ラウンド中の“レッスン”はスルーしよう
120切りを目指すゴルファーのなかには、身の回りに自分より実力の高い先輩ゴルファーがいるという人も少なくないだろう。もし一緒にラウンドする機会があるならば、できれば先駆者のコースマネジメントを見て自らの上達・ベストスコア更新ヒントを掴みたいところだが、参考にする際には気を付けてほしい点があると兼濱。
「もちろんゴルファー自身がアドバイスを求めていたり、そのラウンドを完全に練習と割り切っているのならその限りではないですが、まず前提としてお伝えしておきたいのは、ラウンド時のスウィング中の体の動きに対する指摘などは極力避けるのが無難です。レッスンコーチ目線でお話しするなら、ほとんどマナー違反と言っても良いくらいのことであるのは覚えておいてください」(兼濱、以下同)
なぜならば、指摘を受けて体の細かな動きに意識をフォーカスしてしまった時点で今まで自然にできていた動きにまで影響を及ぼしてしまうから。「体の反応を頭で思考してしまうと、どうしても再現性は低くなってしまいますので、まず教える側も教えられる側も注意が必要であることは頭に入れておいてください」と兼濱。
そのうえで、スウィング面ではなくマネジメント面ではどうだろう。もちろん「参考にするべき部分は大いにある」と兼濱は言うが、一方で「上手いゴルファーゆえの戦略の可能性もあるので取り入れる際は注意が必要です」という。
「とくに120切りを目指すゴルファーの場合、熟練ゴルファーのプレーをマネするとかえってミスにつながってしまう場合もあります。というのも、そもそも上手いゴルファーのプレーやマネジメントは、技術に裏打ちされたモノ。“リスクのあるシチュエーション”に対してもプレッシャーを感じない実力があるからこその選択である可能性が少なくないからです」(兼濱、以下同)
兼濱が良い例として挙げたのは、往年の名選手、陳清波のラウンドレッスンに関する逸話だ。
「陳清波プロはラウンドレッスンの際に、軽々越えられる40ヤード先のバンカー越えでもバンカーを避けて左に刻ませた、という逸話があるんです。これはすごく良い例で、自分で対処できない状況、あるいは成功するか不安のあるショットは避けるのがスコアアップを目指すうえでは無難な選択なんです。マネジメントを参考にするのはとても良いことですが、『先輩ゴルファーがこう攻めているから』と右にならうのではなく、はたして自分のレベルにちゃんと見合った攻め方なのかをしっかり見極めることが大切ですね」
また、兼濱が「これもよく見かける」というのが、パー3のアイアンでのティショットでティアップせずに打つ熟練者。もちろんやっている本人は慣れや個々人の打ちやすさの好みの問題であえてティアップしていないわけだが、「本来ティアップしたほうが地面とボールとの間に隙間が生まれてダフリの危険性が低くなるはず」と兼濱。「120切りを目指すゴルファーならばこういった細かい部分からもミスのリスクを排除していくことが大切です」という。
一方で、兼濱が手放しに「マネしたほうが良い」というのが、先輩ゴルファーのラウンド中の所作。とくに「ゴルフにおけるマナーではあると思うんですが、次打地点に向かう際はクラブを複数本持つ、という意識は絶対に持ってください」という。
「初心者の方にありがちなのが、ハウスキャディさんの目測やカートのコースマップなどの距離情報を元に、その距離が打てるクラブ1本だけを持って次打地点に向かってしまうこと。それで実際にボールの近くに行ってみると、前の木が邪魔で打てないだとか、ラフが深くて振り抜けないといったトラブルが起きて、1本しか持ってきていないからそれで打つしかなくなってしまった、なんて話はよく伺います。先輩ゴルファーを見れば、誰もがカートから降りる際に複数本のクラブを持ち、ボールのもとへ向かっているはず。ここはプレーファストのためにもスコアアップのためにも絶対にマネしたい部分ですね」