ゴルフ場に行くと、少なくないスペースが「お土産売り場」に割かれているのをよく目にする。では、ゴルフ場の「お土産品売り場」の市場規模ってどれくらいあるのだろうか? 矢野経済研究所で「ゴルフ産業白書」の発刊に携わる三石茂樹がレポート。

当社「国内ゴルフ用品市場規模」の中に「お土産品」は含まれていない

皆さんは、ゴルフ場で販売されている「お土産品」を購入されたことはあるでしょうか。ゴルフ場によって取り扱いは異なりますが、地元で獲れた野菜や魚介類だったり、ゴルフ場のレストランで調理されたスイーツ類だったり、ゴルフ場のプロショップやフロント近辺では様々な「お土産品」が販売されています。今回はそれらゴルフ場で販売されている「お土産品」の市場規模について考察してみたいと思います。

私が働いている矢野経済研究所では、毎年8月に「ゴルフ産業白書」という資料を発刊していますが、そこでは国内のゴルフ用品市場規模や商品区分別のブランドシェアを算出しています。

ところで「国内ゴルフ用品」って一体何なのでしょうか。ゴルフ業界の中では当たり前のように使われている言葉ですが、意外とその「定義」について知っている人は少ないかもしれません。せっかくの機会なので、当社が定義している「国内ゴルフ用品」の定義についてお話させて頂きたいと思います。

国内ゴルフ用品の定義:「個人のゴルファーが“一般的に”消費する、“ゴルフをプレーすることを主たる目的とした用品類”」

これが当社で定めている「国内ゴルフ用品」の定義です。もう少し噛み砕いて表現すると「ゴルファーが買っている道具」とでもなるでしょうか。

当社が定義しているもの以外にも数多くの「ゴルフ関連用品」が存在しており、その市場規模は恐らく「兆」に近いレベルになるのではないかと考えています。具体的にはゴルフ練習場で使われている「打席用マット」「ボール送り機」、更には「鉄柱」もそれに該当しますし、ゴルフ場で皆さんが利用している「カート」や「ティーマーク」、更には芝草管理用の様々な重機類もそれに該当します。

話が少し横道に逸れてしまいましたが、実は当社が「ゴルフ産業白書」の中で推計算出している「国内ゴルフ用品市場規模」の中には上述した(飲食類を中心とした)「お土産市場」は含まれていないのです。2020年8月に発刊した「2020年版ゴルフ産業白書」にて算出した2019年のゴルフ用品市場規模(小売換算ベース)は3,770憶円ですが、ゴルフ場における「お土産市場規模」はこの「枠外」ということなのです。

「お土産品」の市場規模は約14億円?

弊社「ゴルフ産業白書」にて推計算出している3,770憶円という小売ベースの国内ゴルフ用品市場規模に加え、幾つかのゴルフ場にヒアリングを行い大雑把な「ゴルフ場におけるお土産市場規模」を推計算出した結果、2019年の市場規模はおよそ14億円、正確には13億8,000万円程度の規模が見込まれる、という結果となりました。なお今回算出した「お土産市場規模」は以下のように定義しました。

画像: ゴルフ場のお土産品売り場は、レストランで調理された名物や地元の特産品など様々な商品を取り扱う

ゴルフ場のお土産品売り場は、レストランで調理された名物や地元の特産品など様々な商品を取り扱う

・ ゴルフ場を訪れたプレーヤーがゴルフ場で購入する「食料品」を指す
・具体的には地場野菜や米類、菓子(スイーツ)や調味料類
・ 主たる用途は「家族などへのお土産(自分だけゴルフに行ったことに対する罪滅ぼし)」
・接待ゴルフにおける「取引先への手土産(予めゴルフ場以外の場所で購入しゴルフ場に持参するもの)」は含まない
・ ゴルフコンペにおける「賞品」としての需要を含む(コンペ主催者が賞品としてゴルフ場に持ち込んだものではなく、ゴルフ場側が上述したお土産品を賞品として拠出したものを対象とする)
・プレーヤーがプレー中に飲む飲料類(売店での売上)は含まない

ゴルフ場でお土産を購入しているのは、全プレーヤーの僅か1.6%?

では、この「約14億円」という市場規模をゴルファーのプレー需要面から検証してみることにします。一般社団法人日本ゴルフ場経営協会(NGK)が発表している2019年の全国のゴルフ場入場者数(延べ)は8,631万9,165人となっています。

同協会のゴルフ場入場者数は各ゴルフ場が徴収しているゴルフ場利用税の税収入をベースに算出されており、日本で一番精度の高いゴルフ場入場者に関するデータと言われています(なお入場者数には非課税入場者が含まれています)。

当社が推計算出した「13億8,000万円」という市場規模と延べ入場者数のデータを用いて「ゴルファー1人の1回のプレーあたりのお土産購入金額」を算出すると「約16円」という現実離れした数字になります。言うまでもなく、全てのゴルファーがプレーの度にゴルフ場でお土産を購入する訳がありません。

両者の数字からはなかなか現実的な数字が見えてこないので、ここでは「ゴルファーがゴルフ場で購入するお土産品の平均単価」を1,000円と仮定します。この数字を用いて「13億8,000万円」という市場規模を除算すると、年間でお土産品を購入するゴルファーの延べ人数は「138万人」となります。

この138万人という数字はNGKが発表している約8,600万人という数字の僅か1.6%に過ぎない数字となります。幾つかの仮説の上に推計したデータですので「推測の域を出ない」話とはなりますが、ゴルフ場における「お土産市場」について以下のようにまとめることができます。

・ 市場規模は13億8,000万円(この数値は、ゴルフ場における物販市場規模の約9%にあたる)
・この市場を形成しているのは、全ゴルファー(年間延べゴルフ場入場者数)の1.6%である

これまた単純な計算で恐縮ですが、ゴルフ場でお土産を購入するゴルファーの構成比が倍(3.2%)になれば市場規模は倍の27億6,000万円になる、ということになります。これらの数字の精度向上、検証には私の方でもう少しデータを積み重ねていく必要があると思いますが、現時点でゴルフ場におけるお土産市場は「ブルーオーシャン」である、ということはどうやら言えそうです。

こんな「皮算用」ばかりしていると何だか金の亡者みたいですが、そうした産業的な視点よりもゴルフ場でプレーした人が自分以外の「誰か」を思ってお土産を購入する。それによってプレーヤー以外の「誰か」も幸せになって(または自分や家族をほったらかして1日家を空けたパートナーを“許す”という気持ちになって)、その夜の食卓も賑わいが増して、お土産を買ったプレーヤーも次回のゴルフに行きやすくなる。そうした「幸せの好循環」が創出されることによって、結果的にゴルフ産業が活性化する。

そんな視点でゴルフ場の「お土産市場」を捉えた方が、もしかしたら市場拡大の可能性は高くなるのかもしれません。

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