荒天のため2日間の短競技縮となった「資生堂レディスオープン」の最終日、首位と1打差の2位タイでスタートした鈴木愛が1イーグル3バーディ1ボギーの4アンダー(トータル10アンダー)で終え今季初優勝(通算17勝目)を挙げた。プロゴルファー・中村修が現地からレポート。

4日間大会を予定していた資生堂レディスでしたが、初日、二日目と荒天のため中止となり、2日間の短期決戦となりました。初日となった土曜日も雨の影響が残り、スタート時間は遅延します。競技成立となる36ホール消化を目指すため、ティーイングエリアを移動し距離を短くする設定としましたが、45名がホールアウトできずにサスペンデッドとなります。

最終日の朝6時27分から残った選手が第1ラウンドを終えると、本来は1アンダー68位タイまでが予選通過の予定でしたがセカンドカットが行われ2アンダー49位タイまでの選手で争われることになりました。

そんな波乱含みの第1ラウンドを終えて首位に立ったのは7アンダーのジョン・ミジョン選手。続く6アンダーに鈴木愛選手ら8名が並ぶ混戦状態で、最終ラウンドが9時20分からスタートしました。

画像: 2年ぶりの17勝目を挙げた鈴木愛(写真は2021年の資生堂レディスオープン 写真/大澤進二)

2年ぶりの17勝目を挙げた鈴木愛(写真は2021年の資生堂レディスオープン 写真/大澤進二)

バックナインに入って徐々に優勝候補が絞られてきます。前半を3アンダーでプレーし9アンダーまで伸ばした鈴木選手、続いて藤田さいき選手、山下美夢有選手、西郷真央選手、勝みなみ選手が8アンダーで並びますが藤田選手が連続ボギーで脱落、山下選手は伸ばせずに8アンダーでフィニッシュします。

鈴木選手も14番でボギーとし8アンダーに後退すると、最終組の2組前の西郷選手が16番のパー5でバーディを奪い9アンダーへと一歩リード。すると鈴木選手は16番で3打目を直接カップインのイーグルで10アンダーとします。

2ホールを残し、優勝争いは西郷選手と鈴木選手に絞られます。鈴木選手のここ3試合は予選落ち、棄権、予選落ち。一方、初優勝を狙う西郷選手は2位タイ、16位タイ、2位という成績です。

しかし、この日の鈴木選手のショットは安定していました。練習ラウンドで1度もフェアウェイに行かなかったという17番でフェアウェイキープし、1メートル少しのパーパットを沈め、右のバンカーが気になる18番でもフェアウェイをキープしました。外せばプレーオフの1.2メートルのパーパットをど真ん中から沈め、2年ぶりの優勝を決めました。

画像: 最終ホールの優勝を決める1.2メートルのパーパットを決めガッツポーズ(写真は2021年の資生堂レディスオープン)

最終ホールの優勝を決める1.2メートルのパーパットを決めガッツポーズ(写真は2021年の資生堂レディスオープン)

優勝インタビューでは、「この優勝まで長かった」と話し、涙を見せた姿が印象的でした。2019年に7勝を挙げ賞金女王に君臨した鈴木選手ですが、昨年、今年と調子が安定せず何をやっても上手くいかなかった、練習場でできてもコースでできないことが多く、キャディや周りの選手、小林浩美日本女子プロゴルフ協会会長にもアドバイスを求めていたと話しました。

それが今週いきなり復活した要因は、先週キャディさんに「愛ちゃん、左向いてるよ」と構えの向きを指摘されたことだったそうです。自分の感覚と実際の誤差に気づき、修正したことで大きく変わったというから、いかにトップ選手の感覚が繊細かがわかります。

画像: 意識とずれていたアドレスの向きを修正しショットの復調をつかんだ(写真は2021年の資生堂レディスオープン)

意識とずれていたアドレスの向きを修正しショットの復調をつかんだ(写真は2021年の資生堂レディスオープン)

4月のパナソニックオープンで上田桃子選手が優勝し、ネットの記事を見たら上田選手もすごく苦しんでいたことを知り「私とまったく一緒やと思ってめちゃ勇気をもらった」とも話しました。トップでいることの重圧は、やはり計り知れないものがあります。

勢いのある若手の台頭が続く中で、上田桃子や鈴木愛という実績のある選手ですら生き残るために心をすり減らすほどレベルの高いツアーになっていることが改めて感じられました。「泥沼から抜け出せた」という鈴木選手、この後のシーズンに大暴れするのではないでしょうか。

※2021年7月5日11時55分 誤字を修正したしました

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