抜群の安定感で世界のトップと渡り合った
銀メダリストとなった稲見萌寧選手。オリンピックの女子ゴルフ競技4日間のスタッツを見てみると、ドライバーの飛距離は248ヤードで全体の35位と平均よりやや下でしたがフェアウェイキープ率は全体の1位(85.7%)でした。
そのためティーショットのスコアへの貢献度の指標は全体の3位。パーオン率も76.3%で8位にランクインし、持ち味のショットの正確性を世界に示しました。
そしてもう一つグリーン周りのショットのスコアへの貢献度を表す指標では全体の4位にランクされ、アプローチの上手さも光りました。
ツアー会場で練習しているワンシーンを切り取ってみましょう。稲見選手の練習方法はすべて一貫していて、クラブの軌道と振り抜くヘッドスピードのコントロールに終始しています。
画像Aはウェッジを左手1本で持ってアプローチの練習をしているシーンですが、実際に打つボールの前後にボールを置くことでクラブヘッドの軌道を整え、体の回転とクラブヘッドのスピードを同調させるように丁寧にボールを打っていることが見て取れます。
ここでは左手一本で練習していますがもちろん両手でも繰り返し練習しています。奥嶋コーチによると、この「腕と体の同調」は稲見選手が取り組んでいる練習テーマ。これが、距離感を合わせ、精度の高いショットの源になっています。
実際に打っている画像Bを見ると、体の回転とヘッドが同調するように振り抜かれていることが見て取れます。体を止めてヘッドを走らせる動きをせずに、体の回転に沿ってターゲットよりもやや左に振り抜くことで軽いフェードボールで弾道をコントロールし、距離感と方向性を高めています。
画像Cではフェードヒッターの稲見選手とドローヒッターの小祝さくら選手とフォローの位置で比較してみます。振り抜かれているクラブの角度を見ても小祝選手よりも左に振り抜かれていますし、体の回転量も多いことが見て取れます。これはどちらが正解ということではなく、再現性の高い自分の体に合った動かしやすさであったりプレースタイルによるものです。
ヘッドスピードと軌道のコントロールの精度が非常に高く再現性も高い点が稲見選手の強さの原点になっています。ドロー、フェードを打ち分けるのではなくフェードを磨いたことでつかんだ銀メダルであったといえるでしょう。これからの稲見選手は一体どんな選手になっていくのか、期待と楽しみは続きます。