やさしく高さを出せる60度ウェッジとの兼ね合いで56度が採用されやすい
ゴルファーのなかでもとくに好みが分かれるのが、ウェッジのロフト選択。とくに海外プロの場合は、厳しいコースセッティングに対応するために60度のロブウェッジを採用する場合が多いが「それと同じくらい活躍の場面が多いのが56度のウェッジなんです」とプロゴルファー・中村修は言う。
「普段からPGAツアーを観戦している方なら想像しやすいと思いますが、60度のウェッジはピンが近い場面やバンカーショット、深いラフから打つ際など、難しいシチューエションで活躍しますが、それ以外の場面って実はスピンをかけてギュギュッと止めるというよりも、56度である程度スピンをかけながらピッチエンドランで寄せるシーンって結構多いんですよ」(中村)
実際、タイガー・ウッズ、松山英樹をはじめ、現在世界ランク1位のジョン・ラームや、ロリー・マキロイ、マシュー・ウルフ、ジョーダン・スピース、ブルックス・ケプカ、トニー・フィナウ……。PGAツアーのトップ選手たちのセッティングを見てみると、名前を挙げ始めたらキリがないくらい、60度とともに56度のウェッジを採用している選手が多いのだ。
さらに、56度のウェッジを採用するPGAツアープロのなかでも、バウンス角の選択は各々異なってくるのも面白いところ。ケプカやスピースらのように、ミドルバウンスと言える10度設定の56度ウェッジを使用するプロが多数派に当たるが、松山のようにテクニックを活用しやすいローバウンスを使用するプロ(松山はバウンス8度を使用)や、その逆でミスに強いやさしめのモデルと言われるハイバウンスモデルを採用するプロも一定数いる。
なかでもバウンス14度と一際ハイバウンスの56度ウェッジを使用しているのが、海外メジャーで2勝を挙げているコリン・モリカワ。
「モリカワ選手は状況によって60度と使い分けながら、やさしくアプローチしています」と、テーラーメイドのツアー担当である真野義英氏は言う。
「たとえばグリーン周りのピンに近いラフからであったりロブショットが必要なときは60度を使い、それ以外の場面、花道からやピッチエンドランが使える外しても構わないエリアからは56度のハイバウンスモデルを使って、ハンドファーストを強くせずバウンスを活用した打ち方でやさしく寄せていますね」(テーラーメイドツアー担当・真野義英氏)
要するに難しいシチュエーションは60度ウェッジで対応し、それ以外の場面はプロであってもクラブの性能を活かしてリスクを減らして打っているというわけだ。プロゴルファー・中村修も「たしかに56度で14度もバウンスがついていれば、やはり相応のメリットがあります」という。
「まずウェッジのように短いクラブってハンドファーストで当たりやすいのですが、ハイバウンスだと多少ハンドファーストの度合いが強くてもバウンスが滑ってくれるので、クラブが地面に刺さらず、ボールの下をくぐらずにちゃんとロフトなりの距離を出しやすいんです。距離のあるバンカーショットでもやさしくなりますし、またバウンスを活用することで打点にシビアにもなり過ぎず、ピッチエンドランもやさしく打てますよね」(中村)
実はモリカワ以外にも、リッキー・ファウラー、イアン・ポールター、スコッティ・シェフラーらがバウンス14度とハイバウンスな56度ウェッジを採用。ジョン・ラーム、マシュー・ウルフ、そしてなんとタイガー・ウッズでさえ、14度まではいかずとも比較的ハイバウンスな12度のモデルを採用しているのだ。
もしウェッジを買い替える機会が直近であるならば、ロフトの組み合わせとともにバウンス角の設定についても今一度吟味して見ると良いかも!?