メジャー最年長優勝を果たしたフィル・ミケルソン。彼のスウィングはトップでクラブが地面と平行よりも深く入る、いわゆるオーバースウィングが特徴的。だが、オーバースウィングは一般的なレッスンではデメリットと言われることのほうが多い。オーバースウィングは飛ばしの切り札か、直すべき悪癖なのか?プロゴルファー・石井忍に聞いてみた。

オーバースウィングは「長尺」と好相性

「実は私自身、半年前くらいからもっと飛距離を伸ばしたくて、オーバースウィングにしようと取り組んでいるんです」そう語ってくれた石井忍。いきなりオーバースウィング肯定か? と思いきや「かといってアマチュアの方に積極的におすすめはしない」とも。まずは、石井自身がなぜオーバースウィングに取り組んでいるかから、聞いてみよう。

「僕が使っているドライバーは46.5インチと少し長め。オーバースウィングにしたほうがクラブ性能を活かせるんです」

ミケルソンのドライバーは、47.9インチとルールギリギリの長尺。ポイントは、長尺ドライバーとオーバースウィングの相性にあるようだ。

「たとえば、1人で飛ぶ短い縄跳びは早く回すことができますが、複数人で飛ぶ大縄跳びの長いロープは、いきなりスピードを出すのが難しいですよね。それと一緒でクラブも長尺になればなるほどスピードを出すための助走距離が必要になります。だからこそ、長尺ドライバーを使いたいというゴルファーは、オーバースウィングをすることでクラブの持ち味を出しやすくなる可能性があります」

画像: ミケルソンのスウィングはトップでクラブが地面と平行より深く入る“オーバースウィング”が特徴的だ(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ for チルドレン・オープン 撮影/姉崎正)

ミケルソンのスウィングはトップでクラブが地面と平行より深く入る“オーバースウィング”が特徴的だ(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ for チルドレン・オープン 撮影/姉崎正)

短いドライバーは小さいトップ、長いドライバーは大きいトップのほうが、クラブの持ち味を発揮しやすいというわけだ。短尺ドライバーの使い手として知られるリッキー・ファウラーのトップは上半身の捻転は深いがトップはシャフトが地面と平行付近にとどまる。

ただ、だからといって安易にオーバースウィングのカタチだけを真似ればいいというわけではもちろんない。

「胸の回転が少なかったり、それに伴いひじが曲がってしまうほどのオーバースウィングは、逆にパワーを出しにくいので注意しましょう。やるのならば、ターゲットと逆方向の空に胸を向けるように体を回転させること。そして、ミケルソンほどのオーバースウィングじゃなくても、トップの位置で水平よりヘッド1個分のオーバースウィングになるくらいが適量です」

トップで平行よりもヘッド一個分深く入る“ちょいオーバースウィング”が、46インチ以上の長尺ドライバーを使いこなすカギになりそうだ。

まとめると、オーバースウィングは長尺ドライバーとの相性がいい。ただ、体が回っていないのにひじだけ曲げてつくるカタチだけのオーバースウィングは意味がない。アマチュアがやる目安は、ヘッド一個分の“ちょいオーバースウィング”、といったところ。

とにかくカッコ良かった全米プロでのミケルソン。そのスウィングを真似したいと思ったら、以上のような点に気をつけよう。

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