今年も秋の新製品が続々と発表になっているが、目を引くのは中上級者向けのアスリートアイアンが増えたことだ。ピンの「i59」、テーラーメイドの三代目「P790」、キャロウェイからはジョン・ラームや石川遼が選んだ「APEX TCB」が登場した。タイトリストの「T」シリーズは今回のラインナップから、「T100」と「T100S」に加えて、「T200」も上級者の使用に十分に応えてくれそうな仕上がりになっている。
今週は、二年ぶりにミズノプロのアイアン3機種が発表になった。ミズノは昨年に「JPX921」のシリーズが4機種登場し人気になっているところだ。先だって発売になったグローブライドの「オノフ黒」アイアンも好調と聞いている。さらに例年通りであれば、ヤマハにもアスリート向け新製品の発表が近いうちにあるはずだ。
新しいモデルが出るとワクワクして期待してしまう筆者のようなゴルファーもいれば、正直モデルが多すぎて、ついていけない人もいるのではないだろうか。なぜこんなに種類があるのか、不思議に思うゴルファーも少なくないだろう。
これは、アスリートモデルが対象としているユーザー像にひとつの要因がある。想定されるのは、ゴルフが大好きで、クラブの知識もあって購入意欲も旺盛なゴルファーだ。内外のトーナメントへの関心も高く、プロへのあこがれも強い。当然、情報感度も高く、プロが使用しているといった情報もキャッチしている人が多い。
そして、打ってみてクラブの違いがわかるくらいの腕前があるのもアスリートアイアンの対象ユーザーの特徴だと言えるだろう。実際にクラブを変えたことで結果が良くなった経験をしている人が多く、クラブの違いへの関心が強いのだ。
こんなゴルファーは、仲間内でも上手い人、クラブに詳しい人と認知されている。その意味では、ゴルファー全体のなかでは決して多数派ではないのだが、クラブの購入頻度は格段に高く、ゴルフ市場を力強く下支えしている。
例えば、シャフトの硬さをしめす、「R」、「SR」、「S」、「X」といったフレックス表記がある。このフレックス別の販売構成比は「S」の人が圧倒的に多いという数字がある。レギュラーの頭文字である通り、「R」が多くても良さそうなものだが、クラブを購入するゴルファーの多くが「S」を好んで使っている。つまり、アスリート向けモデルを買うゴルファーは、“クラブを買う人”の中では、まさに主流派だといえるわけだ。
その意味では、アスリートモデルを制するメーカーが市場を制すると言ってもいい。当然、どのメーカーも意匠を凝らした自信作を市場に問うことになる。アスリート向けアイアンが数多く登場するのはそんな事情もあるのではないだろうか。
数年前までなら、アスリート向けアイアンは軟鉄鍛造一体成型とほぼ相場が決まっていた。しかし、現在は飛び系アイアンで培った異素材を複合し、中空構造を採用するなどした新たなアスリートモデルが登場している。いわば飛び系のテクノロジーを駆使して、アスリートが求める性能を実現しているわけだ。
その結果、現代のアスリート向けアイアンは、性能の個性もより際立っていて、実に変化に富んだものになっている。それらの違いが楽しめると、クラブ選びの楽しさが広がってくる。買い替えを検討するには良い時期になったようだ。