「資生堂レディスオープン」で2年ぶり通算17勝目を挙げた鈴木愛。2019年にシーズン7勝を挙げたスウィングからさらなる安定を求めて変化させたニュースウィングを、プロゴルファー・中村修が解説。

体を揺さぶる動きを少なくした

鈴木愛選手の特徴は独特のタイミングのスウィングでプレッシャーにも強く、2019シーズンは7勝を挙げ17年以来2度目の賞金女王を奪還しました。

プレッシャーに強い独特のタイミングのスウィングで、2019年には7勝を挙げて2度目の賞金女王タイトルを獲得した鈴木愛選手。そのスウィングはテークバックで大きく右に重心を移動させるのが特徴でしたが、2020年以降は移動の幅を小さく抑え、スウィング中の左右の動きが少なくなるように改良していました。

「資生堂レディスオープン」の優勝会見でそのことを質問すると「以前のスウィングは嫌いでもなかったが3日、4日通してショットが続かない、調子が良いときと悪いときの差が激しかった」と話してくれました。

画像は2019年の開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」でのスウィングと、2021年の「ニチレイレディス」でのスウィングをを比べたものです。画像Aの左腕が地面と平行になる位置で比べると、左の画像では頭がボールから離れ胸は右ひざの上よりも外に位置していますが、右の画像ではスタンス幅の中に納まっています。

画像: 画像A テークバックの初期から上体を右に動かし胸を右ひざの上に乗せるように始動していた(左、2019年)、対して新スウィングでは軸を傾けずにスタンス幅の中から出ないようにテークバック(右、2021年) 撮影/姉崎正(左)、大澤進二(右)以下同

画像A テークバックの初期から上体を右に動かし胸を右ひざの上に乗せるように始動していた(左、2019年)、対して新スウィングでは軸を傾けずにスタンス幅の中から出ないようにテークバック(右、2021年) 撮影/姉崎正(左)、大澤進二(右)以下同

画像Bのトップの位置でもその違いは顕著に表れています。頭の位置が変わるとボールを見る角度も変わります。それはクラブの入射角にも影響しますし、スウィングのタイミングの取り方も変わってきます。

フルショットだけでなく球筋をコントロールしたり、距離感を合わせたりと、多彩なショットを打つ必要がありますが、すべてのショットを新しいスウィングで行うことに慣れるために、かなりの練習を積み重ねてきたことが容易に想像できます。

画像: 画像B トップでも左つま先から頭にかけ斜めに傾いたラインから(左)、体の中心のラインを崩さないトップに改良された(右)

画像B トップでも左つま先から頭にかけ斜めに傾いたラインから(左)、体の中心のラインを崩さないトップに改良された(右)

画像Cのインパクト前の画像でも以前に比べると体の傾きが少なくなっています。左右の動きを少なくしたことで曲がりの幅を抑えて正確なショットを打てるスウィングへと進化してきたことが、今回の優勝で証明されたことになりました。

画像: 画像C 左の画像では右への傾きが大きく改良した新スウィングでは体の傾きは少なく軸が真っすぐになっている(写真は2019年のダイキンオーキッド(左)、右は2021年のニチレイレディス(右) 写真/姉崎正(左)、大澤進二(右)

画像C 左の画像では右への傾きが大きく改良した新スウィングでは体の傾きは少なく軸が真っすぐになっている(写真は2019年のダイキンオーキッド(左)、右は2021年のニチレイレディス(右) 写真/姉崎正(左)、大澤進二(右)

最終的なきっかけは先週の「ニチレイレディス」でバッグを担いだ後藤勝プロキャディからのアドレスの向きと体の姿勢にあったそうです。体を左右に動かすことを前提に合わせていた目線と、動かなくなった新スウィングとの間に生じた狙い方のズレを修正したことでショットが復調。気がついた途端に結果を残すところが、鈴木愛選手の鈴木愛選手たる所以ではないでしょうか。

賞金女王争いから現時点で約8千万円離されていますが、2年前は3週連続優勝も成し遂げています。鈴木愛選手が勝ったことで、賞金女王争いがもっと盛り上がりそうな気配です。

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