開催コースのトーリーパインズに“地の利”あり
ザンダー・シャウフェレは、ジョーダン・スピースや、ジャスティン・トーマスらと同世代の93年生まれの27歳。大学時代にアマチュアのタイトルを数多く獲得し、卒業後の2015年に下部ツアーの出場権を獲得。そこからPGAツアーへと着実に進んできました。
私が現地取材した2017年の「全米オープン」では、初出場ながら初日を2位タイでスタートし、最終的には5位タイと、その存在を印象付けました。同じく2017年には国内ツアー「ダンロップフェニックス」に出場し2位タイ。その年のPGAツアー「ツアー選手権」を制し、ルーキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれています。
2018年の「全英オープン」でも2位タイ、2019年には「WGC-HSBCチャンピオンズ」優勝、「マスターズ」2位タイ、「全米オープン」3位タイと大舞台での強さに定評があります。松山英樹選手が優勝した4月の「マスターズ」でも最後まで優勝争いに加わっていたのは記憶に新しいところですよね。
1メートル78センチ79キロとPGAツアーの選手としては決して大きくはない体形から平均306.4ヤード(26位)の飛距離を持ち、積極的にピンを狙うので、乗っていくとどんどんスコアを伸ばします。ではそのスウィングを見てみましょう。
画像A左はアドレスの写真。クラブと腕で作る角度が少ないハンドアップ気味に構えています。手元が低いハンドダウンは手首の動きを使いやすく、手元が高いハンドアップは手首の動きを少なくできるメリットがそれぞれあります。シャウフェレの場合は、画像A右のテークバックを見ても両腕を伸ばしながらワイドに(手が体から遠くなるように)テークバックしているので、手首の動きを少なく使うタイプと見て取れます。
画像B左を見ると手元の位置は頭よりも少し高く、体を横に回すというよりも縦方向にねじるようにエネルギーを溜めていることがわかります。左手首が手のひら側に折れることでシャフトはターゲットよりもやや左を指すレイドオフ。フェース向きはほぼ45度とスクエアです。
そこから、画像B右のインパクトではおヘソがターゲットを向くくらいまで一気に下半身を使って回転していきます。手首の動きを多くは使わずに横方向、回転、縦方向の飛ばしのエネルギーの三大要素をしっかり使うことで300ヤードを越える飛距離を効率よく引き出していることがわかります。
手先を使わずに下半身や体幹を積極的に使うことで再現性の高いスウィングを身につけていること、メジャーに合わせてピークを持ってくる調整力も高いことを表しています。
シャウフェレと幼馴染で、現在は日本ツアーに参戦するエリック杉本選手に、全米オープンでのシャウフェレのプレーについて予想してもらうと、こんな答えが帰ってきました。
「開催コースのトーリーパインズはザンダーと何度もプレーしたコースですが、全体的にとにかく長いです。グリーンも硬いですしラフはキクユ芝で深く硬いです。フェアウェイキープとショートゲームが重要になってくると思います。ザンダーは球も飛ばせるし、メジャーに強いので悪くてもトップ10には入ってくるでしょうね」(杉本)
何度か本人やお父さんに話を聞いたことがありますが、お父さん、お母さんは日本語が堪能でシャウフェレ本人も話している内容は理解できていました。「日本食が好きで納豆も大好きだよ」と茶目っ気たっぷりの笑顔が印象的でしたが、ゴルフは最終日にスコアを伸ばしてくるアグレッシブでメンタルも強いプレーでライバルたちにとっては怖い存在です。
同じく地元出身で50歳のフィル・ミケルソンのグランドスラム達成も見たいところですが、シャウフェレも優勝争いに加わってくることは間違ないでしょう。