新型コロナのガイドラインにより東京に住む祖父母が霞ヶ関CCに応援に訪れることはできない。日本での暮らしが長い母しかり。今月はじめに結婚したばかりの新妻マヤ・ロウさんも帯同できず孤独な戦いに挑んでいるシャウフェレ。
しかし彼のそばには心強い味方がいる。それはスウィングコーチである父ステファンさんだ。彼は息子が転戦するほぼすべての試合に同行し技術面だけでなく精神面でも大きな支えになっている。
親子にとって五輪出場は悲願。というのもステファンさんは40年ほど前、陸上10種競技のドイツ代表オリンピック候補選手だったからだ。
2日間でフィールドとトラック、全10種目の競技に挑み記録を得点に換算し競う過酷なスポーツの勝者はキング・オブ・アスリートと称される。ステファンさんは五輪代表の有力候補として名を馳せた。ところがオリンピックの強化練習に向かう途中でステファンさんの車が飲酒運転の車に追突され重傷を負った。もっとも痛手だったのは左目の視力が奪われたこと。悲劇的な事故によりステファンさんの選手生命は絶たれた。
「オリンピック候補ではあったけれど(事故がなくても)実際に出られたかどうかはわからない。最近は事故のことをジョークにできるくらい父の気持ちは前向きになっている」とザンダー。
そして父はいま息子をオリンピックメダリストにすることに全身全霊を傾けている。
「本当は開会式でスタジアムに立たせてあげたかった」。しかし今回はコロナ禍での開催のため規制も多く、40年前に父が果たせなかった陸上競技場に立つ夢を実現することは出なかった。
「でも次回(24年パリ五輪)のオリンピックにもしまた出場する機会があったら、そのときは一緒に開会式に出て父と陸上競技場を歩きたい」
その前に叶えるべき夢。それは親子二人三脚でのメダル獲リだ。
撮影/服部謙二郎