約3カ月ぶりに国内に復帰
3月の「アクサレディス」以来、7試合の海外遠征を終えて渋野日向子選手が復帰します。
昨年12月の「全米女子オープン」で4位となり復調をアピール。3か月後の「ダイキンオーキッド」では大きくトップの位置を変えたスウィングを披露し、世界で戦うために再現性、安定性を求めた改善と話しました。
「アクサレディス」で現地取材した際には、「フォロー側をもう少しインに振りたいが、まずはトップの位置を改善することから」と改造の途上であることを明かしてくれました。
海外メジャー「ANAインスピレーション」から「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」までの7試合を振り返ると、予選通過は5試合(うち1試合は予選カットなし)で最高成績は31位タイ。ですが、大きなスウィングチェンジをしながら戦っている現状で、成績を語るのはあまり意味がありません。
2019年に7勝を挙げた鈴木愛選手ですら、左右の動きを抑えるスウィングに改善すると、次の勝利には先週の「資生堂レディス」まで約2年の歳月を要したほど、スウィング改造は簡単ではありません。
では、その現状はどのようなものでしょうか。6月の終わりに開催された「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」での連続写真で改善してきているスウィングを見てみましょう。
画像Aの左、アドレスでは右手を少しかぶせるように握る変化があるように見えますが、フェースターンの度合いやインパクトでボールを押す感覚を狙ったものでしょう。テークバックでは、アドレスで作った両肩と手元で作る三角形をキープしながらクラブをインサイドに引いていきます(画像右)。2020年のややアップライトなトップをフラットでコンパクトなトップにすることで入射角を浅くしスピン量を安定させる狙いは変わっていません。
画像Bの左はトップの位置ですが、シャフトは地面と平行になるオーソドックスな位置から比べるとコンパクトであることが見て取れます。しかし、背中はターゲット方向を向くほど捻転されており、腕の運動量に頼らず大きな筋肉を使って再現性をアップさせようとする意図が感じられます。
次に画像Bの左右の画像を見比べてみます。シャフトの傾きはほとんど変わっていませんが、画像右では左のわき腹から切り返していることがわかります。同時に、左手首が手のひら側に折れる掌屈の動きが入り、クラブがインサイドに入っていることがわかります。
これは、切り返しの間を作る動きで、手先からではなく体のねじり戻しで切り返すことでスウィングプレーンにクラブを乗せ、シャフトのしなりを作ることができています。この部分はソフトボールをやっていたこと、青木翔コーチの元で基本を叩き込まれたことが大きいと思います。
画像Cでは、ボールの右側に体を残したインパクト(左)から、フォロー(右)に向けて大きく振り抜く様が見て取れます。インパクトで左足が地面から離れていないことから、横方向への動きと回転力を主なスウィングのエネルギーとし、縦方向の力はあまり使わずに振っていることがわかります。飛距離というようりは安定性、再現性を目指していることの表れでしょう。
大会前日のプロアマ大会終了後のリモート会見では、アメリカ遠征では、ショット精度の向上、メンタル面での向上を感じることができたと話し、元気な姿を見せてくれました。そして改造してきているスウィングの現在地点を聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
「試行錯誤をしながらも5合目くらいまで来ていると思う。次の段階として飛距離を伸ばすことも取り入れていかなければならないと感じています」
残念ながら本日のプロアマはメディアの入場規制があって会場に入れませんでしたので、明日の初日に現地取材できることが非常に楽しみです。注目の初日は、小祝さくら、稲見萌寧両選手と10時10分のスタート。自らの意思でスウィング改造を選択した渋野日向子選手が、5合目と語った現在地点はどのようなものか。プレーを見て引き続きレポートしたいと思います!