高島早百合(以下高島):ユージさんのスウィングはかなりパワフルなんですが、弾道測定器「トラックマン」で計測してみるとスピン量が平均3500~4000回転もあります。このスピン量の多さによって、飛距離ロスが起こっていますね。
ユージ:え!? 原因は何なんですか?
高島:ユージさんは、典型的なスライサーのカット軌道のパターンになっていて、それで回転数が多くなってしまっているんです。
ユージ:たしかにスライス球は結構出ますが、どこの動きが悪いんですか?
高島:ダウンスウィングで腰を主体に体を回してくるので、右足と右腰が前に出てくるんですよ。それで、インパクトで左肩が開いてクラブがアウトサイドから上から下にカット目に入ってくるので、回転数が多くなるんです。
ユージ:あ~、たしかにそうなっていますね。じゃあ、それをどうしたらいいんですかね。
高島:これは多くのアマチュアの方が悩むことなんですが、右利きの場合は右手で球を打ちに行くので、どうしてもダウンスウィングで右腰が前に出てくるんですよ。でもプロのスウィングなんかを見ていると分かりますが、こういう腰の使い方をしている人はまずいません。
ユージ:確かに。ダウンスウィングの右腰の動かし方って、プロとアマでもっとも違う部分かもしれないですね。
高島:そうなんです。スウィングの軌道が安定している人の腰の動きは、体の左サイドが回っていくのに引っ張られて右腰もついてくるという感じなんですよね。この動きができるようになると、ダウンスウィングで右足は前に出るんじゃなくて、体の斜め後ろに引っ張られるように動いていき、フィニッシュで左足の内ももと右足の内ももがピタリと合わさるようになります。
ユージ:あ、確かに。左の内腿に右足の内腿を寄せてくる下半身の使い方をすると、体が開かないから自然にクラブがインサイドから下りてきますね。
高も:でも、右半身で回転してボールを打ちに行くイメージが強いと、右足が前に出てクラブが上から入ってくるので、ユージさんのように回転数が多くなってしまうんですよ。だからユージさん、ダウンスウィングで左サイドの回転に右足が引っ張られるような動きにしていきましょう。
ユージ:なるほど。でも、さっき高島プロが言ったように、右利きの僕なんかは、どうしても無意識に右サイドから打ちに行ってしまうじゃないですか。どうしたらそれを抑えられるんですかね。
高島:インパクトの直前に左足でジャンプをすると同時に、右足を後ろに蹴っていく練習をしてみましょう。そうするとアウトサイドからくる癖が直ります。
ユージ:え、右足を後ろ方向に蹴るって、どういう感じにですか。
高島:右足のつま先が左足のかかとに向けて動く感じです。
ユージ:あ、なるほど。
高島:そもそもスウィングは上半身の回転運動と、下半身で地面を蹴った時に生じる縦運動の組み合わせで、これによってクラブが適正な軌道に沿って動いていくんです。つまり、上半身の回転によって水平方向に動くクラブに対し、下半身で地面を蹴った時に生じた上方向への力を与えることで、自然にクラブが落下してアークを描くようになります。これが適正な軌道になるわけなんです。
でも多くの人は、右手で球を打ちに行くことにより、上半身に加えて腰もボールに向けて回転させてしまっています。これがスライスを生む、アウトサイドインのカット軌道になるわけなんですよ。
ユージ:なるほど! ボールに当てにいくときの右腰の動きを、右足を後ろに蹴ることで封じているわけですね。
高島:その通り。あと、ユージさんは左サイドへのシフトが大きすぎるのもパワーロスに繋がっているんですけど、これも左足で地面を垂直に蹴ることによって、軸を安定させることができます。
ユージ:これで、クラブが上から来るのも変わりますかね。
高島:右サイドのスペースができるので、そこにクラブを振り下ろすことができれば、変わりますよ。試しにシャドースウィングしてみてください。
ユージ:――あ、確かに、体が左方向にシフトしないで、トップからその場でクラブを下ろせる感じはありますね。
高島:いいですね。これが右サイドのスペースにクラブを振り込んでいくイメージになります。
ユージ:たしかに、アッパーだ。ていうか逆に、アッパーに振ろうとすると足って自然に右足は前に出なくなりますね。初めて分かりました(笑)。
――コツを掴んだところで、実際に何発か打った結果、ダフリを連発するユージだが高島はそれで良いという。
高島:ダフるということは下からアッパーに来ているということだから、そんなに悪くないです。でもまだ当てる感覚が強いので、クラブを振るというより、蹴る反動によってクラブが下りてくるというくらいのイメージで打ってみましょうか。
ユージ:なるほど。分かりました。
――このアドバイスでダフリは治まったものの、スピン回転数は目標の2000回転前半には遠く及ばず、3900回転近辺が多かった。そこでユージがスウィングのイメージに関して提案する。
ユージ:下から打つイメージで、物凄く縦回転を与えて球がドロップするイメージで打ってもいいんですか。
高島:あ、それでいいんですよ。
ユージ:実は、たまに練習でそういう球を打つんですけれど、上手くいくと飛ぶんですよね。
高島:じゃあそれでやってみましょう。
――実践してみると、ややダフリ気味に入ったものの、スピン量は約2300回転と低めに!
その後もスピン量は、2300回転あたりで安定しだし、一番良い結果はスピン量が2157回転、キャリー303ヤード、トータル333ヤードをマーク!
高島:今日の「左足は垂直に、右足は後ろに蹴る」意識のスウィングはどうでしたか。
ユージ:今までは、スウィング中に、体に苦しいところがあったんですよ。テークバックでか、ダウンスウィングか、ソレが分からないんですけど。スウィングを終わった時に、ああきつかったって思うことが多かったんです。それが右足を後ろに引くことで、スムーズに回っている感じがしますね。
高島:お、良いですね。
ユージ:それに何より、クラブを上から打ち込んで右腰が前に出ていたのが、右足を後ろに引くイメージにすることけで、回転数が1,000以上下がったことが驚きです。
高島:体の開きを右足を後ろに引くことで改善されましたよね。
ユージ:僕はちょっと大げさに右足を後ろに引いてましたけど、練習ではそれくらいやったほうがいいかもしれないですね。
高島:いや。大げさにやっているつもりでも、実際はそんなに動いてなかったですよ。
ユージ:えぇ~、そうなの! 僕、ふざけて打っている人みたいになっていると思って心配していたんだけど。
高島:全然、なっていないですから。
ユージ:そうか。ですからみなさんも、右足が前に出るのを直す矯正段階では、右足のつま先を左足のかかとに寄せていく動きを、オーバーアクション気味にやった方がイイかもしれませんね。
高島:そう。この練習はスライスに悩むアマチュアの方にも効果がある練習なので、ぜひやってみてください。
ユージ:はい。やってみます!
協力/日本長江ゴルフクラブ 写真/野村知也