飛ぶというウワサがブログや動画で検証され“バズシャフト”となった
「デラマックス」というシャフトをご存知だろうか。釣具メーカーとしても有名なオリムピックが発売するゴルフシャフトで、ゴルフダイジェストでもお馴染みのプロゴルファー・武市悦宏が手掛けるシャフトだ。武市は岐阜の出身。「でら」は中部地方で「とても」の意。「でら飛ぶ!」という意味から「デラマックス」という名前になっているわけだ。
さて、そのデラマックスには「赤デラ」と通称されるシャフトがある。それが「020Dプレミアム」と名付けられたシリーズで、2020年に発売となったモデルなのだが、これが発売から1年以上経って、いまだに売れ続けているのだという。
この現象に関して、デラマックスの販売を手がける株式会社ラストストロークの山本悠太氏はいう。
「通常、シャフトは発売直後によく売れて、そのあとは右肩下がりに売り上げが落ちてゆき、だいたい1年サイクルで新商品の発売となります。しかし、『赤デラ』に関しては売り上げがまったく落ちないというか、むしろ右肩上がりの状態。ここにきて海外からの引き合いも増えていて、嬉しい誤算状態です」(山本)
その売れ方は、赤デラの生産体制を確保するために、現在他の商品の生産を停止する必要まで生じているレベルだったのだという。ではなぜ、赤デラはこれだけ売れたのか。
そのきっかけとなったのが、京都のショップ「ウィザード」だ。このショップが提唱したクラブメーカー・エメリットバハマの「カールヴィンソンCV8」と赤デラとの組み合わせが、“ぶっ飛びスペック”として口コミで評判が広がったのだ。「ウィザード」の奥田晃義氏は言う。
「ゴルファーがドライバーに求めるのは飛距離が第一。いろいろ選ぶ要素があるといっても、もっとも重視されるのはやっぱり飛ぶか、飛ばないかです。僕らはきっかけをつくっただけで、それが口コミだけでなく、いろいろなブログや動画で検証されたりしながら、『本当に飛ぶんだ!』と広まっていった結果だと思います」(奥田)
飛ぶというウワサが「本当に飛ぶ」という口コミにかわり、現在でも供給が追いつかないほどのヒットとなったというわけだ。
「発売から1年以上がたってもこんなに売れるとは思いませんでしたが、やっぱり嬉しいですね。シャフトメーカーのオリムピックさんにはご迷惑をおかけしたかもしれませんが(笑)」(奥田D)
赤デラが面白いのは、50グラム台のSシャフトや、60グラム台のSシャフトといった王道スペックではなく、「50グラム台のXシャフトが売れている」(前出・山本氏)という点だ。
「もともとの弾性率が高く、軽量でもインパクトで当たり負けしない素材のため、50グラム台のXフレックスだと軽い分ヘッドスピードが上がり、しなり戻りが抜群に速いから振り遅れずにボールをつかまえてくれるんです。そういった口コミが広がったことで、『50X』の売り上げがいいんだと思います」(山本)
飛ぶ。つかまる。結局のところアマチュアゴルファーの多くが求めるのはこのふたつの性能であることが多い。それを満たすことで、「赤デラ」は2年間売れ続けることになった。結果、「ちょっと困ったことにもなっています」と山本氏。
「通常は前モデルの売り上げが落ちてニューモデルの発売となるんですが、『赤デラ』がほぼ過去最高レベルの売り上げを記録する中で、ニューモデルの発売を迎えてしまったんです(笑)。新製品の『青デラ』(07プレミアムシリーズ)は、『赤デラ』の唯一の弱点だった叩くと左に曲がる傾向があるという点を解消した自信作なのですが……やっぱり嬉しい誤算です」(山本)
前モデルが飛ぶように売れるなか迎えるニューモデルの発売。「赤デラ」と「青デラ」はこれから先どんな売り上げの放物線を描いていくのか、注目だ。