男子は7月29日から、女子は8月4日から開幕となる東京オリンピックゴルフ。その開催コースである霞ヶ関カンツリー倶楽部のコースセッティングを務めたIGF(国際ゴルフ連盟)のデイビッド・ガーランド氏とケリー・ハイフ氏が、今大会のセッティングについて語ってくれた。

「コースと倶楽部は素晴らしい仕事をしてくれた」

Q:まず、コースセッティングとは具体的にどのようなことをするのですか?

ケリー・ハイフ氏:男子女子の競技に向けてグリーンのスピード、ホールロケーション、ティの位置、フェアウェイの幅やラフの長さの管理です。僕は普段PGAオブアメリカで仕事をしていて、ヨーロピアンツアーで仕事をするデイビッド(・ガーランド氏)と2人で今回はIGF(国際ゴルフ連盟)のスタッフとしてコースセッティングに携わっています。

画像: オリンピックゴルフの開催コースである霞ヶ関カンツリー倶楽部のコースセッティングを務めたデイビッド・ガーランド氏(左)とケリー・ハイフ氏(右)

オリンピックゴルフの開催コースである霞ヶ関カンツリー倶楽部のコースセッティングを務めたデイビッド・ガーランド氏(左)とケリー・ハイフ氏(右)

デイビッド・ガーランド氏:私たちはリオオリンピックでもコースセッティングをしました。オリンピックは2度目ということです。

Q:他の海外メジャー大会と比較すると、オリンピックのコースセッティングに違いはあるのでしょうか?

ケリー・ハイフ氏:30年以上この仕事をしていますし、世界的に大きな大会、たとえばPGA選手権やライダーカップでもセッティングを行っていますが、オリンピックのセッティングに関して言えば、メジャー大会と同様に扱っています。コースのデザインと設計を元にセッティングを考え、選手たちのスキルを最大限披露できるように、時にタフでチャレンジングであると同時に面白いコースセッティングを行っています。男女ともにゴルフを試す絶好のセッティングです。

Q:リオオリンピックの経験から学んだことはありますか?

デイビッド・ガーランド氏:リオのゴルフコースは新しく設計されたものでした。なので2つのコースはまったく違います。リオのコースは木がほとんどなく、デザインの面でもまったく違います。経験からゴルフコースがどんなものを与えてくれるかを考える必要があります。このコース(霞ヶ関CC東コース)は伝統的なコースを現代化したと言えるでしょう。グリーンは様々な形状をしていて、傾斜があり、色々なホールロケーションが考えられます。このコースに関して嬉しく感じています。リオデジャネイロの経験を何か生かしたかと言われると特別ありません。30年以上の経験をリオとここで生かしているだけです。

Q:霞ヶ関カンツリー俱楽部は、2016年にトム・ファジオ氏とローガン・ファジオ氏の手で改修されましたが、オリンピックへ向けて組織委員会が依頼したのでしょうか? 何か知っていることがあれば教えてください。

ケリー・ハイフ氏:正直、僕たちが仕事に関わる以前の経緯はわかりません。他のクラブ同様、コースをより良い状態にしていこうと思って改修したのだと思います。ゴルフと技術の変化に伴って、それに合わせてアップデートしたのではないかと思います。とにかく素晴らしい仕事をしてくれました。

デイビッド・ガーランド氏:今の時代のゴルファーは飛距離もアップしているので、ティーを後ろに下げる必要があると思います。古いコースでは選手たちはバンカーに入りやすいと思います。時にティーグランドにスペースがなくて下げられないこともありますが、このコースでは最高の状態になっています。

Q:IGFは霞ヶ関カンツリー倶楽部に2カ月休業させて準備を進めましたが、これは今後オリンピックのスタンダードとなるプロセスですか?

デイビッド・ガーランド氏:それはちょっとわかりません。それを決める会議に出ていたわけではないので。でもコースと倶楽部は素晴らしい仕事をしてくれたのは間違いありません。あまりプレーされていないので状態が素晴らしいのでしょう。コンディションに関しては文句の言いようがありません。とにかく素晴らしいですね。

Q:フェアウェイの長さなどオリンピック特有の基準はありますか?

