「アース・モンダミンカップ」の最終日、2位に4打差の単独首位でスタートした菊地絵理香が4バーディノーボギーでプレーしトータル20アンダーで4年ぶり通算4勝目を完全優勝で飾った。現地で見たプロゴルファー・中村修のレポートをお届け。

上手いと言われるより強いと言われるほうが嬉しい

菊地絵理香選手は7アンダーの65で初日首位スタートを切ると、2日目以降も69・66・68とすべて60台のスコアを並べ完全優勝を果たしました。ラフが深くグリーンも速いセッティングの中で叩いたボギーはわずかに2つ。初日のラウンド後の会見で「ドライバーを使ったのは半分くらい」と語っていましたが、徹底したフェアウェイキープのマネジメントでスコアを伸ばしました。

4日間のスタッツを見ると、フェアウェイキープ率76.7%(全体の1位)、パーオン率76.3%(全体の8位)、パット数26.75(全体の2位)とショット、パットともに抜群の安定感で4日間を駆け抜けたことが見て取れます。

画像: 4年ぶりの通算4勝目を挙げた菊地絵理香(写真は2021年のアース・モンダミンカップ 写真/岡沢裕行)

4年ぶりの通算4勝目を挙げた菊地絵理香(写真は2021年のアース・モンダミンカップ 写真/岡沢裕行)

ただ、それでも決して楽勝ではありませんでした。最終日、初優勝を目指す西郷真央選手の激しい追い上げがあったからです。

最終日、2位の西郷真央選手に4打のリードを持って最終日をスタートした菊地選手は、幸先よく1番でバーディとし、2位の西郷真央選手に5打差とリードを広げます。

しかし、初優勝を狙う西郷選手は4番から4連続バーディを奪い猛追。菊地選手も負けじと11番でアゲンストのなかセカンドを10センチにつけて会場を大きくどよめかせるなど、見応えのある伸ばし合いの展開となりました。

16番パー4では、左に切られたピンサイドのラフに外しピンチを迎えます。このアプローチをワンクッションを入れて1.5メートルに寄せ、これを気持ちでねじ込みギャラリーからは大きな拍手と歓声が湧きました。やはりギャラリーの声援は選手を後押しすることを改めて感じます。

最終18番パー5では西郷選手が2オンに成功。西郷選手イーグル、菊地選手ボギーなら同スコアに並ぶという展開の中、菊地選手は60ヤードほどの3打目をピン横に乗せパーセーブ。トータル20アンダーで完全優勝を果たし、西郷選手は2打及ばずに2位で終えました。

3位の西村優菜選手は11アンダーということを考えると今週はこの二人がずば抜けていたことがわかります。

最終日の二人のデッドヒートを見ているとドライバーを持ち攻め続けるフェードヒッターの西郷選手に対し狭いホールでは3Wでフェアウェイキープを優先するドローヒッターの菊地選手。二人の攻め方や構える方向は対照的でした。西郷選手は、持ち味のアイアンショットの調子にずれが生じていたと終了後の会見で話しましたが、7バーディ1ボギーでプレーし最後まで菊地選手を苦しめたプレーはあっぱれのひと言です。

画像: フェアウェイキープを優先するマネジメントで4日間でわずかにボギーを2つに抑え20アンダーまでスコアを伸ばした(写真は2021年のアース・モンダミンカップ 写真/岡沢裕行)

フェアウェイキープを優先するマネジメントで4日間でわずかにボギーを2つに抑え20アンダーまでスコアを伸ばした(写真は2021年のアース・モンダミンカップ 写真/岡沢裕行)

ここ数年は何度も優勝のチャンスを逃してきた感のある菊地選手ですが、今大会では崩れる要素が見当たらないくらいショット、パットともに抜群の安定感でした。その安定感抜群だったショットについては、オフからトレーニングに励み飛距離アップしてきたことと先週の「ニチレイレディス」でつかんだものがあったようです。

「オフにトレーニングに取り組んで、毎週のようにマン振りして飛ばしてたので、それが基準になったというか。でも最近ちょっと振り過ぎていたことに気づいて、少し曲がりすぎてるのかなと。飛んでいたので調子に乗って振りすぎた。それ(マン振りしなくても飛ぶこと)を先週気づいてそれが今週大きく働いたかなとは思います」(菊地)

そして最後まで崩れずにプレーできた裏には、「ここで変わんなきゃ多分何も変わらない」という強い思いがあったようです。

「『必ず来るな』という風に思わせる選手は強いなと思いますし、上手いと言うよりは強いと言われるほうが私は嬉しいので……。ここで負けるとまたそういうイメージを与えてしまうなと思いながら今日ラウンドしてました。なので、ここで変わんなきゃ多分何も変わらないだろうなと思っていたので、今日はずっと気を緩めることなくずっと本当に集中して回ってたので」(菊地)

4年ぶりの勝利の裏には、積み重ねたトレーニングと強い選手になりたいという思い。そして怖くても逃げずに腹をくくってプレーした強い気持ちがありました。今までの自分を越える気持ちの強さを教えてくれた4日間でした。

実は、同組でプレーした上田桃子選手のキャディは偶然にも2019年末に結婚した菊地選手の夫でプロキャディの新岡隆三郎さんでした。キャディとプレーヤーとして組むことはないという二人ですが、夫に目の前で4年ぶりの勝利を見せたことも印象的でした。

強さをまとってこれからも優勝争いする強い菊地選手がまた見たい。そう思わせてくれる優勝でした。

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