ドライバーをアイアンのように打つ
今年4月の「バレロテキサスオープン」で約4年ぶりとなる復活優勝を遂げたジョーダン・スピース。そのスウィングを端的に表現するなら「絶対にフェードを打つためのスウィング」と言えるでしょう。
ドライバーのアドレスを見るとかなり左足体重かつハンドファーストな状態を作っていて、ほぼアイアンと同様の構え方です。そして特徴的なのがグリップの握り方。左手はロングサム気味でウィークに、右手はストロング気味に握って親指は外しています。極端に言えば、手のひらを中心にパターのように握っているんです。
このグリップによってフェースの開閉運動がしにくくなります。手首の動きを制限してフェースローテーションの度合いを抑えようとしていますね。もともとスピースはパターが得意な選手ですから、パターからスウィングを作っていった、という可能性もあるかもしれませんが。
そしてフォワードプレスをしてからテークバック。気持ちアウトサイドに、クラブをシャットには使わず上げていきます。ポイントは、トップにかけてヘッドを背中側に少し倒しながらレイドオフに上げ、左手首を掌屈させていること。コレは右曲がりの球しか打ちませんよ、という構えですね。
切り返しからダウンスウィングでは体の捻転差などを大きく使うわけではなく、どちらかというと手と体が同調しているように見受けられます。出力を上げて飛距離アップを図るより、しっかりとフェードボールを打つことを重視していますね。
インパクトもかなりハンドファーストで、ダウンスウィングでの左サイドへのシフト量もドライバーにしては大きいです。本当にアイアンのように打っています。左サイドへのシフト量が大きいと、ダウンスウィング時の入射角のアッパー度合いが減りますから打ち出しは低くなりますが、そのぶんコントロールしやすい、つまり飛距離より方向性重視というわけです。
そしてインパクト時での手元をよく見ると、左人差し指をグリップから離していることがわかります。つまり左手は脱力してゆるゆるな状態ということ。そして同様に右手親指も外しています。おそらく握り込むことでフェースが返ってしまわないための工夫ですね。ここまで割り切っているのはスゴイと思います。
フォローでも手元を体側へグッと引きつけて、左ひじを抜きながらフェースが返らないようにインサイドへ振り抜いていきます。さらに左手も背屈させていて、フェースローテーションを抑えることを強烈に意識していることがわかります。
インパクトからフォローの動きを正面から見ると、左ひざが割れて開き、左足はめくれ上がり、左ひじも曲がっている状態です。一般的にあまり良くないと思われている動きが満載ですが、スピースにとって重要なのは、フェースを返さずにアウトサイドインで振り抜き、フェードを打つことですから他のことは気にしない、ということでしょう。
スピースはフェードボールを打つとイメージして、それをそのままちゃんと実行しているわけです。右曲がりの球で攻めるというマネジメントの軸がありますから、グリーン周りなどほかのプレーに集中しやすいですよね。
チーピンが多いとかフックの度合いが強い、また肝心なときに左に曲げてしまうという方は、スピースのバックスウィングからトップのレイドオフと左手の掌屈、フォロースルーの抜き方、手首の使い方をマネすれば左へのミスは防げます。インテンショナルスライスでも良いので、スピースくらいしっかり意識してやり切ってみましょう。
写真/2021年のザ・プレーヤーズ選手権 撮影/服部謙二郎