こんにちはケンジロウです。埼玉県の霞ケ関カンツリー倶楽部からお届けしております。
いやぁ、毎日蒸し暑いですね。今週はカメラを担いで写真も撮っているのですが、もう数ホール歩くだけで汗びっしょり。選手もみなタオルを片手にプレーしていて、打っては汗を拭いてを繰り返しています。中にはタオルを首からかけている選手もいてその姿はまるで“風呂上り”状態。まさにサウナの中で取材している感覚です。
そして毎日やってくるのが雷による中断。初日は15時ごろにプレーが中断。そして今日の二日目はお昼ごろに雷で中断。星野陸也は10番のティショットを放ったところ、松山英樹は6番のティショットを放つ前に一端クラブハウスに引き上げました。
プレーが再開して、また17時半ごろにまたホーンが鳴り、そのまま競技サスペンデッド。星野陸也はホールアウトしていてよかったのですが、松山英樹は17番ホールのグリーン上、ちょうどバーディパットを打つところでした。調子が乗ってきていただけに、そのまま続けたかったでしょうね。
さて、その松山英樹は、初日こそ2アンダーでスタートしたものの、2日目は前半3バーディ、後半3バーディとボギーフリーのゴルフで、6つスコアを伸ばしていました。さらに17番もバーディチャンスでしたから、一気にメダル争いの圏内に入ってきました。
アメリカのロケットモーゲージ(デトロイト)以来、約1か月ぶりに彼を見ましたが見た目はちょっとホッソリとした印象があります。コロナで10日間練習やトレーニングもできず、その後もまともに練習できなかったようですから、なかなか体の調子を戻すのは難しいですよね。しかも日本に帰ってきてこの暑さと湿気、疲れ気味でもあり、初日終ったあとはちょっとしんどそうな様子に見えました。
デトロイトでは、ショットの感覚が良くなっていて、それこそビッグスコアも出そうな雰囲気がありました。しかし今週、霞ケ関で見た松山英樹はそのときの感覚をとり戻せないことに少し焦っているように見えました。そしてそのままショットの調子が戻らずに、オリンピック競技初日を迎えました。
丸山茂樹ヘッドコーチが松山の歯がゆさを代弁しています。
「少し以前のいいときより上体が苦しい感じがする。バックスウィングでしっかり体が回れていないというか、気持ち良く回れていない。下半身がスピンしてクラブが間に合わなくなっているので手でアジャストしてボールが少し散らばっている。英樹の持ち味である胸の位置とクラブフェースが合ってくるような感じが戻ってくればいいよね」(丸山)
初日のプレーが終わったあと、練習場が雷による中断でクローズしている間に、丸山コーチはその話を松山に伝えたと言います。
すると、中断後の夕方の練習場で、松山英樹はバックスウィングのシャドースウィングを行ってしきりに右サイドの動きを気にしていました。おそらく丸山ヘッドコーチの助言を受けて、調整を試みたんでしょうね。最終的にはいい球を連発、笑顔で練習場を跡にしていました。
その調整を受けての二日目のプレーは、初日とは別人でした。序盤はドライバーで手を放す場面もありましたが、明らかに初日よりはショットは安定していました。それがまさに16ホールを終えて、6アンダーノーボギーという成績に現れていると思います。
さて、オリンピックの中継を見ていて気づいた方もいるかもしれませんが、松山英樹の14本のクラブセッティングにいろいろと変化がありました。
まず、今回驚いたのが、パターです。マスターズで勝ったパターでもなく、そのあと全米オープンなどで使用していたパターでもなく、元々長く使っていたエースのスコッティ・キャメロンに戻しました。
グリップも最近気に入っていたラムキンではなく、今までのキャメロンのグリップです。戻した理由はわかりませんが、今週の松山英樹のパットの調子は絶好調ですからね。ストロークゲインドパッティング(パットのスコアへの貢献度)のスタッツがあったら、おそらくかなり上位じゃないですかね。
また微妙な変化ですが、クリークのシャフトも「黒ベンタス」に変わっています。そもそもクリークを入れていること自体があまり話題になっていませんが、5月のPGAツアーの試合からコブラのヘッドを使っています。見た目はユーティリティに近いぐらい小ぶりで、ソールに2本のレールがついています。そのベンタスのスペックは10Xですよ。「10X!?」そんなスペック聞いたことありませんよね。
そしてもうひとつのビッグチェンジは、ドライバーがスリクソンの「ZX5」から「ZX7」に変わったんです。霞ケ関に来てから、練習日に「7」も試していたのですが、初日は今まで通りの「5」でいきました。それが昨日の夕方の練習でまた「7」を試して、そこで手ごたえを感じたのでしょうね。2日目は「7」を投入してスタートしました。
細かいことを言えば、アイアンもマスターズのときと微妙に違うし、ウェッジの56度と60度も定期的に交換しているので、マスターズのときと違います。そうなるとマスターズのときの14本と同じクラブはない!? いや、52度のウェッジだけ唯一マスターズのときと同じようです。
1打を縮めるために、スウィングもクラブもすべてにおいて“よりいいもの”を求めていく姿勢はまったく変わらないようですね。メジャーに勝っても慢心することなく、オリンピックという舞台でもいつも通りにスウィング調整やクラブ調整する姿を見て、どこか安心しました。
「尻上がりに上がっていくのがいい」
丸山茂樹ヘッドコーチが試合前にメダルのことを聞かれたときに、そのように言っていました。松山英樹の調子も、いままさに「尻上がり」に上がっている段階に見えます。
さあ、残りあと二日、松山のプレーを期待してみていきましょう。
写真/ケンジロウ