最新ドライバーの説明書きをよく読むと「フェース(あるいはボディ)がたわむことで初速アップ!」といった文言を目にする。なぜフェースがたわむと初速が上がり、ひいては飛びにつながるのか? ギアライター高梨祥明が解説!

たわみフェースはトランポリンとは違う。インパクトでボールがどうなっているかを考えたい

新しいゴルフクラブの特徴説明を読んでいると、やたらフェースやボディ(クラウン)のたわみをアピールしているモデルが多いことに気づく。では、インパクトの瞬間にクラブヘッドが変形すると何がいいのか? それでなぜボールが遠くへ飛ぶようになるのか? 今日はそのおさらいをしてみたい。

理解を深めるポイントは、一旦ヘッド(クラブ)のことは横に置き、飛んでいくのはゴルフボールである、という大前提に立ち返ることかもしれない。ゴルフクラブの進化、テクノロジーはインパクトでもっとも遠くにボールが飛ぶ条件を整えるためにある、単なる“手段”だと考えたい。

ゴルフクラブでフェースの“たわみ”が注目され始めたのは、2000年に「ゼクシオ」が登場して以降のことである。 “インピーダンス・マッチング”という独自の理論に基づいて開発された薄肉のチタンフェースがボール初速を高め、このモデルからいわゆる高反発ドライバー時代が始まっていった。そのゼクシオのフェースを薄くした目的が、インパクトの衝撃でフェース面をたわませることだった。

フェースが大きくたわめば、その戻りスピード(復元)でボール初速がアップするのではないか? 我々はいわゆるトランポリンのような増幅効果をイメージしがちだが、実際の主目的はそうではない。ここで、クラブではなくボールに目を向けることが必要になるのだ。

我々アマチュアはマイナスが多いから飛ばせていない。マイナスを減らせば、今よりも飛ばせるのは当たり前!

軟らかいゴムや樹脂でできたゴルフボールに硬い金属でできたクラブヘッドが、その衝撃力が1トン級にもなるというスピードで衝突した場合、どうなるだろうか? 軟らかいボールが衝撃で大きく変形してしまうことは容易に想像できるはずである。壁に投げつけたトマトがどうなるか、ということである。ゴルフボールもインパクトの瞬間に大きく潰れて(変形)しまうのだ。

画像: フェース面を薄くするなどしてより大きくたわませるのは、弾いてボールを飛ばすためというよりも、ボールが潰れ過ぎることによるエネルギーロスを防ぐ効果が大きい

フェース面を薄くするなどしてより大きくたわませるのは、弾いてボールを飛ばすためというよりも、ボールが潰れ過ぎることによるエネルギーロスを防ぐ効果が大きい

イメージとしては、潰れ過ぎ=エネルギーロスと考えたい。薄肉の高反発フェースとはインパクトの瞬間にフェースをたわませることでボールの潰れを“軽減”(コントロール)し、無駄なエネルギー消費を抑えて飛ばして行こう!という考え方から生み出されたもの。パワーを増幅するのではなく、マイナスを減らすことで、結果的なプラスを得ようというアイデアだったのだ。

軟らかい軟式テニスボールを打つためのラケットは、硬式用に比べ、ガットのテンションが低い。軟式野球でも打球面をソフトにした飛ぶバットが登場している。これらも軟らかいボールの変形(エネルギーロス)を抑えることで、効率よくボールを飛ばして行こうという目的によって生み出されたものなのである。

ボールの潰れをコントロールするため、と考えながら最新ゴルフクラブの構造を改めてみてみると、とてもわかりやすいはずである。

・ソールのフェース近くに溝を設ける 
→ フェアウェイウッドはフェース面積が小さく、フェースをたわませることが難しい(とくにフェース下打点で)。だからソールのフェース付近に溝を設けて、フェース下ヒットでもフェースが動くようにすれば、ボールの潰れ過ぎを抑えることができる →飛ぶ

・カップフェース構造にする 
→ 薄肉フェースにするためにフェース上部と下部にまで広げたカップ型のフェースにすることで溶接箇所がフェース外になるため、よりフェースの広範囲で高いたわみ効果を得ることができる →飛ぶ

・フェース周りのフレーム剛性を高める 
→ ボディ変形でフェース面を動かす発想から、フェースの周りを強固なフレームで囲うことで薄いフェースがさらにたわみやすくなる、という方向にトレンドが変化。
→ 土台がしっかりしているからこそ、大きくたわむ。よりトランポリン的な構造、発想 → 飛ぶ

ゴルフクラブの機能説明や解説は、難しい用語が出てきて難解だが、その目的は常にシンプルである。ボールの潰れをコントロールし、適正化するために、よりよい方法が生み出され最新ドライバーに採用されているのである。その意味ではゴルフクラブの進化とは、新発想というよりも、新手法といったほうが近いかもしれない。

大切なのは、我々アマチュアゴルファーほど、スウィング的な問題、シャフトのしならせ過ぎ、打点のズレ、ボールの潰し過ぎなどによって、自分の持つエネルギーの多くを“ロス”していると考えることである。マイナスが多いから、現状“飛ばせていない”だけで、逆に言えば、マイナスを減らせば、どんどんプラスになっていく「伸び代」満載の状態にあるということに気がつきたいものだ。

ゴルフのボール、クラブにエンジン(動力)はついていないが、道具を変えたら急に飛距離が伸びることがある。これはロスが少なくなったためだ。もちろん適した道具に巡り合ったおかげでもあるが、本来、自分にはそれだけ遠くにボールを飛ばせるパワーがあった!ということだと捉えていただきたい。飛んでいくのはボールで、飛ばしたのは自分。ゴルフクラブは自分のパワーを効率よくボールに伝達するための大切な道具である。

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