悪天候のため金曜に行われるはずだった初日が中止になり、二日間競技になった中京テレビ・ブリヂストンレディス。トップに立ったのは、なんと、11アンダーという驚異的なスコアを出した稲見萌寧選手。5メートル前後のパットが面白いようにポンポン入り、2位に5打差をつける展開になっています。
今大会注目は、日本人として初めてオーガスタ女子アマを制した梶谷翼さん。プロの試合でどんなプレーを見せてくれるのか、現地でしっかりチェックしました。
以前、梶谷さんを取材させてもらったことがあるのですが、そのときの印象は、「飛距離ではなく、ショットの精度でスコアを作っていくタイプのプレーヤー」だということ。本人も「ショットが武器です。どんなところからでも、ピンを狙う姿勢を見てほしいです」と、そのときに話してくれました。
前半9ホールを1バーディ、1ボギーで回ってきた梶谷さん。彼女の言葉通り、ティショットの安定感は、一緒に回っていた稲見選手、高橋彩華選手よりも上だったように感じます。ただ、2打目の精度という意味では、少し距離感が合っていなかったように見えました。しかし、本人はこちらの見立てとは少し違う感覚でいたようです。ラウンド後の公式会見で次のように話していました。
「ショットの感覚は悪くなかったです。思ったように打てていた場面もいくつもありました。ただ、今回は自分に少し運がなかったかな、と思います」(梶谷)
“運の悪さ”が露呈してしまったのが、16番のパー5。このホールは、ティショットは山すそを狙っていく、左ドッグレッグのホールです。落ち際が見えないため、自分を信じて左方向へ打ち出していかなければいけない難ホールです。
梶谷さんのティショットは、本人曰く「少し左かな」程度の、許容範囲内の弾道でした。しかし、2打目地点へ行ってみてびっくり! ボールは左の岩の近くに止まってしまっていたのです。両足でしっかりスタンスをとることができず、右足を岩に乗せ、左足一本で振るしかない状況で、2打目を空振り。3打目で脱出というトラブルになってしまったのです。
これだけでは終わらず、4打目は信じられないくらいの左足下がりの傾斜地からのショットを強いられる不運に見舞われてしまいました。結局、このホールをダブルボギーとしてしまいました。このダブルボギーが響き、1打足りずに予選落ちとなってしまいました。
試合後、「岩のところにいってしまったのは不運でしたが、もしあそこでアンプレをしていれば、ボギーで抑えられたかもしれないです。もう少し、冷静に対処できればよかったです」と話していました。
結果だけを見れば、予選落ちという残念なものになってしまいましたが、プレーを見ていると、プロにも引けを取らない技術を持っていて、これをさらに磨いたらどんなすごい選手になるんだろうと、ワクワクさせてくれる、そんな印象を持ちました。
そして何より、彼女の強さは、17歳にして自分自身をよく理解している点にあると感じました。それは、会見で課題を聞かれたときの、受け答えから感じ取れました。
「ショットは今のまま調子を上げていければいい。課題はパットです。いつも自分が狙ったところに打てるように、パットの基礎をしっかりやっていこうと思っています」(梶谷さん)
梶谷さんは、普段の話しぶりから、喜怒哀楽をあまり表に出さず、淡々とプレーするのだろうと思っていたのですが、とても楽しそうにプレーしているのが印象的でした。
歩いているときはキャディさんと笑顔で話し、バーディをとれば嬉しそうな顔、ボギーを打てば悔しそうな顔。とても表情豊かで、見ていてすごく楽しい選手だと感じました。今後がますます楽しみな選手ですね。
写真/岡沢裕行