掌屈、シャローイングを取り入れフェースローテーションを抑えたスウィング
アーノルド・パーマーと言えばPGAツアー通算62勝、メジャーも計7勝を挙げ、“キング・オブ・ゴルフ”ともあだ名された20世紀ゴルフ界のレジェンドです。そのスウィングには現代のゴルファーにも共通する、参考にしたいポイントが多くあります。
今回はマスターズ4勝目を挙げた1964年のスウィングを見ていきましょう。まずアドレスを見ると左足を軸に構えているのが見て取れます。上半身も右に傾けずに真っすぐな状態ですね。現代のドライバースウィングではアッパー軌道でインパクトしやすいように上半身を右に傾けていること場合が多いですが、これはクラブヘッドとシャフトの性能の違いが原因でしょう。
今よりヘッドも小さくシャフトもしなり過ぎるので吹け上がりやすいですから、それを抑えるためにアイアンのようにダウンブロー気味で打つための構えです。このあと見ていくトップ位置やインパクトでも、上半身は真っすぐなままです。
構え方は時代ゆえの特徴が出ていますが、テークバックする際の右足の角度は参考にしたい部分です。正面から見ると微動だにしていませんよね。右股関節を屈曲するように後ろへ引いていくことで、スウェイせずに体を回していくことができています。右足の位置がズレてしまうと軸がブレてスウィングが安定しなくなってしまいますから、絶対にマネしたほうが良いポイントと言えるでしょう。
トップでは肩がしっかり深く入って、なおかつ掌屈気味のシャットフェースでクラブを上げています。このフェースローテーションを抑える掌屈の動きも今とまったく同じ。ヘッドサイズや性能の違いはあれど、フェースローテーションを抑えるのがボールをまっすぐ飛ばすための大きなポイントのひとつであるのは今も昔も変わりません。
掌屈してシャット気味にクラブを上げたことで後方から見るとトップでシャフトクロスしていて、これが切り返した瞬間にクラブが倒れていきます。今でいうシャローイングの動きですね。シャットに上げていくと、体がしっかり回すことができれば自然と切り返しでクラブが後方に倒れていき、スウィングの軌道がボールに向かって下りてくるわけです。
ダウンスウィングでも掌屈は維持しているのでシャフトは立っていてタメが少ない状態。そのまま踏み込んだ足を伸ばす地面反力も活用しながら掌屈したままインパクトしていき、ハイフィニッシュの形になります。
ばっちりとその瞬間を写した写真は残念ながらありませんでしたが、フィニッシュの形を見る限りフォローでひじを抜く動作が入っていますね。タイガー・ウッズがインテンショナルスライスを打つときと同じです。
ひじをターンさせるのではなく抜くことでフェースの開閉を抑え、ボールを引っかけ過ぎないようにしています。つかまって左に行きやすいクラブを使っているがゆえに、この動きが入ることで真っすぐ飛ばせるわけです。このフォローは意図的にスライスを打ちたい場合以外はマネしないほうが良いでしょう。
あまりマネしないほうが良い動きとしてもう一つ挙げたいのは、バックスウィングでヒールアップしながら左ひざを体の内側に寄せる動き。往年の名選手に多い使い方で、横方向へのスウェイを防ぎながら、飛距離を出すために目一杯下半身を使っているわけです。
もちろん取り入れることができればそのぶんパワーも出ますが、難しいのが寄せた左ひざを切り返しからダウンスウィングで戻す動作。ダウンスウィングでは左ひざと左足つま先の向きが一致していないと力を出しづらいのですが、大きく使うとそのぶんズレてしまいやすいです。
逆に今の選手にここまで左ひざを動かす選手が少ないのは、クラブ性能が進化したぶん飛距離ではなく安定性を重視した体の動きになっているからですね。取り入れる際は、ヒールアップはしても良いですが左ひざの動きはちょっと抑えたほうが良いですね。
まとめると、当時のクラブの性能によって現代のスウィングとは違う動きもありますが、テークバックの際の右足の使い方やクラブをシャットに上げるための掌屈、そこからのシャローイングの動きなど、現代のアマチュアがマネしたいポイントはそれ以上に多いです。ぜひ参考にしてみてください。