テーラーメイドの「ロケットボールズ(RBZ)」と言えば、2012年に初代が発売され、伸びのある高弾道が一世を風靡したシリーズ。2代目「RBZステージ2」が2013年に発売されて以降音沙汰がなかった同シリーズだが、2018年にはお値段1万円強とリーズナブルな「RBZブラック」ドライバーが発売され話題となった。
そんなRBZシリーズが、今度はセットクラブ「RBZスピードライト」として復活。まず注目すべき部分は、リーズナブルな価格設定だ。
セットの内訳はドライバー、5番ウッド、5番UT、6番アイアンからPW、SW、パターの全10本。これにキャディバッグ、ウッド類とパターのカバーも付属して、なんと税込9万9000円(メーカー公式オンラインストアの価格)。単純計算でクラブ1本辺り1万円を切る値段なのだ。
しかしここまで安価だと、やはり気になってくるのはその性能。ということで、ドライバーからパターまで、セット一式をプロゴルファー・中村修と堀口宜篤に実際に試打して性能をたしかめてもらった。なお、セットにはフレックス別にSセット、Rセット、ウィメンズセットの3種が用意されているが、試打ではすべてSセットのモデルを使用。ボールはテーラーメイド「TP5x」で行った。
リーズナブルセットとは思えない打感の良さを持つドライバー
まずはドライバーから見ていこう。ソール部はウェートなど目立ったギミックはなくスッキリしているが、内部は低重心設計となっており、寛容性を高めた仕様。ソール部前方には、過去のテーラーメイドドライバーにも搭載されていた、寛容性と初速性能を高める溝「スピードポケット」が配置されている。
ロフトは10.5度で、クラブ長は45.25インチと標準的からやや短め。総重量は300グラムといまどきのドライバーとしてはやや重めだ。では実際に構えてみた印象を両名に聞いてみよう。
「正直構えた見た目はフラッグシップモデルと比べてもそん色ないです。ちゃんとロフトも見えますし、アドレスしたときの安心感もあります。形状もRBZの系譜を感じさせますね」(堀口)
中村も「構えたときのフェースの見え方も良い感じ」と好感触。「ややグリップが太めに感じますが、そのぶん手首の余計な動きを抑制してくれるので、とくにビギナーゴルファーにとっては良いかもしれません」という。では両者の試打結果を見てみよう。
【堀口のRBZスピードライトドライバーの試打結果】
HS43.8m/s キャリー222.9ヤード トータル240.8ヤード 打ち出し角14.2度 ボール初速63.3m/s スピン量2975.7回転
【中村のRBZスピードライトドライバーの試打結果】
HS44.6m/s キャリー227.3ヤード トータル250.9ヤード 打ち出し角12.4度 ボール初速64.9m/s スピン量3103.7回転
まず両者が驚いたのは打感の良さだ。
「吸い付きも良いですし、打っていて気持ち良いです。打音もRBZらしい高い音です。飛距離性能については数値の通り。正直、このドライバーがリーズナブルセットとして売られていることに驚くくらい、良い出来です」(堀口)
中村は打感の良さに加えてミスヒットへの強さにも言及する。
「あえてオフセンターでも打ってみましたが、曲がり過ぎずにしっかり耐えてくれましたね。適度にボールをつかまえてくれますし、純正シャフトも手元付近がしっかりしているのである程度振っても耐えてくれますね」(中村)
RBZらしさを感じる5番ウッド、5番UT
続いて打ったのは5番ウッドと5番UT。2モデルともドライバーと同様低重心・軽量設計でスピードポケットを搭載。ロフトはウッドが19度、UTが25度の設定となっている。
ウッドの見た目については「構えたときにヒール側が出ていて、球を拾ってくれる感じもありますね」と堀口。中村も「アップライト過ぎず、フェース全体が良く見える、ディープ過ぎない見た目ですね」と評価。
5番UTについても「顔がすっきりしていて、球を拾ってくれるイメージも湧きやすいです」と堀口は評価。
「実際に打ってみても、ウッド、UTのどちらも打感が気持ち良い。過去のRBZシリーズの良さをそのまま継承している感じです。本格的なシャキッとした打音で、シャフトもヘッドスピードを落として振る必要がないくらいしっかりしていますね」(堀口)
ドライバー以下のウッド類に関して両者のコメントをまとめると、「ボールもしっかり上がり、初速も出ている」とのこと。堀口は「これ、本当にセットモノか? というくらい良い出来ですね」と評価していた。
アイアン、ウェッジ、パターの出来は?
続いて打ったのはアイアン。7番で31度とややロフトが立った設定で、ポケットキャビティ構造でウッド類と同様に寛容性を重視した仕上がりとなっている。
「トップラインも厚くて非常に構えやすそうです。ネックの短さもあって、かなり低重心設計になっていて、ミスヒットにも強そうですね」(中村)
両者の7番アイアンの試打結果は以下のようになった。
【堀口のRBZスピードライト7番アイアンの試打結果】
HS37.6m/s キャリー162.9ヤード トータル171.5ヤード 打ち出し角19.2度 ボール初速51.3m/s スピン量5591回転
【中村のRBZスピードライト7番アイアンの試打結果】
HS36.2m/s キャリー161ヤード トータル174.7ヤード 打ち出し角18.5度 ボール初速49.6m/s スピン量4545.3回転
「打感が想像以上にちゃんと柔らかいです。高さも出ますし、スムーズに振りさえすれば自然とボールを運んでくれます。オートマチックにやさしく打てる性能と言って良いでしょう」(中村)
ロフト55度のSWも試打してもらったが、両者とも約70ヤードを飛ばして平均8500回転ほど。堀口は「ボールが削れるくらい食いつきが良いです。打感も柔らかく、抜けも良いです」と言う。
中村は10000回転を上回る結果も出し「ストレートネックで構えやすい顔つきですし、バウンスの当たり方も良いです。クラブのせいでスピンがかからない、なんて言い訳ができないくらい良い出来。フェースを開いてもしっかり使えますよ」と高評価だ。
パターに関してもショートスラントネックに角マレットと「最近の流行を盛り込んだ形状」と堀口。「フェースもミーリングされていて、打感もしっかり柔らかいですよ」という。
さて、一通りの番手を試打してもらったが、両者の共通見解として言えるのが「コスパがかなり良い」ということ。
「値段のリーズナブルさもあって、何か悪いところもあるのかなと思っていましたが、正直良いところしか見つからないくらい、入門セットとしては十分すぎる出来です」(中村)
もちろんコストを抑えるための工夫は随所になされていることだろうが「そんなに値段を削っているな、という感じはしない」と堀口も言う。
ロケットボールズシリーズの最新モデルとしての人気はもちろん、ビギナーの入門セットとしてもRBZスピードライトは強力な選択肢のひとつとなりそうだ。
協力/PGST