米女子ツアーを主戦場として戦う畑岡奈紗選手ですが、春先までは思うような成績が残せていませんでした。しかし、6月の全米女子オープンではそれまでの不振がなかったかのように粘り強く戦い、笹生優花選手とのプレーオフにまで進出しました。惜しくも敗れはしましたが、粘り強く戦う姿に難コースでの強さを改めて印象づけました。
その後、東京オリンピックに向け調整を重ねると7月の「マラソンクラシック」では初日に61（パー71）のロケットスタートを決め最終的に2位に6打差をつけ優勝。メダル獲得を目指し東京オリンピックを迎えましたが、思うようなショットを打てずに畑岡選手としては不本意な9位という順位で終えています。
東京オリンピック女子ゴルフを9位で終えた畑岡奈紗（写真は2021年の東京オリンピックゴルフ女子）
オリンピックでは、4日間のフェアウェイキープ率は全体の15位、パーオン率も全体の16位、パット数は全体の24位と畑岡選手らしからぬものでした。それでも9位で終えられたのはアプローチの指標を示すスタッツで2位であったことが挙げられます。ショット、パットの不調をアプローチでカバーし粘り強く戦い9位フィニッシュにつなげていました。この戦い方は風が吹きタフなコンディションが予想される「全英」でこそ存分に発揮されるのではないでしょうか。
オリンピック期間中に「テークバックで腕が長くなりトップの位置が不安定になる」と不調の原因を自ら分析し、修正するために繰り返し練習していたのはタオルを両わきに挟むドリルでした。小祝さくら選手も取り入れているこのドリルは、体と腕の動きを同調させることで切り返しのタイミングや、軌道を安定させる効果があります。画像を見ると肩が上がらずにわきが締まった状態で振り抜けていることが見て取れます。
「テークバックで腕が長くなってしまいトップが不安定になる」とタオルを両わきに挟んだドリルで修正した（写真は2021年の東京オリンピックゴルフ女子）
コンパクトでややフラットなトップからしっかりと体と腕の振りが同調しているのが畑岡選手の好調時のスウィングです。期間中のラウンド後の会見で「途中ハーフショットのようにスウィングしたら感触が良くなってきた」と話していましたので体と腕の振りのバランスが崩れてしまっていたことは想像できます。そうなるとドローフェードを打ち分ける際に微妙に曲がり幅がコントロールしきれなくなってしまうことでしょう。
しかし、メジャーに向けてしっかりと調整して来ると思いますので、7月の「マラソンクラシック」で見せてくれた方向性と距離感がぴったりと合ったアイアンショットを見せてくれるのはないでしょうか。風が吹いても、吹かなくても、どちらにも対応できるのが畑岡選手の強みです。
画像A：コンパクトでややフラットなトップから体と腕の同調したスウィングが持ち味の畑岡奈紗（写真は2021年の東京オリンピックゴルフ女子）
それともう一つ、インパクト前後のスウィング写真（画像A）の右側を見ると、インパクト後も左足のかかとが地面からほぼ離れていません。このことから、以前よりもインパクトでジャンプする度合いが少なくなっていることがわかります。
オリンピックの練習ラウンドを共にした稲見萌寧選手を指導する奥嶋誠昭コーチも「ジャンプしなくなって軌道も距離感も安定しているようだ」と話していました。以前はジャンプする度合いによって距離感を出していたように感じていましたが、マラソンクラシックのころから下半身を静かに使い体幹で距離感を出せるように進化しているように見受けられます。畑岡選手は、確実に強くなっています。
2021年最後のメジャー「AIG女子オープン」は、気温は18度で風が吹くと途端に難易度が上がると現地からの情報も入ってきています。粘り強く戦い上位へと進出する畑岡奈紗選手らしいプレーを見せてくれるのではないでしょうか。
撮影／服部謙二郎
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