「全米オープン」の最終日。世界ランク上位選手が名を連ねた激闘を制し、メジャー初優勝を成し遂げたジョン・ラーム。プロゴルファー・中村修がその戦いぶりをレポート。

私がはじめてジョン・ラームを見たのは2017年の全米オープン。松山英樹選手が2位に入った試合ですが、その試合で予選ラウンドを松山選手と同組でプレーしていたのがラームでした。

前年にプロ転向したばかりだったラームは、深いラフに苦しみ、怒りを露わにしながらのプレーで、予選落ちに終わっていました。凄まじい才能を持ちながら、感情をコントロールできていない姿が印象的だったのと、そのとき握手を交わした手がまるで野球のグローブのように大きく、分厚かったことを覚えています。

画像: メジャー初優勝、スペイン人としても初優勝となった「全米オープン」を制覇したジョン・ラーム(写真 USGA/Jeff Haynes)

メジャー初優勝、スペイン人としても初優勝となった「全米オープン」を制覇したジョン・ラーム(写真 USGA/Jeff Haynes)

それから4年、最終日はチャンスにつけたパットが入らず、いつ崩れてもおかしくない展開を耐えに耐え、最終ホールではバンカーからピンを狙うリスクを避けるマネジメントの妙も見せて、ラームが全米オープンのタイトルを手に入れました。

今回の全米オープンは、まさに全米オープンらしい我慢比べの展開でした。周りをラフで囲まれた硬いグリーンに深いラフ、傾斜のすぐそばに切られたピン。一流選手でもほんのわずかなミスから簡単にボギーを打ってしまいます。

一時はトップをうかがったロリー・マキロイ、ブライソン・デシャンボー、コリン・モリカワらが次々に崩れていき、ブルックス・ケプカも伸ばしきれない。そんななか、最後まで耐え抜いたのがラームと、最終ホールまで優勝のチャンスを残したルイ・ウーストヘイゼンの二人でした。そして、最後まで耐えに耐えたラームが、17、18番の連続バーディで勝負を決めました。

画像: 17番でバーディを決めガッツポーズのジョン・ラーム(写真 USGA/Jeff Haynes)

17番でバーディを決めガッツポーズのジョン・ラーム(写真 USGA/Jeff Haynes)

技術的には、ウェッジショットやショートアイアンでのショットで、ラームはターフを深くとりません。つまり、入射角がそれだけ浅いということ。それでいて、インパクトでは手元が先行するハンドファーストのカタチがつくれている。そのことによって、打ち出し角とスピン量がともにしっかりと確保できています。

硬いグリーンの厳しい位置に切られたピンに対し、ラームは積極的に狙っていくことができていましたが、これは、球の高さとスピン量がともに高くなければできません。その上で、しっかりとボールをコントロールすることができていました。

トラックマンなどの弾道計測機の進化により、グリーンにボールを止めるためにはどれくらいのスピン量、どれくらいの降下角度が必要かがわかってきています。そして、そのスピン量や降下角を得るためにはどのようなインパクトが必要となるのかも解明され、選手たちはそのようなデータに基づき、スウィングを磨き上げています。

ラームには、硬いグリーンでボールを止められる繊細な技術があります。そして見ての通りのあの肉体。パワーはもとよりツアー屈指です。昨年のブライソン・デシャンボーもそうでしたが、全米オープンを制するには技術とパワー、両方が求められる時代になっているのかもしれません。終わってみれば、ラームが勝つべくして勝ったような印象を受けました。

全米オープンを制したことで、今後ラームにはメジャーチャンピオンの風格、貫禄のようなものが備わってくると思います。まだ26歳。ついにメジャーの扉をこじあけたことで、今後キャリアグランドスラムも狙えるような選手へとさらに成長していくような気がしてなりません。

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