2021年に入ってからの女子ツアーは、ルーキーから中堅、ベテランまで様々な優勝者が誕生して大いに盛り上がっています。そんな中、原英莉花選手の活躍を待望する声も多いのではないでしょうか。
2020年はメジャー2勝を挙げ大きく躍進しましたが、昨年末に「全米女子オープン」に挑戦したことにより、クラブの調整が決まらない状態で開幕を迎えたこともあってか、いまひとつ波に乗れていませんでした。
それでも3月の「アクサレディス」では他界した大好きなおばあちゃんに届けと気迫で3位タイ。観る者の心に伝わってくるプレーが印象的でした。その後「パナソニックオープンレディース」で3位タイ、「ほけんの窓口レディース」で6位タイと優勝まであと一歩のところから足踏み状態になり、実は約2カ月間トップ10から遠ざかっていました。
そんな中、2メートルの距離を4方向から曲がりとタッチをそろえて基準を作る地道な練習を続けたことで、パーオン時の平均パット数の順位を2019年の42位から13位へと大幅にランクアップ。着実にパッティングスキルを向上させています。
ショットとパットがかみ合うタイミングで2021年の初優勝を手にできるところまで、調子が上向いているように思います。そのスウィングを見ていきましょう。
大きな半径のスウィングで飛ばす
身長が高く手足が長い大型プレーヤーは、大きなスウィングアークや入射角がしっかり確保できるメリットがあります。しかしそのぶん体と手足がバラバラに動きやすく、手打ちになりやすいなどの注意点もあります。
原選手の場合、バランスの取れたアドレス(画像A左)から手元を胸の前にキープ。早い段階から背中をターゲットに向けることで、腕と体が上手く同調していることが画像A右からわかります。スタイルが良く、体型も細く見えますが、実際は下半身だけでなく上半身のトレーニングも積んでいるからこそできる、質の高いテークバックだといえます。
画像Bのトップから切り返しにかけては、飛ばし屋の原選手ならではの切り返しに注目します。画像B左の肩のラインが90度を越える深いトップから、画像B右の切り返し後の画像を見ると、切り返しに「間」があることが見て取れます。
体幹を使って切り返すことで、クラブをオンプレーンに乗せ、手元が体から遠くなり、大きな半径を描くダウンスウィングへとつながっています。テークバックのスピードは速いタイプですが、この体幹を使った切り返しが大きな飛距離と正確な方向性を生み出しています。
画像Cはインパクト前後の画像ですが、しっかりと体幹を使って切り返したあと、頭の位置をキープしたまま、スウィング軸を中心に体を回転させてクラブを振り抜いています。振り抜く方向を変化させることでドロー、フェードを操ってピンを攻めるのが、原選手のプレースタイルです。
現地取材の機会に恵まれた「GMO&サマンサカップ」の最終日、11番ホールパー5のセカンドショットをドローでピン横にピタリとつけイーグルを奪った姿を見て、試行錯誤を重ねながらもいよいよ調子が上がってきているなと感じました。
今大会はフラットでフェアフェイも広くグリーンも大きいと現地からの情報が届いています。暑さはありますが、飛距離を武器にピンを攻める原選手のプレーが見られることを期待しています。