コルダも銅メダルのコもスチールファイバー
世界ランキング1位の貫禄を見せ、東京五輪で金メダルを獲得したネリー・コルダ。女子選手としては屈指の飛距離を持つコルダだが、彼女のアイアンは飛ばし屋が好んで愛用するスチールではなく、グレーの特徴あるシャフトを使用していた。
これは「スチールファイバー」という名のシャフト。シャフトの中にカーボン素材を使用し、外側の層にスチールファイバー(繊維)を巻きつけて、カーボンとスチールの特性の良いとこどりを狙ったものだ。
「スチールファイバー」は数年前から知る人ぞ知るシャフトとして評価されていて、マット・クーチャーやブラント・スネデカーが使用するなど、ツアーでの実績もある。2019年に「ダイナミックゴールド」でおなじみのトゥルーテンパー社のブランドとなり、日本でも今年から正規販売という形になっている。
ネリー・コルダが愛用するのは、「スチールファイバー i 80CW」というモデルで、その名の通り80グラム台のシャフトだ。アイアンには少し重い「i95CW」を使用している。
銅メダルのリディア・コもまた「スチールファイバー」の愛用者だ。「FCシリーズ」といロング・ミドルアイアンは中高弾道に、ショート番手は抑えた弾道になる番手別弾道設計のモデルを使用している。コのアイアンは、「エアロテックFC70」(F3)という70グラムのシャフトで、ウェッジのシャフトは10グラム重くしているのもコルダと同じだ。
カーボンとスチールを複合することで、スチールシャフトの粘り感や均一性、カーボンシャフトの軽さや追随性が両立できているのが、支持される秘密のようだ。スチールシャフトだと重くなりすぎるが、カーボンと複合することで単一スチールにはない軽快感が出る。
それならば重めのカーボンにすれば良いのではという発想もあるが、スチールを使うことで、張りの強いカーボンにはない、インパクトでのつぶれ感がある。このあたりがコントロール性の向上につながっているのだろう。
軽量スチールでも重いと感じられる人、重量級スチールだと硬いと感じられる人に、第三の選択肢として試してみる価値はありそうだ。重量帯とフレックスも豊富なので、一般的な男性ゴルファーなら問題なく扱えるだろう。
スチールとカーボンのハイブリッドシャフトといえば、古くは先端にスチールを採用した「バイメトリックス」があり、最近だと日本シャフトのUT用シャフト「NSプロ モーダス3 ハイブリッド」、通称“ゴースト”が話題になった。カーボン、スチールとも製造技術が向上しているので、新たな発想のハイブリッドシャフトもこれから現れるかもしれない。