渋野日向子選手がついに優勝しました。2021年の開幕戦で誰もが驚いたスウィングの大きな変化から10か月。低くフラットなトップから入射角を浅くし、安定したスピン量と再現性を求めた新スウィングで涙の今季初優勝を挙げました。
ひと月前の「住友生命Vitalityレディス東海クラシック」で4位タイに入ると、先週の「日本女子オープン」まで3週続けてトップ10に入り好調を維持。そして今週は最終ホールのバーディで4人のプレーオフに残り、2ホール目のバーディを決め見事な復活劇を見せてくれました。
「住友生命」と「日本オープン」では現地で間近にスウィングを見ましたが、そこから優勝に結びついた要因が3つ思い浮かびます。
まずひとつはドライバーが振れるようになってきたことです。「住友生命」の練習日は狭いホールでもドライバーが非常に良く振れていて、距離も十分に出ていました。初日は雨のため練習ラウンドほどは振れていない様子でしたが、最終日はしっかりと振り切る渋野選手らしいドライバーが見られ4位タイ。久しぶりの上位フィニッシュとなりました。
ドライバーに関しては、スウィング改造当初よりも明らかに振れるようになっています。スウィングが馴染んだことにより「怖さ」が薄れ、同時に飛距離も出るようになっているようです。
前週の「日本女子オープン」でも、ドライバーを振ってフェアウェイをとらえることが多くなっていて、パー5でも2オンする姿も見せるなど距離も出ていました。結果も5位タイと上り調子で終えています。
優勝の要因、ふたつ目は100ヤード以内の精度が上がってきたことです。2021年からウェッジを46、51、54、57度と4本体制にしていますが、距離の打ち分けや上げたり転がしたりというアプローチのバリエーション、遠いバンカーからは51度を使ったりなど、その成果が確実に表れてきていました。
番手間の距離が縮まったことで打ち分けが楽になりバーディチャンスが増えていますし、グリーンを外した際のリカバリー率も上がり、流れが悪くなるところで我慢できるようになっています。今大会の最終日の16番ホールでのチップインバーディはジャストタッチで見事な一打でした。
そして最後のピースは、アドレスの向きです。もともとドローヒッターの渋野選手ですが、トップを低くフラットにしたことでインサイドアウト軌道が強くなり左を向くクセがついていました。
「日本女子オープン」の初日が終わったあと、練習場で足元にスティックを置き、スタンスの向きと出球を入念に確認する姿を目にしていました。キャディを務めた古賀雄二さんにも聞きましたが「右へのミス、左への引っかけのミスの原因になった左に向いていたアドレスを修正して真っすぐに構えるようにした」そうです。
アドレスの向きを修正したことで、左に振り抜けるようになりクラブの軌道がほんの少しのインサイドアウト軌道になりドローの曲がり幅をコントロールできるようになりました。
前週の「日本女子オープン」初日を終えての会見ではドライバーが振れるようになってきた要因を「大げさに左を向いて構えなくて良くなった分、左に振り抜けるようになってミスが減った」という趣旨の発言をしています。
スウィング改造当初はテークバックからトップにかけての意識が強く、飛距離も落ちていましたが、海外での試合も含めて試合で作り上げてきた新スウィングは、当初よりも左に振り抜けるようになりインサイドアウト軌道の幅も少なくなり、それに伴って曲がり幅も少なくなっていきていました。
ドライバーが振れるようになったこと、100ヤード以内の成長、アドレスの向きという3つのピースが揃ったことが、新しいスウィングでの優勝という結果に結びついたと考えられます。
しかし、ここで終わりではありません。米女子ツアーで戦うことを前提に改造したスウィングの目指すところは、スピンの効いた高いボールで硬いグリーンでも止められること。そして飛距離もさらにアップさせることだと言います。11月下旬の米女子ツアーの予選会(QT)を突破し、来季の本格参戦に向けてまだまだ成長する姿を見せてくれることでしょう。