日本選手のショット技術は海外選手と比較しても高い
今週末開催の海外メジャー「全米女子オープン」に参戦する小暮千広を指導し、そして今大会ではキャディとして現地でサポートしているのが、松田鈴英らも指導するツアーコーチ・黒宮幹仁。
練習ラウンドなどで海外選手たちのプレーをその目で見た黒宮に、“日本と海外の差”についてストレートに尋ねてみると、「まず日本の選手たちのショットのクオリティは十分に海外でも通用すると感じました」と話す。
「むしろ日本人選手のほうがショット自体は上手いのかなと思います。ただ、海外選手たちは厳しいコースセッティングで練習・プレーできる環境があるので、危機に陥ったときの脱出法やメンタル面でのタフさはあからさまに違いますね」(黒宮)
また、海外の選手は難易度の高いコースでの経験を積んでいることで危険な場所を避けるための「想定力」が高いという。
「日本ではティショットでそこまでイメージすることってないんですが、海外のコースではティショットからセカンド、アプローチ、パターまで、ファーストバウンドがどこに落ちるか、風の影響をどの程度を受けて、落ち際の傾斜をチェックしてどの方向に跳ねるかまで想定しながら打たなければいけないと感じました」(黒宮)
そこまで綿密に想定してショットを打つのは、そうしなければフェアウェイを外し、厳しい状態に追い込まれる危険性があるからだ。
たとえば今年の全米女子オープンの舞台である「オリンピッククラブ レイクコース」で言えば、深いラフ。「芝がウェットで絡みつきますし、ブラッシングされて芝が立っている状態なので、払い打ちでは全然ボールに届きません。そもそも脱出も難しい難易度です」と黒宮。
そういった難コースに対応するための柔軟性、引き出しの多さが求められる米女子ツアーだが、黒宮は「日本のトップ選手であれば十分に戦えると思います」と評価する。ただ、「一番違う」と話すのは選手たちの雰囲気だ。
「会場で見た海外の選手たちの雰囲気は、シンプルに“社会人の仕事場”という印象でした。まずここが日本の女子ツアーともっとも違う点ですね。選手たちはそれぞれの課題、今週やるべきことに対してにひたすら取り組んでいて、コーチが、というより自分自身で練習器具や必要な機材を使って試合に対して調整しているのが印象的でした」
日本のツアーでは選手同士の仲が良く会話しながら練習する光景もよく見られるというが、「海外の選手同士で会話する姿は見ませんでした。コーチなど自分のチーム同士で会話していることが多いですね」と黒宮は語る。
しかし、より海外のコースに対しての経験値を積んでいる米女子ツアー選手からしても全米女子は難セッティング。黒宮は「優勝予想スコアは8アンダー、予選カットラインは5~6オーバーくらいでしょうか」と予想する。アマチュアとして全米女子オープンに挑む小暮さんに関しては「耐えるゴルフになりそうですが、これも経験値になります。まだ結果に対しての恐怖がない状態で全米女子オープンに出られるのはとても大きいです」と黒宮。
全米女子オープンにはほかに渋野日向子、畑岡奈紗、笹生優花、勝みなみら11選手が参戦する。彼女たちが屈指の難コースに対してどのような想定をし、攻略するのか。そのプレーぶりに要注目だ。