パク・インビとの練習ラウンドが「大きな学びになりました」
8月に開催された海外女子メジャー「AIG女子オープン」(全英女子オープン)。日本勢は渋野日向子、笹生優花、畑岡奈紗、古江彩佳、原英莉花、青木瀬令奈、梶谷翼の計7名が世界の舞台に挑んだ。
なかでも初の海外メジャー挑戦だったのが青木瀬令奈。そんな青木のコーチを務め、同大会ではキャディを務めた大西翔太は、全英女子でのプレーを改めてこう振り返る。
「結果的に予選落ちを喫しましたが、瀬令奈プロのプレーは他の選手に引けを取らないプレーをしていましたので予選通過できるなと思っていました。地面が硬いせいもあり、290ヤード先のバンカーに入りそうになっていたりしていました。でも上がり4ホール、とくにカーヌスティの悲劇を生んだ18番ホールが難し過ぎました。初日はダボで2日目はボギーの3オーバー、この3打が足りなかったですね」(大西、以下同)
成績自体は振るわなかったが、海外メジャーという舞台を肌で感じて、多くの学びがあったという。なかでも「海外のトッププロたちと練習ラウンドをともにできたことは大きい」と大西。
「練習ラウンドの初日は渋野日向子ちゃん、ミンジー・リーと。2日目はハーフターンで原英莉花ちゃんに代わってレクシー・トンプソンとプレー。3日目はパク・インビの組に空きがあったので、すかさず名前を記入しましたね。インビは飛距離はないものの世界ランク1位にもなった選手で、瀬令奈プロの次のステップを考えたとき、プレースタイルが似ているインビは絶対参考になると思ったからです」
実際同大会での平均飛距離を参照すると、青木は平均243ヤード、インビは244ヤードとほぼ互角。練習ラウンドでも「飛距離は瀬令奈プロと同じくらいでした。レクシー・トンプソンなど体格も大きくて飛距離の次元の違うゴルフを間近に見るのも勉強にはなりましたが、インビがあれだけ飛ばなくてもこのフィールドで戦っているんだということを目の前で見れました。そして、その飛距離で世界ランク1位を守っていたというのが衝撃的でした」と大西。
練習ラウンドでは「話しかけてもインビは気さくに返事してくれました」と大西。言語の壁があり、詳細な話はできなかったもののアプローチやパットを間近で見て気がついたことがあったという。
「どのショットもプレーのリズム、スウィングのテンポがまったく変わらないんです。ドライバーもゆっくり打ちますし、アプローチもパットもどのクラブも同じテンポで自分のスタイルを貫いているんだと思いました。試合でも見たのですが、試合のほうがゆっくり振っているように感じましたし、それくらいリズムやテンポが早くなると自分のプレースタイルが崩れてしまうんだと思いました。どれだけリズムとテンポを大切にしているかパク・インビに教わりました」
また、インビに限らず海外選手たちの練習内容を見てみると「高い球、低い球、ドロー・フェードと打ち分けの練習をしている選手も多かったです」と大西。
「練習日の初日は風も穏やかでどの選手も高い弾道でコースを攻めていましたが、風が吹いた途端にみんなが低い弾道に変わりました。練習場で見た弾道の打ち分けはリンクスコースから求められる技術が必要なのだと考えさせられました」
世界選手たちは多様性がある
加えて大西が海外のトッププロたちを見て感じたのが「日本の選手よりもスウィングのクセが強い」ということだ。
「例えばレクシーは左足が引けてジャンプしながら打っていたり、ミンジ・リーは深い捻転を入れて下半身の動作を大きく使っていたり、パク・インビはカット軌道でコントロール重視で打って……といったように、それぞれスタイルが違います」
個人個人のスウィングのクセが強く多様性があるが「そのクセをアドバンテージにして自分の持ち球を磨いているように感じました」と大西。
「一方、日本人は似たようなスウィングの選手が多いのかなと感じましたね。日本の選手も、もっと自分の個性やプレースタイルを磨いて、持ち味をアドバンテージにしていけば世界でも戦えるのかなと思います」
技術的な面では「アプローチとパットが重要になる」というが、この2点に関しては「瀬令奈プロの場合はショートゲームは引けを取らないように思えました」と大西。
「ただ、やはり飛距離、体格の違いは感じました。タフなコースで4日間、1シーズン戦うとなるとその差が出てくると思います。そういう意味でも基礎体力は大事になりますね。それともう一つ、最後まで諦めない気持ちが切れないです。日本ツアーで戦うなかで、成績が出ないと、『アレもやらないと、コレもやらないと。トレーニングも食事も……』と考え過ぎてしまうのですが、ゴルフに必要なものは意外とシンプルなんだなと感じました」
加えて日本人選手が世界で戦うために乗り越えておきたいのが「言語の壁」だ。
「やはり英語ですよね。韓国選手もタイの選手もみんな英語で話しでました。言葉が通じないと壁を感じるし、言いたいことも言えないし聞かれたことにも答えられないとストレスになりますしね。自分らしくプレーするためにも完璧じゃなくてもいいから英語でコミュニケーションできるようになっておくことは大事だと感じました」
初のメジャー挑戦で新たな知見を得た青木・大西コンビ。実際に世界の舞台に立ったことで「来年もまたメジャーに挑戦したいという意識が芽生えたので、残りのシーズンで世界ランキングを少しでも上げるように頑張ります!」と大西は意気込みを語ってくれた。
写真提供/大西翔太