ケリー・ハイフ氏:ありません。それぞれのコース、芝の様子をみて、気温を考慮して決めています。

Q:ラフの長さの設定はどうでしょう? また、畑岡奈紗選手からグリーン周りに逆目っぽいところが多いと語っていました。これは意図的なものですか?

ケリー・ハイフ氏:昨日の午後に芝を刈りました。ラフの長さは3インチくらいにしていてボールが見えるか見えないかくらいです。ラフに入った場合、そこからのショットはコントロール力・スピンコントロールが必要です。ラフに入ったらペナルティという感じですね。グリーン周りについても同じような長さでカットしています。僕の解釈だと、長い芝から短い芝にかけて傾斜をつけてカットしています。

画像: グリーン周りの芝は逆目になるよう芝の長さを調整してカットしているという

グリーン周りの芝は逆目になるよう芝の長さを調整してカットしているという

デイビッド・ガーランド氏:ボールが芝と反対向きに止まるというよりは、始まりの部分だけ少し短くし、そしてだんだんと長くなっていく感じです。

Q:肥料を2倍あげていると聞きましたが、芝の密度はどうなりますか?

デイビッド・ガーランド氏:ゾイシア芝という特別な芝なので密度が高いです。芝管理のデニス・イングラム氏が11週間前から来て毎日コース管理をしてくれました。状態は素晴らしいですよ。

Q:日本の芝はアメリカのゾイシア芝と似ていますか?

デイビッド・ガーランド氏:はい。ゾイシアに似た芝をセッティングしたことがあるので、ボールに対してどう反応するかもわかっています。

Q:バンカーにはいつも以上の砂を入れていると聞きましたが?

ケリー・ハイフ氏:メジャー大会と同じですね。事前の検証ではバンカーの縁と底の砂の深さを見ています。それによって砂を足したり、取り除いたりします。プレーにおいて公平性を保つ必要がありますから。

Q:グリーンのスティンプとコンパクションについてはどうでしょうか?

デイビッド・ガーランド氏:スティンプは11フィート6です。2週間大会を開きますし、女子にも適用しなくてはいけませんのでバランスが必要です。

ケリー・ハイフ氏:グリーンの傾斜を考慮して適切なスピードになっています。それでもなかなかチャレンジしがいがあるホールロケーションですね。コンパクションは土地柄もあり、雨の量や暑さや湿気も関係してきます。そこに注視しながら男女ともにチャレンジしがいのあるコースセッティングを目指しています。

Q:女子競技の前には芝をカットしますか?

ケリー・ハイフ氏:ほぼコースは一緒ですし、グリーンのスピードもほぼ一緒です。男子競技が終わったらカットするかもしれませんが、選手たちのプレーや、雨の量も見てからですね。

Q:コロナによって延期され何か大変なことはありましたか?

デイビッド・ガーランド氏:2年前に来て以降(コースに)訪れることができなかったので計画するのに大変な面はありましたが、デニスはコースに訪れることができ、写真をとって色々見せてくれました。コロナによりやり方は今までと違うものになりましたが、ちゃんと適応できたと思います。

Q:最後に、金メダルはどれくらいのスコアだと予想しますか?

デイビッド・ガーランド氏:10アンダー、20アンダーと特定の優勝スコアを想定してコースセッティングを行っていません。どんなコースがタフか、公平なチャレンジかは選手たちのプレー次第です。選手にとってゴルフの技を試す機会としてセッティングを行っています。

ケリー・ハイフ氏:僕たちの仕事は最高のゴルフが守られるようにすることで、それに集中しています。もちろん天候によっても変わってきますし、風の有無でも変わります。優勝スコアに関しては心配しておらず、選手たちのプレー次第ということです。今週、ベストなプレーをした選手が優勝してくれればと思います。

<撮影・文/服部謙二郎>

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