「どうやったら自分たちのプレーを見てもらえるんだろう」
コロナ禍で多くの試合が中止となる中“自分たちの職場”を守るため、新たに発足されたJGTO選手会主催の「ジャパンプレーヤーズチャンピオンシップbyサトウ食品」。協賛社探し、開催コースの決定をはじめ、1から手探りで作り上げられた同大会に、選手会理事、そしてホストプロの立場で参戦した中西直人は「男子ゴルフ界が変わる、新しい風が吹くのを感じました」と言う。
「まず選手たちが『どうやったら(自分たちのプレーを)見てもらえるんだろう』と考えて発信(大会発足)し、実現できた。これ自体が大きなこと。そうすることで応援してくれる方たちも寄り添ってくれると思っています」(中西)
与えられた試合でプレーするこれまで当たり前だった環境から、選手たち自らがスポンサー集めから試合を作り上げたことによって選手たちの意識が変わったようだ。
「中継の放送席に呼ばれた選手たちが『応援してくれてありがとうございます』と話しているのを聞いて、そういう気持ちを素直に話してくれるようになって嬉しかった」と中西。そして自身も理事、ホストプロとしての責任やプレッシャーが成長させてくれたという。
新型コロナウイルスの影響が未だ予断を許さない情勢を受けて当初のスポンサーが今年2月末に撤退し、一時は開催自体が危ぶまれたが、サトウ食品が新たにスポンサーとして名乗りを挙げたことで無事開催に漕ぎつけたという経緯もある。
「選手会主催大会と言っても、もちろん選手会だけでは絶対に開催できません。応援してくださる方たちのご協力が絶対に必要です。今回はサトウ食品様が少ない準備期間の中で尽力くださり、無事開催できました。これは本当に奇跡だと思います。サトウ食品様はもともとゴルフ番組『ゴルフサバイバル』のスポンサーもされていたりと、ゴルフへの愛を感じる企業様で、今回のこともゴルフ界を応援してくれる気持ちだと感じています。選手たちもスポンサーについてくださったこと、その気持ちに対する感謝を絶対に忘れてはいけないし、感謝をただ伝えるだけでなく何かの形にしてお返ししたいと思っています」
そんな男子ツアーの新たな試みが結実した同大会を制したのは、昨年9月にプロデビューしたばかりの23歳・片岡尚之。既にツアー3勝を挙げる金谷拓実や2021年開幕戦「東建ホームメイトカップ」で8位タイと躍進した石坂友宏に続き、またしても若手が最前線で奮闘した形だ。
「4戦目で優勝ってスゴイですよね。誰もが予想できなかったことだと思うんですよ。良い意味で新しい風を吹かせてくれました。今後どんどん勝って欲しいなと思います。選手会としても、若手にも頑張ってほしい、スポットライトが当たってニューヒーローが出てきてほしいという思いはあって。今大会は谷口(徹)さんや片山(晋呉)さんらベテランプロたちが出ていなかったぶん若手に出場権利も渡っていましたね」(中西)
若手選手たちの人数が普段より多いのもあってか、普段の試合とはまた違った雰囲気な部分もあったという。
「元気の良さがあって、試合では実際に言葉にしているわけではないけど『最高のプレーをしようぜ』という雰囲気があって。選手たちの和気あいあいとした笑顔だったりが物語っていたなという風に感じました。雰囲気も最高だったと思います」
その他、ゴルフ専門チャンネル「ゴルフネットワーク」のYouTubeチャンネルを通じて練習ラウンドの生配信や試合ハイライトの公開など、積極的な発信も行った同大会。「時代は変わると思います、本当に」と言う中西の言葉通り、国内男子ツアーの変化のきざしが色濃く表れた1戦と言えそうだ。