渋野日向子、古江彩佳との代表争いを制し、畑岡奈紗とともに五輪へ
2021年に怒涛の5勝を挙げまさに覚醒した感のある稲見萌寧選手。2019年シーズンはパーオン率1位ながら平均パット数(パーオンホール)は43位でしたが、2020-21シーズンは5位と大きくジャンプアップ。ショットとパットが噛み合ったことで飛躍を遂げました。
数々の優勝争いの中でショットとパットを高い次元で安定させている点はスタッツ以上に評価されるべきだと思います。優勝争いの中でも抜群の安定感を誇る磨き上げたフェードボールを持ち球にしたスウィングを見てみましょう。
画像A左のアドレスを見るとフェードヒッターらしい特徴が表れています。真っすぐに立ち右から覗き込むような背骨の傾きはほぼ見られません。持ち球がドローの場合は、インサイドアウトの軌道がイメージしやすいやや右肩を下げたアドレスになるケースが多くなります。
そして画像B右の腕と体が同調したテークバックへと移ります。アドレスで構えた腕と体の位置関係を保ちながら上半身を回転させることで、ダウンスウィングで腕が振り遅れたり、手先で打ちにいったりといったミスが出にくい、一体感のあるテークバックです。
画像B左の左腕が地面と平行になる位置でも、上半身の回転量と手元の動きが比例しバランスが取れています。そこから背中をターゲットに向けるように深くバックスウィングした位置がトップ(画像B右)になっています。手元の位置はややコンパクトですが、脚から背中にかけて筋肉がしっかりと引き伸ばされ、パワーを蓄えています。
稲見選手はフェードヒッターといってもほぼストレートに近い弾道でターゲットをとらえます。画像Cはインパクト前後ですが、手元と体の距離に注目してみるとインパクト前後でその距離がほぼ変わっていないことがわかります。
つまり極端なアウトサイドインの軌道で打っているのではなく体の動きに沿ってクラブをストレートからやや内側に振り抜いていくことでボールをつかまえ、わずかにターゲットよりも左へ打ち出しターゲットに向かって落ちてくる弾道を見せてくれます。手元で操作しないぶん体の回転量が多いことも稲見選手のスウィングの特徴です。
2021年に5勝を挙げたことで一気にオリンピック代表争いに名乗りを挙げ、渋野日向子、古江彩佳両選手と熾烈な代表争いが続きました。そのことを意識していないと会見では話しながらも内定が決まると喜びが弾けた笑顔で「先週までは本当はめちゃくちゃ出たかったけど、目の前の試合に集中するため“意識していない”と言ってきた。すっきり晴れて本音を言えてよかった」と話していました。
代表が決まるかどうかの2試合では持ち球のフェードが左へ引っかかるミスに苦しみ予選落ちを喫しました。しかし、先週の試合を現地で取材した初日の様子を見ると左へのミスはまったく見られず復調を感じました。ショットもパッティングも尻上がりに向上し4位タイでフィニッシュしましたので、オリンピックに向けて視界良好だと思います。ベストを尽くし、強い稲見萌寧を見せてくれるのではないでしょうか。