現在、ツアープロの間ではカメラ式の弾道解析器「GCクワッド」とレーダー式の弾道測定器「トラックマン」(または『フライトスコープ』)の2台持ちで、弾道をチェックしている選手が増えたという。どちらも数百万という高価な測定器だが、カメラ式とレーダー式の両方にそれぞれ利点があるためだ。
ちょうど十年あまり前になるが、「GCクワッド」の前身となる弾道解析機「GC2」が日本に上陸した際、筆者はその現場の比較的近しいところにいた。100万円弱で、かなり正確なスピン量やボール初速が計測できる「GC2」は、次世代の測定器だと確信したが、値段が高額なところもあって、どれほど普及するのかは検討もつかなかった。
しかし現在、ゴルフショップやレッスンスタジオに行けば、必ずと言っていいほど弾道測定器があり、単なる鳥カゴで打つことなど皆無になりつつある。ゴルファーは、弾道測定器で飛距離などの弾道測定データを計測し、クラブフィッティングやレッスンに活かしている。
最近では、練習場にも「トラックマンレンジ」や「トップトレーサーレンジ」といった、打った球をレーダーで追尾して、弾道データをユーザーのスマホやタブレットに送るシステムを常備しているところが増えた。筆者がよく行く練習場にも入っていて、手持ちの弾道計測器を使う理由があまりなくなってしまった。
10年前にもブリヂストンの「サイエンス・アイ」を筆頭に、「アキュベクター」やミズノの「ピタゴラス」など多くの弾道計測器があるにはあった。しかし、これほど弾道計測器があまねく普及するとは、とても想像できなかった。これはツアープロでも測定して、自分のゴルフに活かすのが当たり前になった事情もあるだろうし、「GC2」や「トラックマン」を始めとする精度も弾道解析力も行き届いた測定器が多く登場したことも理由だろう。
前置きが長くなってしまったが、現在ギアマニアを中心にゴルファーの話題となっているのが、ガーミンから発売されたばかりの「アプローチ R10」だ。7万4800円税込という価格でありながら、数百万単位の弾道測定器である「GCクワッド」や「トラックマン」、「フライトスコープ」などでしか高精度で測定できなかった、クラブパスや入射角、フェース向きなどが測定できるという。もちろんヘッドスピードやボール初速、さらにバックスピン量なども計測できる。
すでに巷では多くの検証記事や動画が上がっているようだ。人気も過熱気味でオークションサイトやフリマアプリでは、公式サイトの販売価格を遥かに超える10万円以上で取引されるケースも散見した。ゴルフの弾道計測器がこれほどの人気になるとは、思いもよらなかった。それだけこの「アプローチ R10」の価格と性能が衝撃的だったということだろう。
「トラックマン」と日常的に接する機会があることもあって、筆者は残念ながら出遅れてしまい、まだ「アプローチ R10」を試すことが出来ていない。そこで改めてレーダー式とカメラ式の弾道測定器の違いをおさらいしておこう。
レーダー式は、ドップラー効果による周波数の変移から、速度や距離を計測する。レーダーが追尾するので、飛距離がより正確というのが利点だ。「トラックマン」であれば(条件が良ければ)、測定器の水平まで、つまり着地点まで計測できる。ランは計算値だ。「トラックマン」や「フライトスコープ」、そして件の「アプローチ R10」もレーダー式。1万円前後で購入できるヘッドスピード計測器もレーダー式だ。
カメラ式は、インパクトからその直後までを撮影し、その動きによってボール初速とスピン量を測定し、トータル飛距離などは計算値で出す。「GCクワッド」や「スカイトラック」などがカメラ式の代表だ。高額機種であるほど、写真の枚数が多かったり、より高速度で撮影可能なカメラを備えている。
つまり、(価格の違いによる性能差はもちろんあるが)レーダー式にもカメラ式にも利点と苦手な部分があり、不足分は各社のロジックによる計算値で算出される。「トラックマン」はレーダー式でスピン量を実測することは不可能なので、表示されるスピン量は弾道データから算出した計算値になる。それがツアープロにも支持されるほど精度が高いところが、「トラックマン」の強みになっているようだ。
もし、他の測定器よりも遥かに安価な「アプローチ R10」が、ある程度の精度で測定が可能であるのならば、それは弾道計測器の世界を大きく揺るがすゲームチェンジャーになるだろう。