ニチレイレディスでジョン・ミジョン選手を4ホールにわたるプレーオフの末破り、見事2021年の初優勝を手にしたシン・ジエ選手。
印象的だったのは、最終ホールでもあり、プレーオフの舞台でもあった18番ホールの攻め方です。最終日にティが18ヤード前に出されたこのホール、シン・ジエ選手は5回続けて越えるのに225ヤード必要なバンカー越えを狙っていったのです。
18番のバンカー越えは多くの選手が狙っていましたし、珍しい攻め方というわけではありません。
ただ、シン・ジエ選手のドライビングディスタンスは229.62ヤードでツアー68位。決して飛ぶほうではありませんし、彼女は無理な攻めをそもそもしない選手です。なぜバンカー越えを狙ったのか、試合後の会見で質問してみると、こんな答えが返ってきました。
「(18番のバンカー越えは)私のドライバーショットでいつもギリギリです。私のなかでは100 パーセントで振りました」
やはり、シン・ジエ選手のイメージとは異なる“マン振り“だったことがわかります。この作戦は功を奏し、正規の18番ではバンカーにつかまりパーでしたが、プレーオフの4ホール連続でバンカー越えに成功し、4連続でバーディを奪うという驚異的なパフォーマンスにつながっていきます。
ステディなプレーが持ち味のシン・ジエ選手ですが、いくときはいく。このメリハリが世界60勝を挙げている選手の強さなんだと改めて痛感させられます。
また、距離的にギリギリのバンカーを越すために、気をつけた点への質問の回答も印象的でした。
「一生懸命振るときは、前にいく気持ちが強くなるので、逆にバックスウィングとかリズムをしっかりしながら前に振る感じで(スウィング)しました」
シン・ジエ選手でも飛ばそうと思うとバックスウィングが浅くなる。これは、多くのアマチュアゴルファーの参考になるのではないでしょうか。飛ばそうと思うときほど、バックスウィングをしっかりとり、いつも通りのリズムで振っていく。それが飛ばしのコツというわけです。
ニチレイレディスは7回出場して今回で4度目の勝利だというシン・ジエ選手。韓国になかなか帰れないことでツアーのリズムが上手く作れていなかったようですが、得意コースで調子をつかみ、念願の賞金女王へ弾みをつけ上位争いが増えてきそうな気配です。