製造技術の進歩に伴いゴルフの道具の性能は年を追うごとに高められているが、その一方でゴルフは道具だけでなく状況に対応するためのゴルファーの技術も問われるスポーツ。過剰なまでに進化したものに関しては用具規則の更新によってコントロールされてきた。そのひとつが、クラブフェースの溝に関するルールだ。
2010年より段階的に施行されている新たな溝規制ルールは、パターを除く25度以上のロフトを持つクラブを対象に溝の形状に関して新たなルールを設け、圧倒的なスピン性能の高さを誇っていたUグルーブ=角溝を規制した形だ。
なかでも大きく影響を受けたのはスピン性能が重要となるウェッジ。実際のところ溝規制適用以前と以後のウェッジでスピン量は具体的にどれくらい変わったのか。プロゴルファー・堀口宜篤に2002年発売のフォーティーン「MT-28」と今年発売されたクリーブランド「RTXフルフェース」の58度をそれぞれ打ってもらい、検証を行ってみた。
さっそく角溝フェースを採用した溝規制以前の名器、MT-28の試打結果から見ていこう。
【MT-28(58度)の試打結果】
スピン量9705回転 キャリー80Y トータル81Y 打ち出し角32.6度
「保存状態は良かったと言えど、約20年前のモデルですからある程度性能は落ちている可能性がありますが、それでも平均9705回転はすごいですね。打っていても溝の深さによってボールをとらえている感覚が手元に伝わってきます」(堀口、以下同)
対して最新モデルのRTXフルフェースではどのような結果が出たのか。
【RTXフルフェース(58度)の試打結果】
スピン量9710回転 キャリー87Y トータル88Y 打ち出し角32.3度
「数値を比較してみるとスピン量はほぼ同等ですね。MT-28と比較すると、打ったときにフェース全体でスピンをしっかりかけてくれている感覚があります。MT-28と比較してみると溝の多さが違いますし、ルールの範囲内で溝をより深くしてスピン性能を高める工夫もされています。角溝の規制によってロスしたスピン性能を補うための工夫が功を奏しているのだと思います」
「角溝」というスピンを生み出す切り札を規制されてなお、それに負けない、むしろ凌駕するスピン量を最新モデルは生み出している。見た目には大きく変化していないように見えるウェッジだが、やはり性能は日進月歩しているようだ。