2021年の序盤戦は優勝2回と毎試合のようにトップ5を外さないプレーが続いていましたが、6月のサントリーレディスの5位を最後に不振が続き、3試合前のGMO&サマンサカップでは予選落ちを喫していた小祝さくら選手。
その初日は渋野日向子、稲見萌寧、小祝さくらの3選手が同組だったので1ラウンドついて歩きましたが、ドライバー、アイアンショット、パッティングいずれも精彩を欠き5オーバーと大きく出遅れていました。
そのときと比べると、明らかにターゲットに向かってスウィングできていましたし、その通りにボールはターゲットに向かって飛んでいました。
復調の要因として「良かったころの動画を見て調整した」ことを挙げていたので、それにならって優勝した「Tポイント×ENEOS」でのスウィングを見てみましょう。
まず画像Aの左ではオーソドックスなスクェアグリップで握りバランスのいいアドレスで構えています。画像A右のテークバックではアドレスで作られた両肩と手元の三角形をキープし、両わきがゆるまない締まった始動をしていることがわかります。
両わきを締めた感覚を持ったままトップまでねじり上げられた結果、腰のラインは45度、肩のラインは90度以上捻転され、平均243.44ヤード(19位)の飛距離の源になるエネルギーを溜めこみます(画像B左)。
そこからは右に大きく重心移動を行うのではなく、野球のピッチャーがテークバックからの切り返しで背中をバッター方向に向けたまま踏み込むように、下半身を使って切り返していきます(画像B右)。
インパクト前後では左ひざを伸ばすように使いながら、右足ではしっかりと地面を踏ん張ることで軸を保ち、下半身、体幹、上半身、腕、そしてクラブへと効率よくエネルギーを伝達させていきます(画像C左)。そしてフォローでも両わきを締めた感覚を保つことでクラブが体から離れずに、軌道が終始コントロールされています(画像C右)。
小祝選手のスウィングタイプは、スウィング中にある程度フェースの開閉を行い、先行した下半身をインパクト以降上半身が追い越していくオーソドックスなタイプ。フェースをずっとボールに向けたままシャットに使うタイプのスウィングとは腕や体の使い方が異なります。
このタイプは腕を使い過ぎるとインパクトでのフェースコントロールにバラつきが出てしまうので、小祝選手が取り入れているのが1枚のタオルを両わきに挟んで実際にボールを打つドリルです。余計な腕の動きを排除し体の動きと同調させることで、体でフェース向きもコントロールする感覚がつかめます。腕が体とバラバラに動いてしまいクラブの軌道が安定しない人にはお勧めできるドリルです。
試合が終わったその日に師事する辻村明志コーチの待つ練習場に直行し、調整するのはいつものこと。その姿勢は、同門で今年初優勝を上げた吉田優利選手にも影響を与えているようです。調子を落としても選手が迷わないように道筋を照らしてくれる辻村コーチの存在は、選手にとって心強いはずです。
秋には賞金女王レースが佳境を迎えます。それに先立って調子を戻してきた小祝さくら選手に、引き続き注目です。