国内男子ツアーを賑わすアンダー25歳の選手をピックアップし、そのスウィングを分析する「男子ツアーU25スウィング図鑑」。第1回は18歳の久常涼(ひさつね・りょう)のスウィングを、プロゴルファー・中村修が分析。

久常涼選手を初めて見たのは「ゴルフパートナープロアマトーナメント」でした。

日本ジュニアや全国高校ゴルフ選手権を制した渋野日向子選手と同じ岡山の作陽高校出身の18歳が出場しているということは事前情報で得ていましたが、実際にそのプレーを見ると、体を使って振りちぎるようなドライバーショット、ピンだけを見て積極的に狙うアイアンショットなど、若さ溢れるプレースタイルに魅了されました。

画像: 岡山県の作陽高校出身の18歳、久常涼。AbemaTVツアー優勝の権利で8月のレギュラーツアー2試合の出場権を得た(写真は2021年のゴルフパートナープロアマトーナメント)

岡山県の作陽高校出身の18歳、久常涼。AbemaTVツアー優勝の権利で8月のレギュラーツアー2試合の出場権を得た(写真は2021年のゴルフパートナープロアマトーナメント)

「ゴルフパートナープロアマトーナメント」を16位タイで終え、その後は下部ツアーのAbemaTVツアーに出場し3位タイ、6位タイと結果を出すと「2021ジャパンクリエイトチャレンジin福岡雷山」の第2ラウンドに61のビッグスコアを叩き出し、最終日も67とまとめ2位に4打差をつけ初優勝を飾っています。

飛ばしやピンを狙うだけのプレーでは3日間の大会を制することはできません。ナショナルチームで学んだメンタル面も含めたマネジメントに実戦経験を積み重ねていることが、高校を卒業したばかりの18歳が下部とはいえプロのトーナメントでの勝利につながっています。

私が見た際も、振りちぎるようなマン振りで最大の飛距離を狙ったかと思えば、ドライバーを短く持ってしっかり振るショットも使い分けたりと、ホールによってマネジメントしていました。ではスウィングを見てみましょう。

画像Aの左を見ると、太ももを張り、重心を落として地面をしっかりと踏みしめ、静から動へ移っていく気配の感じられる躍動感のあるアドレスをとっています。そこから両腕を伸ばして手元を体から遠くへ上げながら大きな筋肉を引き延ばし、柔軟性を感じられるテークバックへと移ります(画像A右)。テークバックではかなり早い段階で背中がターゲットを向いています。

画像: 画像A 両足を地面にしっかりとつけ、グリップはオーソドックスなスクェアグリップで握る(左)、手元を体の遠くに上げながらワイドにテークバックする(右)(写真は2021年のゴルフパートナープロアマトーナメント)

画像A 両足を地面にしっかりとつけ、グリップはオーソドックスなスクェアグリップで握る(左)、手元を体の遠くに上げながらワイドにテークバックする(右)(写真は2021年のゴルフパートナープロアマトーナメント)

画像Bの左では肩が90度以上回った深いトップを右足でしっかりと受け止め、骨盤の前傾角がキープされています。テークバックで引き延ばされた筋肉が縮む際に生まれるパワーをブレずに開放する準備が整っていますね。

画像Bの右では、センターから右サイドを軸に下半身が巻き戻され、上半身と下半身の捻転差がはっきりと見て取れます。

画像: 画像B 上体の捻転を右サイドでしっかり受け止めながら肩は90度以上回るトップを作る(左)、センターから右に軸を取り上半身と下半身の捻転差を大きく作ることでヘッドスピードを上げるパワーを生む(右)(写真は2021年のゴルフパートナープロアマトーナメント)

画像B 上体の捻転を右サイドでしっかり受け止めながら肩は90度以上回るトップを作る(左)、センターから右に軸を取り上半身と下半身の捻転差を大きく作ることでヘッドスピードを上げるパワーを生む(右)(写真は2021年のゴルフパートナープロアマトーナメント)

画像Cでインパクト前後の動きを見ると、踏み込んだ左足を伸ばしながら得た回転力をクラブを前に進める動きへと変換し、ゆるやかな入射角でボールをとらえていることが見て取れます。このショットは思ったよりも右に出てフィニッシュを少し崩しましたが、スピード感、躍動感は見ていてワクワクさせるものがありました。

画像: 画像C 体をボールに右側にキープしながら左ひざを伸ばす動きを入れ回転力を得る(左)、その力をクラブを前に進める力に変換し振り抜いている(右)(写真は2021年のゴルフパートナープロアマトーナメント)

画像C 体をボールに右側にキープしながら左ひざを伸ばす動きを入れ回転力を得る(左)、その力をクラブを前に進める力に変換し振り抜いている(右)(写真は2021年のゴルフパートナープロアマトーナメント)

AbemaTVツアーに勝ったことで8月に開催されるレギュラーツアー2試合の出場権もゲットしました。高校卒業後に海外の大学への進学も視野にあったそうですが、コロナの影響もあり日本でプロ転向することを決断したといいます。4年後の22歳にはPGAツアーに行きたいと海外志向を持っている久常選手。

未来にたっぷり時間がある18歳、下部ツアーからレギュラーツアー、そして世界へと活躍することを期待しています。

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