ニッポンハムレディスクラシックで初優勝を遂げた堀琴音。2018年にシードを落としたあたりから陥った、深刻な不調からの復活劇だった。
優勝時のクラブセッティングは興味深い。ドライバーはキャロウェイの「エピックスピード ◆◆◆(トリプルダイアモンド) DS」。これは現在、キャロウェイエクスクルーシブ限定製品として発売されている、いわゆるツアー支給ヘッドだ。
先だって追加された「エピック マックスファスト」を含めると、キャロウェイではすでに今年、4モデルのドライバーをラインナップに加えている。堀が使用する「エピックスピード ◆◆◆(トリプルダイアモンド) DS」は、それとは別のツアーバージョンで、その特性も一般モデルのどれとも似ていない。「スピード」より寛容性があり、「マックス」より操作性がある、つかまりの良いヘッドだ。
堀といえば、2015年に発売されたブリヂストンの「J815」ドライバーを長く愛用したことで知られている。複雑なデザインの入ったクラウン部が特徴の独特なヘッドだったが、堀や松田鈴英など同社の契約プロが長期に渡って使用したことで、発売後からずっと後になって評価を高めた、いわば時代の徒花と呼べるようなモデルだ。
まずこのドライバー変更が、正直意外に思えた。賞金ランキング上位にいたころも、不調に苦しんでいたころも、堀は一貫してこのドライバーを使用していたからだ。職人気質の選手で、他のクラブがなかなか合わないのではと予想された。
しかし、最近はこの「エピックスピード ◆◆◆(トリプルダイアモンド) DS」の他、テーラーメイド「SIM グローレ」を試すなど、最新モデルに順応している様が見て取れた。現代のつかまりの良いドライバーの特性を活かして、新たに持ち球に選んだフェードボールを安定して打っていた。
19度UTはブリヂストンのニューモデル!? ウェッジは「ジューシー」を使用
3W、5Wの下、19度ユーティリティは今秋にブリヂストンから登場する新モデルのようだ。ウェッジは市原弘大や浅地洋佑などが愛用し、すでにツアーで多くの勝利をあげている「ジューシー」が51度、58度と入っている。CNCミルド加工によって作られる本格派のブランドだ。最近では、ステップアップツアー「SKYレディース」で服部真夕の復活優勝にも貢献している。
要所に最新モデルを加えつつ、23度、25度の2本のユーティリティはブリヂストンの「ツアーステージ XドライブGR」、アイアンセットは「ツアーB X CB」を長く愛用している。ユーティリティはなんと2012年モデル、アイアンは2016年モデルだ。
不調の際はいろんな事を試してみたくなるものだ。クラブの変更などその最たるものだろう。しかし、深刻な不振の渦中にあっても、この7本の“距離を打ち分けるクラブ”を変えることを良しとしなかった。そこにプロゴルファーらしい強いこだわりを感じる。
ドライバーとウッド2本、飛ぶユーティリティ1本に加えて、狙うUTが2本。アイアンセットにウェッジ2本とパター、というセッティングの構成も好調時から変えていない。ゴルフの組み立て、スコアメイクに関わる基準となる部分を変えていなかったのが、印象的なクラブ選びだ。