女子の海外メジャー2戦目「全米女子オープン」が6月3日から4日間の日程で開催される。プロゴルファー・中村修が注目したのは、昨年12月の同大会で最終日を首位でスタートし4位で終えた渋野日向子。そのスウィングを解説。

「全米女子オープン」の開催コースのザ・オリンピッククラブは男子の全米オープンが5回開催された難コースです。実は10年ほど前にプレーしたことがありますが、ホールをセパレートする松や杉の木が大きくて歴史を感じさせる雰囲気の中にアップダウンがあり、ラフは深く、グリーンは小さく、非常に難しいコースでした。

優勝スコアがイーブンパー、ときにオーバーパーとなる全米オープンの舞台にふさわしいコースが、今大会でも世界の女子プロたちを苦しめることが予想されます。

画像: 全米女子オープンに出場する渋野日向子(写真は202年のダイキンオーキッドレディス 写真/姉崎正)

全米女子オープンに出場する渋野日向子(写真は202年のダイキンオーキッドレディス 写真/姉崎正)

さて、注目はやはり渋野日向子選手です。昨年の同大会は新型コロナウイルスの影響で日程が変更され、12月に開催されましたが、最終的に勝てはしなかったものの最終日を首位でスタートし、“メジャー2勝目”を期待させてくれました。

そして、今年に入り、2カ月と少し前の「アクサレディス」を現地取材した際、そのスウィングは大きく変化していました。その変化の理由を、渋野選手本人はこう語っています。

「2020年のスウィングはトップが高くクロス(飛球線に対してシャフトが右を向く)してアウトサイドイン軌道になっていたのを、トップの位置を低くしてインサイドインの軌道で振るように変えました。フォロー側ももう少しインに振り抜きたいが、それをやろうとするとテークバックが元に戻ってしまうので、まずは低いトップの位置を重点的に意識しています」(渋野)

改造する理由は、安定した再現性の高いショットを打つため、米女子ツアーで戦えるようになるために長い目で見て時間をかけて変えていこうと思う、と話していました。

さて、渋野日向子選手は、「アクサレディス」後に渡米し、これまで米女子ツアー5試合に参戦し、メジャー第1戦「ANAインスピレーション」(予選落ち)、「ロッテ選手権」(33位タイ)、「HSBC世界選手権」(67位タイ)、「ホンダLPGAタイランド」(34位タイ)、「ピュアシルク選手権」(31位タイ)という結果です。上位進出はありませんが、予選落ちも1回しかありません。

全米女子オープン後にスウィングの改造に取り組みながら予選落ちが1回しかない点は身体能力の高さ、潜在能力の高さを表していると思います。ただ、本人も「長い目で見て」と語っているとおり、完成までにはもう少し時間が必要なのだろうという印象です。

画像: アップダウン、ラフが深くグリーンの傾斜、バンカーの深さ、ドッグレッグなどタフなコースセッティングとなっているザ・オリンピッククラブ(USGA/Darren Carroll)

アップダウン、ラフが深くグリーンの傾斜、バンカーの深さ、ドッグレッグなどタフなコースセッティングとなっているザ・オリンピッククラブ(USGA/Darren Carroll)

米女子ツアーでのスタッツを見てみると、飛距離255.67ヤード、フェアウェイキープ率79.76%、パーオン率68.83% パーオンしたホールの平均パット1.75、1ラウンド当たりの平均パット29.33となっています。

このスタッツから注目するのは2つあります。フェアフェイキープ率は高いが飛距離が今ひとつ出ていないこと、もう一つはパーオン率があまりよくないことです。試合数が少ないのでランキングに反映されていませんが、それぞれランキングに当てはめると飛距離は87位、パーオン率は93位です。

渋野選手のポテンシャルならもっと飛ばせると思いますし、パーオン率も高められると思います。ポイントは米女子ツアーの難しいグリーンや厳しいピン位置に対して求められる球質にまだ到達していないことを示していると考えます。

しかし、パッティングやアプローチについては確実にレベルアップしていると感じますし、計測器を置いて練習する姿が見られるので、米女子ツアーで戦うために必要な球質も理解できているはずです。再現性と球質を手にすれば持ち前の攻撃的なプレースタイルで上位に顔を出してくることは間違いないでしょう。

世界ランキング2位のパク・インビは会見で「このコースはフェアウェイに打つこと、耐えること、どんな事態になっても冷静でいること」を攻略するために必要な条件として話しました。

繰り返しになりますが、「米女子ツアーで戦えるようになるために、長い目で見てスウィングの改造に着手している」と話していたのはわずかに2か月半前のことです。試合の中で自分の思い描くショットを打てるようになるために日々試行錯誤をしながら相当な努力を積み重ねていることだと思いますが、その現在地点を難コースのセッティングで確認できるのではないでしょうか。

This article is a sponsored article by
''.