一昔前ならヘッドに鉛を貼る程度だったが、今はシャフト交換や可変ウェートを使った調整など、ドライバーの“プチチューン”が格段にしやすくなった。では、そもそもそれらチューンはなんのためにするのか? ギアライター高梨祥明が説く、ドライバーと他のクラブとの“つながり”の話。

短尺、軽ヘッド、軽硬シャフト……。流行りが生まれる“根っこ”は同じ

これは以前にも書いたことだが、ここ5年くらいの間で、プロや道具マニアの間で話題になったドライバーのカスタムチューンは、あるひとつの課題を解決するための手法にすぎないのだと、最近改めて思う。これまで話題となったのは次の3点になろうか。

■短尺ドライバー化

通常45インチ超のドライバーを43.5インチ程度で使用する試み。

■可変ウェートを軽量タイプに変更

ソール後方にある取り外し可能なバックウェートを軽いものに付け替えて使う試み。

■シャフトの軽量化

世界のトッププレーヤーでも60g台のシャフトを使用。かつて軽量シャフトといえば軟フレックスだったが、カーボン素材、製法の進化で軽くても硬いシャフトができるようになった。

これらのカスタムチューンは、簡単にいえばドライバーヘッドの慣性モーメントアップに呼応したもの。ヘッドが大きく、重心が深めで、シャフトが長い。つまり、ミスにやさしいドライバーを、感覚的に“扱いやすくする”ための工夫である。

■短尺ドライバー化は、ヘッドが重すぎたり、可変ウェートがついていないモデルの場合に有効。短くなればヘッドも軽く感じるし、シャフトも短い方が硬く感じる。自分でフェースコントロールして「狙った方向に打ち出す」ことを狙うのならば、この方法はアリである。短くすることで10g程度、重たいシャフトにすることも可能。

■可変ウェートを軽量のものに変えるのは、長さもシャフトの銘柄も変えたくない場合に有効。スイングウェートが軽くなって振りやすさが向上。振り遅れによるプッシュアウトも防げる。

■シャフトを軽量モデルに変える。これもヘッドは同じで振りやすさを向上させるためには有効。さらに1〜2フレックス硬いものを試すことで、軽量ならばシャフト硬度が高くても“ハード”には感じないこともわかるはずである。

たとえばここ3年以内に発売されたドライバーを使い、いまいちよい結果が出ない。とくにプッシュアウト、チーピンなどのミスが多いという人は、上記のいずれかを試してみてもよいだろう。みんなにとって最良の策はなく、どの手法が自分に合うか? という問題である。

使いにくいドライバーを打ちやすく! それだけではないプチカスタムのポイント

カスタムが必要ということは、そのドライバーが微妙に合っていないということだ。それを何とかしてよい結果の出る方向に持っていく。それがプチカスタムの目的だ。ここからはここにもう一つの視点を加えてみる。それが“ドライバーを孤立させないためのプチカスタム”である。

たとえば、アイアンはずっと重た目のスチールで、ヘッドも小さめのブレードモデル。ウェッジは単品系でもちろんシャフトもスチールという場合、現在のドライバーとの使用感のギャップは相当なものになる。あまり気づいていないだろうが、アイアン、ウェッジは80年代と変わらず、ドライバーだけが2021年。そんな感じのセットなのだ。

80年代といえば、長さ43インチのパーシモンドライバーの時代。長さ、重さ的には現代の3Wがかつてのドライバーだったと考えればいいだろう。こう考えると、現代のPGAプレーヤーが3Wでティショットするのが「普通のこと」に思えてくる。それ以上長く、ヘッドが大きいドライバーを手にする時は、「特別に飛ばしたい時」。それ以外は80年代のドライバーでティショットしているということだ。

最新ドライバーは、ものすごく飛ばしたい時用の“エクストラクラブ(ユーティリティ)”として進化してきた、と言えるだろう。

飛びに特化して進化した特別なクラブだからこそ、他のクラブと同じように振っていてはうまくいかない。だからこそ特別なチューンが必要となったり、新しいスウィングでなければうまくいかない!という話になっていくのだ。1本だけ特別化してしまったドライバーにスウィングを合わせることが得策なのか? そこも含めて個々で考えなければならないだろう。

画像: シャフトの長さや重量、可変ウェートの調整に加えて、鉛を貼ることによってプチカスタムを施す場合もある

シャフトの長さや重量、可変ウェートの調整に加えて、鉛を貼ることによってプチカスタムを施す場合もある

最大飛距離を目指して、ドライバーだけが特別になってしまった現状がある。ゴルフ市場も、最大飛距離が達成できるドライバーを“フィッティング”する傾向にある。飛距離という数字だけで判断されがちな時代だ。しかし、ゴルフにおいてドライバーは、そのホールの第一打を打つものに過ぎない。2ホール目からは、パッティングの直後に打つクラブとなる。ドライバー1本でゴルフは成立しないのだ。

ドライバーがいかに進化しても、ウェッジやアイアンはそこまで大きくは変わっていない。パターの次にドライバーを打ち、その次にあまり変わっていないスペックのクラブでグリーンを狙っていく。「飛距離をコントロール」していくというゴルフの本質は何も変わらないのだ。次々に出てくるドライバーのプチカスタムの話題も、特別なドライバーをいかに他のクラブになじませていくか? つながり合うものにしていけるか? その方法論の話なのである。

画像: 飛ばしの秘密はどこ?飛ばし屋・キャメロンチャンプのスウィングをプロが解析! youtu.be

飛ばしの秘密はどこ?飛ばし屋・キャメロンチャンプのスウィングをプロが解析!

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