プロアマ問わず多くのゴルファーを指導している吉田直樹コーチ。とくに谷原秀人ら、すでに自分のスウィングが固まっているはずのベテラン選手に対してスウィング改造の指導をし、選手たちが復調を果たしたことでも注目を集めている。はたしてコーチングでどんな点に気を付けているのか。詳しく話を聞いてみた。

「スウィングの、特にリリースの部分はなるべく直したくないんです」吉田

プロアマ問わず多くのゴルファーを指導している吉田直樹コーチが指導するプロの一人が、現在43歳の谷原秀人。欧州ツアーを主戦場に戦いながらも良い結果を出し切れていなかった谷原は、2019年から吉田に師事。

画像: 優勝から遠ざかっていた谷原秀人の復活には、吉田直樹コーチによるスウィング改造の成果があったという(写真は2021年の三井住友VISA太平洋マスターズ 撮影/岡沢裕行)

優勝から遠ざかっていた谷原秀人の復活には、吉田直樹コーチによるスウィング改造の成果があったという(写真は2021年の三井住友VISA太平洋マスターズ 撮影/岡沢裕行)

すると2020年9月開催のツアー外競技「ISPS HANDA 医療従事者応援 ジャンボ尾崎記念 チャリティトーナメント」で優勝。10月開催の「日本オープン」では単独2位、12月開催の「ゴルフ日本シリーズJTカップ」では2位タイ、そして2021年「三井住友VISA太平洋マスターズ」でとうとう復活優勝を遂げた。

画像: 三井住友VISA太平洋マスターズを制し、国内ツアーは通算15勝に(写真は2021年の三井住友VISA太平洋マスターズ 撮影/岡沢裕行)

三井住友VISA太平洋マスターズを制し、国内ツアーは通算15勝に(写真は2021年の三井住友VISA太平洋マスターズ 撮影/岡沢裕行)

谷原は、数十年プロの世界でゴルフを続けているベテラン選手。それゆえにスウィングイメージも固まっていて大胆な改造は難しい……のかと思いきや、なんと「谷原選手の場合は、ほとんどイチからというくらい、変えています」と吉田。

「グリップからアドレスの位置まですべて変えました。ただし『スウィングの形を変えていく』という指導ではありません。スウィングの形というのは『力がどう使われているか』の結果としてののリアクションなので、形を変えるという意識ではなく、正しい力のベクトルの方向を整えてあげた、というイメージですね」(吉田直樹コーチ、以下同)

画像: インタビューに答える吉田直樹コーチ

インタビューに答える吉田直樹コーチ

片山晋呉を指導していたときは、こんな話をしてくれていた。

「彼は向上心の塊みたいな人ですから。つねに新しいものを取り入れていこうとする。僕は国内ツアーで優勝するだけなら前のスウィングのまま、新しい要素を取り入れる必要はまったくないって彼に伝えたんですよ。だけどもっともっと上手くなりたいということで、いままで彼の築き上げてきた理論とは変わってきている新しい理論を伝えていきました。たとえば、昔だったら上体を閉じたまま打ちなさい、という指導も多かったですけど、いまは逆に、体は開いて右ひじが曲がった状態でインパクト、そこからボールを押していく、という考えが主流です。そういう長いインパクトゾーンを手に入れる動きを目指して習得していったという感じですね。ほかにもいろいろありますけど」

同じベテランといえども、考えかたやスウィングはもちろん選手それぞれ。「性格も含めて、それぞれに適した指導を丁寧に考えるのが僕の仕事」と吉田。とはいえベテラン選手がいままで積み上げてきたものは若手の比ではないはず。ベテラン選手に向ける指導において共通して気を付けることなどはないのだろうか。

「結果を残しているベテラン選手は、スウィングの、とくにリリースの部分でボールをコントロールして成功してきているので、そこを変えるのか変えないかはすごく気を使いますね。僕の考えとしてはなるべくそこは変えたくないんです。リリースの感覚や形はドライバーであってもアプローチであっても共通する部分があるのでドライバーや長い番手を変えると全部が変わってしまい、再現性が落ちることにもつながります。そうするとせっかく効率のいいスウィングを作っても全体的なパフォーマンスは落ちてしまうんです。プロもプロコーチも結果を出さなくてはいけませんから、どれだけ直す期間があるのかをふまえ、どこまで変えるのか考える必要がありますね」

また、クラブの影響についてもベテラン選手は若手と比べて大きいという。

「ベテラン選手になりますと、スプーンはいいけどドライバーは曲がるってパターンは結構多いんですよ。とくにベテラン選手の場合はフェースローテーションが大きいので、いまの大型ヘッドにはスウィングが合いづらいんです。クラブヘッドを小さくシャフトは短い状態でいくのか、大型ヘッドに適したスウィングに変えるのかは悩みどころですね。いまの若い学生ですと最初から自然と大型ヘッドに合うスウィングですから、そこはやはり指導方法が変わるところです」

時代や道具の進化に対応する必要が迫られているのはプロでもアマでも同じこと。そして、ゴルフに対する練習量や感覚が桁違いのプロであっても、スウィングの重要な部分を変えることに危険が伴っているということは、アマチュアも肝に銘じておきたいことだ。

画像: 片山晋呉・谷原秀人を指導する吉田直樹コーチが語る、スウィング改造で“変えたくない”ところ youtu.be

片山晋呉・谷原秀人を指導する吉田直樹コーチが語る、スウィング改造で“変えたくない”ところ

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