フィル・ミケルソンの全米プロ優勝が今も話題になっている。50歳という年齢をもろともしない勝ちっぷりはもちろん、ドライバーを2本入れた個性的なセッティングにも注目が集まっている。
1本目は48インチ近い長さにまで伸ばした長尺仕様(※ミケルソン本人は47.5インチとコメント)。リアルロフトは5.5度といういわばドラコン仕様で、ヘッド重量もプロパー品とは異なり、190グラムを切る軽量となっているという。
もう一本は、いわば2番ウッドと呼べるもので、11.5度のミニドライバーをバッグに入れている。この長短2本のティショットギアで、飛ばすところとフェアウェイキープを優先するところを使い分け、難コースを攻略した。かつてミケルソンが、オーガスタ対策として、やはり2本のドライバーを使用したことを思い出したファンも少なくないだろう。
飛ばすドライバーと方向性重視のドライバーの2本を駆使する二刀流は、戦略としては面白いが、“置きにいく”ためのドライバー選びはなかなか難しい。安定してほしいが、そこそこ飛んでくれないと困る。スピン量は減りすぎてもダメだが、増えすぎるとティショットで扱いにくくなる。
ミケルソンが選んだのは、2019年に発売されたテーラーメイドの「オリジナルワン」だった。同社の40周年記念モデルとして発売され、ヘッド体積は275cc。カーボンクラウンを採用した「マルチマテリアル構造」と「ツイストフェース」を採用している。当時のテーラーメイドのテクノロジーを活用して、改めて275ccのミニドライバーを作ってみた意欲作だ。
ソールには、50グラムものソールプレートが装着され、カーボンクラウンと相まって、超低重心設計になっている。これが、安定してしかもそこそこ飛ぶというティショットギアとしての性能を出すのに大きく貢献している。ロフト角も相まって、打ち出し角は高く、スピン量はドライバーとしては多いが、FWとしては少ない、安定した弾道になりやすい。
275ccのドライバーと考えると、小ぶりすぎて難しそうだが、スプーン(=3番ウッド)でティショットすることを思うと、100ccも大きなヘッドはかなり安心感がある。実際にスプーンよりも飛ぶし、ティショットでの曲がりも少ない可能性がある。なかなか良く出来ているクラブなのだ。
ミケルソンは長年、キャロウェイの看板契約選手だ。彼自身もキャロウェイに非常にコミットしていて、最新モデルを積極的に投入し、上から下までのクラブからボールに至るまでキャロウェイを使用している。
そんな彼がわざわざ他社のモデルを使用するわけだから、よほどフィットしてるのだろう。ミケルソンが使用したことで、「オリジナルワン」はオークションサイトなどで人気が高騰しているらしい。
一方、「オリジナルワン」発売から2年たち、新しいミニドライバーがテーラーメイドから発売されるという噂がある。そちらにも興味が湧くところだが、絶妙のバランスでしあがったこの「オリジナルワン」を超えるのは、簡単ではなさそうだ。