「こんなに早く結果が出ると思っていなかった」(畑岡)
「毎年1勝」を目標に掲げている畑岡奈紗が、「マラソンLPGAクラシック」で2019年「キアクラシック」以来のツアー4勝目を挙げた。悪天候のため、54ホール(3日間)に短縮されたが、2位と6打差の19アンダーというスコアは、今大会の最小ストローク記録に。
今大会の優勝により、米ツアーで勝利している日本人としては、岡本綾子(17勝)、宮里藍(9勝)に次ぎ、小林浩美(4勝)と並ぶ記録を樹立。22歳の彼女にはこの先も長いゴルフ人生が待っているが、日本人米ツアー最多勝利数において、単独で3位に浮上するのは時間の問題かと思われる。
「とても厳しい世界というのはわかっているけど、毎年1勝を目標にやっていたので、去年勝てなかったのがすごく悔しかった。今年もシーズン初めは思うようにいかなかったけど、やっと勝つことができて嬉しいです」
畑岡といえば、6月の「全米女子オープン」で笹生優花と史上初の日本人プレーオフ対決の末、破れたシーンが記憶に新しいが、あれから約1ヶ月。彼女は自宅のあるフロリダ州オーランドで、コーチのゲーリー・ギルクリスト氏と約1週間、アイアンの距離のコントロールショットについて取り組んだという。そのおかげで、61というビッグスコアをマークした初日は18ホール中、全てのホールでパーオン。自身がプレーした55ホール中、49回のパーオンに成功し、圧倒的に精度の高いショット力で2年ぶりの勝利を掴み取った。
だが、そんな彼女も今年に入ってから、ずっとスウィングに悩んでいた。
「スウィングのテンポがバラバラになったりとか、切り返しのタイミングが合っていない。テークバックがバラバラだと、振り抜きの位置もバラバラになる。テークバックを意識してもうまくいかないので、今度はフォロースルーのほうを少し低く長く出すようなイメージではやっているんですけど、それもうまくいかない」(ANAインスピレーション・最終日)
今までは自分で直せていた部分が、なかなか直せない。また、自分ではいい時の感覚をわかっているが、それを人に伝えるのも難しく、それなら自分で直したい……そんな彼女が、「KPMG全米女子プロ」で予選落ち後、時々スウィングを見てもらっているというゲーリー・ギルクリスト氏に1週間、スウィングをチェックし、修正してもらったところ、本人も「こんなに早く結果が出ると思っていなかった」というほどの成果を出すことができた。
「練習でいくらできても、試合でできないと自信につながらない。優勝は一番自信がつく方法だと思います」
今週は2人1組でチームを組んで戦う「ダウ・グレートレイクスベイ・インビテーショナル」で世界ランク9位のレキシー・トンプソンとペアを組んで出場する。「(トンプソンが)まさか私とペアを組んでくれるとは思ってなかったので、迷惑をかけないようにしたい。調子を上げていかないと」と大会中に語っていたが、そんなプレッシャーを抱えながら、いい緊張感でプレーしていたのも勝因の一つかもしれない。
そしてその後は、フランスで開催されるメジャー「アムンディ・エビアン選手権」を欠場し、「オリンピック」の準備に入る。
「各国の代表でトッププレーヤーが集まるので、そう簡単なことではないと思うけど、やるからには日本代表になれなかった選手の分も戦わきゃいけないと思うので、金メダルを目指して頑張りたい」
プロ入り前からの目標だったというオリンピック出場と金メダル。今年は、日本人選手に何かと追い風の吹いているゴルフ界だが、東京で開催されるオリンピックで金メダルを目指す畑岡にとっては、大きな自信を取り戻す最高の勝利となった。