今年アイリッシュ・オープンの舞台となったマウンドジュリエットには初参戦だったマキロイだが2002年と2004年にWGC(世界ゴルフ選手権)が開催されたときギャラリーのひとりとして会場を訪れていた。
2002年WGC-アメリカンエキスプレス選手権の名称で行われた大会を制したのはタイガー・ウッズ。当時13歳だったマキロイ少年は18番グリーンで行われた表彰式で初めて実物のタイガーを間近で見ることができた。そしてある衝動に駆られたという。
「ロープを潜り抜けてタイガーのすぐ後ろに座ったんです。タイガーのズボンの後ろのポケットにはまだグローブが入ったままだった」。目の前に憧れの人のグローブが! 手を伸ばせば届く。「手袋を抜き取って逃げることができるくらい近くにいました」。グローブが欲しいという衝動と甘い誘惑。それに少年は必死で耐えた。
もちろん表彰式の思い出だけでなくタイガーのプレーを生で見たことで「将来の自分の姿を思い描くことができた」というから忘れられない出来事。大袈裟にいえば人生のターニングポイントの1つだったのかもしれない。
それから5年後、18歳でプロ入りしたマキロイはタイガーと並び称される実績と記憶を積み上げてきた。
昨年の不振は「デシャンボーを真似しようとしてスウィングを崩したから」と打ち明けたマキロイは米ツアーのウェルズファーゴ選手権で復活優勝を飾り「スウィングの理解度が深まっている。これまでは希望だったのが期待に変わってきた」と自信が戻ってきているようだ。
やや控え目に「全英オープンで優勝争いに絡みたいと思っている」という彼の視線はさらに先のオリンピック、フェデックスカップのプレーオフシリーズ、欧州ツアーの年間王者を競うレース・トゥ・ドバイ、そしてライダーカップを見据えている。
「終盤戦でアメリカとヨーロッパで年間王者を争える位置を確保するのは自分にとってとても重要な目標。さらにライダーカップでいいプレーをすることが僕の使命」
メジャーが6試合あった20-21年シーズンも大詰め。マキロイは果たして6つ目のメジャーで最後に笑うことができるだろうか?