「高慣性モーメント」をうたうドライバーが増えてきた……というか、“当たり前”になってきた。そんななか、高慣性モーメントドライバーには合う・合わないがあるという話もよく聞かれるようになってきた。では、それは一体なぜなのか? 今さら聞けないゴルフギアの疑問を、ギアライターの高梨祥明が解説。

高初速&高慣性!? ルール上限の性能では満たせないドライバー選びの最重要ポイント

今はどのドライバーも慣性モーメントの大きさを第一の進化ポイントとして挙げている。反発性能、ヘッド体積、長さの上限がルール上マックスに達しているからこそ、この5年は特に上限まで余地のあった慣性モーメント値に開発の眼が向けられてきたわけである。

ゴルフルールでは慣性モーメントは5900g・㎠以内と定められているが、2021年ではもう5500g・㎠前後のモデルが登場するなど、こちらもほぼ上限値に達しつつある。

画像: 各メーカーの最新ドライバーの中でも慣性モーメントを大きく直進性を重視したモデルが増えている

各メーカーの最新ドライバーの中でも慣性モーメントを大きく直進性を重視したモデルが増えている

ヘッドの慣性モーメントを大きくすると何がいいのかといえば、第一に飛んでいくボールに変な回転がかかりにくくなることが挙げられる。ボールをヘッドの芯でとらえることがほとんどないゴルフの場合、インパクトの衝撃でフェース(ヘッド)が押し込まれフェースの向きが変わってしまう。

そうするとボールが地面に対して斜めに傾いて回転しながら飛んでいく(サイドスピンという)ため、ボールが左右に大きく曲がったりしてしまうのだ。また、打点が上下にズレても、その衝撃でフェースの向きが変わりバックスピンが増えたり、減ったりしてしまう。

慣性モーメントが大きいヘッドは、多少芯を外しても衝撃でフェース向きが変わることが少ない。このため、予期せぬサイドスピンやバックスピンの増減を発生させず芯で打った時と同じように直進性の高い弾道になるわけである。

加えて最新ドライバーはフェースの肉厚設計やカップフェースなどの構造によって、ルール上限の初速性能をある程度広いフェースのエリアで得られるようにしている。芯を外しても、高初速で適正なスピン量、そして予期せぬサイドスピン(回転の傾き)も発生させず真っすぐに飛んでいくいくようになっている。それが現在の最新ドライバーだ。

さて、そんな夢のような進化を遂げている最新ドライバーだが、実は慣性モーメントや高初速フェースではサポート出来ない重要なポイントがある。それが打ち出し方向の決定である。具体的にはインパクトでのフェースの向きのコントロールが、ゴルファーには“別の問題“、道具選びでの課題として残されているのだ。

前述したとおり、現在のドライバーは慣性モーメントが大きく、打点が変わっても高初速、適正スピンで真っすぐにボールは飛んでいく。それはつまり、インパクトでフェースが狙った方向ではない向きになっていれば、意図しない方向に真っすぐ、きれいに、大きな放物線で、遠くへ飛んでいってしまうということである。

特に、慣性モーメントが大きなドライバーヘッドの場合、普通に振ればフェースが右を向いてインパクトしやすい傾向にある。慣性モーメントを大きくするためにはヘッド重心からなるべく遠くに重量物を持っていく必要があり、そのために多くの場合バックフェース方向に加重されている。動かせるウェート含め、ソールのバックサイドに重りが付けられているのは、慣性モーメントアップのためでもあるのだ。

まとめると、慣性モーメントの大きいヘッドはスイング中にヘッド後方が下がり、右向きインパクトしやすくなってしまう。慣性モーメントの上限を目指せば右プッシュ系のボールが出やすくなってしまう。これは宿命なのだ。

インパクトで狙った方向にフェースを向けるのが先。慣性モーメントの大きさが効いてくるのはその後

使い手であるゴルファーは、それを踏まえて対策を講じなければならない。方法としては、ヘッドのお尻がダウンスイングで大きく下がらないようなスウィングをする。シャローイングなど最新のスウィングメソッドを身につけ、大慣性モーメントドライバーで狙ったエリアに大きく飛ばしているPGAプレーヤーがいるのは周知の事実である。

僕はプロじゃないし、ドライバーのためにスウィングを変えたくない! と思うならば、一度慣性モーメントは横に置き、とにかく狙った方向に打ち出せるドライバーを見つけるべきである。今はシャフトの可変スリーブやバックウェイトで“つかまり”を変えられるドライバーも多いが、それらはあくまでも補助機能で、そこそこ合っているドライバーの微調整に使うもの。

ドライバー選びをする際は、カチャカチャなんかせずに、デフォルトのウェート位置でだいたい狙った方向に打ち出していけるモデルを選ぶべきである。カチャカチャはその“合っている”ドライバーを季節や自分の調子に合わせるときに保険的な安心材料として使うもの。カチャカチャしないと狙った方向に飛ばないドライバーは、最初から買わないほうがいいと思われる。

狙った方向にある程度ボールが飛んでいくドライバーを選んで初めて、高い慣性モーメントの“やさしさ“と広域反発フェースの飛びを実感できるようになる。芯を多少外しても目標方向にしっかり飛んでくれるからだ。

最新ドライバーの情報を取りに行けば、必ず高初速性能と高慣性モーメントによる“ブレない弾道”の2大進化ポイントに行き当たるが、ゴルフにとって最も大事なのは、狙った方向にボールを打ち出す! ということだ。我々は何よりも優先して“枠”に飛ばしていけるドライバーを探すべきである。

正直に言えば、最新ドライバーならば、すべてのモデルが高初速(反発ルールを超えないように苦労しているくらい)であり、及第点以上の慣性モーメント(4600g・㎠前後)を備えている。もはや標準装備の機能なのだから初速もモーメントも気にしなくてOK。そんなことよりも目標をしっかり定め、「あそこに向かってボールを打つ!」ことに全力を注ぐべきである。それができれば必ず飛距離もスコアも良くなるはずだ。

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