュマンが見事なチップインを決めるなど、すばらしい好プレーで見せ場も作り、観客を沸かせた。だが、息の合った2人のエンターテナーの見せ場は、それだけではなかった。
「チューリッヒクラシック」では、チームの入場に合わせて音楽を流すことになっているが、彼らは「マレットソング」という歌をチョイス。「マレット」とは襟足の長い髪型をいい、現在、後ろだけを長く伸ばしているスミスの髪型がまさしく「マレット」なのだが、リーシュマンがグーグルで「マレットソング」と検索したところ、ジェイ・パウエルの歌がヒット。スミスに相談することなく、この曲をツアー側に伝えたのだという。
「この曲を聞いたら、すごくおもしろくて、まさにキャメロンのための歌だと思った。この曲に合わせて入場したら、何か違うことができるし、面白いかな、と。僕たち自身も楽しめるし、その曲とともに軽い足取りでスタートできると思ったんだよ」(リーシュマン)
その上、曲を決定したあとにリーシュマンは、アマゾンで「マレット」のカツラを注文。18ドルで購入したそうだが、このカツラをかぶり、3日目の1番ティに2人して髪をなびかせながら登場。周囲の笑いを誘った。
「1番ティで笑ってもらったし、ムードが明るくなった。このおかげで良いスタートを切れたと思うよ。明日(最終日)はもっと集中しなければいけないから、今日しかできないと思ったんだ。本当はこれをかぶってティショットしようと思ったんだけど、風が強すぎてできなかったね」(リーシュマン)
髪の毛にまつわる話はこれだけではない。なんとリーシュマンは、スミスの横の髪を大会期間中にまっすぐ切り揃えてやったそうだ。
「もともと切りたいと思ってたんだけど、リーシュが“自分ができるよ”っていうんだ。だから彼を信じて切ってもらった。良い出来だと思うよ」(スミス)
「コロナで隔離中、床屋が閉まっている時に子供達の髪の毛を切ってやったんだ。最初はちょっと緊張したけど、うまくいったんで、キャメロンのショートサイドの髪の毛もなんとかなるだろうって自信があったんだよ」(リーシュマン)
10歳離れた兄弟のような2人の、仲睦まじい微笑ましい話だ。
なお、スミスは以前からガールフレンドに「優勝したら、後ろ髪を切ってね」と言われていた。だが、周囲からのウケがいいため、優勝しても髪は切らないそうだ。「マレットヘア」といえば、国内外で113勝を挙げるジャンボ尾崎の髪型も「マレット」。スミスも、しばらくはこの「自分の体の一部」と語る髪型でファンを楽しませながら、勝ち星を重ねていくつもりだ。